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強い組織を作る新コミュニケーション基盤「SMAC」すご腕アナリスト市場予測(3/4 ページ)

» 2016年06月08日 10時00分 公開
[鵜澤 慎一郎デロイト トーマツ コンサルティング]

コミュニケーション領域へのSMAC導入の注意ポイント

 以上、従来型コミュニケーションの弱点と、それをカバーするSMACについて述べたが、SMACの活用には、気を付けなくてはならないポイントが幾つかある。

 コンシューマー系テクノロジーのビジネス利用において、必ず問題になるのがセキュリティ、それも情報漏えいリスクだ。そのリスクを高める要素として、多くの会社に横行する「シャドーIT」がある。

 会社が許可していないデバイスやサービスを従業員がこっそり業務利用することだ。その一例が私物スマートフォンの業務利用である。公式に会社がセキュリティを確保したBYOD運用体制のもとでは問題はないが、黙認状態では常に情報漏えいリスクが潜在することになる。もちろん個人向けオンラインストレージやSNSの利用も同様の問題を抱えている。

 しかし従業員側にも理由がある。自分が所有しているIT環境の方が、会社の環境よりも使いやすいのだ。しかも利用テクノロジーは会社よりも一歩も二歩も進んでいて、インターネット利用のスピードも速い場合が多い。

シャドーITの経験とICTに対する不満 図3 シャドーITの経験とICTに対する不満(出典:デロイトトーマツコンサルティング)

情シスはビジネス側のニーズをくんだアドバイザーになるべし

 シャドーITは、単なる禁止ルールで縛るのは難しい。図3に見る通り、シャドーITは会社が用意したICT環境への不満が大きな要因になっている。その要因を取り去る努力が肝心だ。

 それには情報システム部門のユーザーに対する姿勢が大きく関わる。セキュリティ面では情報システム部門は常に「番人」だ。ルールを作り、それを破るのは許さない。しかし既にユーザーが先行して最新テクノロジーを利用する現在では、これまでのようなかたくなな手法だけでは限界だ。IT管理の立場であっても、ビジネス側のニーズの変化を迅速にキャッチし、理解した上でサポートや提案をしていく、課題解決アドバイザーとしての役割を担う必要がある。

 具体的にはSMAC活用を念頭に、全社最適なコミュニケーションツールを提案していく必要がある。セキュリティを確保でき、できれば集中管理可能なツールを選定するのが望ましい。しかしそのようなツールも多数あり、要望があるからといって全てを導入、または利用承認することはできない。個別に満足度は上がるかもしれないが、ツールが増える分だけ管理コストが上がる。

 ここで考えるべきなのは、端末導入の場合と同様の「規模の効率」だ。広く利用される業務系ツールは、ある一定の共通化を指向する方が良い。基本方針としては一定数の規模の経済性が生きるツールの導入、承認をし、特殊な職制で目的に特化したツールが必要な場合は検討することが望ましい。

 まず共通化をして、次に個別化をすることが今後の企業のコミュニケーションツールの使い方となる。また、SMACテクノロジーは従来の基幹システムやメールシステムのようにリプレースできないものではなく、安価で契約期間も短くスピーディーに導入できるのも特徴である。

既存業務との整合性を考慮した利用が肝心

 一方、新しいテクノロジーを導入して失敗するケースもまま見受けられる。例えば次のようなケースだ。

モバイル端末の支給で失敗

 隙間時間に仕事をしても、仕事が終わる時間が変わらない。移動時間や出張は減らず、負担は変わらない。

タブレットの支給で失敗

 そもそもデスクワークが大半で、ノートPCの方が使いやすい。何に使うか分からない。社内システムにアクセスできないので結局PCを開く。

社内SNSやファイルサーバ利用で失敗

 膨大な情報が散在していて、必要な情報にたどり着けない。 整理するにも誰も触れない。ツールは増えるが、従来業務は減らないので、結果として業務は増える一方。

 このような失敗は実際の業務部門の仕事を理解しないまま、他社に遅れてはならじと導入を焦った場合に起こりがちだ。業務現場の実態をよく観察し、また議論を重ねた上で適正なテクノロジーを選定していく必要がある。

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