アナログカメラとネットワークカメラの重要な違いは画素数だが、それ以外に注意すべきポイントが幾つかある。
アナログ/HD-SDIカメラは同軸ケーブルを使用し、カメラ1台ごとに独立したケーブルが必要だ。電源も合わせて1本のケーブルでまかなえるが、カメラが多数だとケーブル敷設が難しくなる。1台のレコーダーで集中管理できるのはおよそ16台程度までだ。
アナログカメラはテレビと同じNTSC規格の信号を伝送し、HD-SDIカメラは放送業務用のハイビジョン信号(非圧縮)を伝送するが、その距離には限度がある。HD-SDIの場合は100メートルまで。それ以上の延長にはリピータを増設すれば良いが、数百メートルになると品質が悪化する。アナログカメラも数百メートルの範囲内での伝送が限度だ。
一方ネットワークカメラはおなじみのLANケーブルでよく、スイッチを利用してネットワークをエリアごとに集約できて拡張性が高い。数百台のカメラを集中管理するシステムを運用する企業もあるように、大規模展開には間違いなく有利だ。また離れた拠点に設置したカメラの集中管理も、ルーターを経由してVPNや専用線で相手拠点に接続すれば問題ない。インターネットを経由した接続も可能だ。
なお、既存の同軸ケーブルをそのままにカメラとレコーダーをIP化することも、LAN同軸変換アダプターを搭載したモデルであれば可能だ。また、アナログ信号とIP信号を同時に同軸ケーブルで伝送するハイブリッドカメラもある。リアルタイム監視は遅延のないSDアナログ映像で行い、映像記録はIPによるHD映像を記録するという折衷型の運用ができる。アナログシステムからIPシステムへの段階的な移行を図る時には検討しても良いだろう。
IPネットワークではネットワーク機器を多段階で経由することで遅延や一部データの欠損が不可避なため、リアルタイム監視の場合にコンマ数秒の遅延で決定的瞬間を見逃す可能性がないとはいえない。また完全なデータ記録にも難がある。
一方アナログ/HD-SDIカメラでは遅延やデータ欠落の心配がない。そこで鉄道線路のモニターなどのように厳密なリアルタイム監視や完全な映像保管が必要な用途では、アナログカメラが選ばれることが多い。
アナログカメラの場合は、新旧製品はもちろん他社製品でも互換性が高いのが特徴の1つだ。ネットワークカメラは各社独自の方式で制御するため完全な互換性はない。ただし業界団体のONVIF(Open Network Video Interface Forum)が標準規格を定めており、これに準拠した製品であれば、基本機能の互換性は確保できる。
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