仮想化の有無にかかわらず、Windows Server をはじめとするサーバ製品では、サーバそのものの使用権とユーザーや端末のアクセス権の両方がいる場合が多い。その条件もさまざまで、例えばマイクロソフトのサーバ製品の場合、サーバライセンスとクライアントアクセスライセンス(CAL)の他、パートナーや顧客が社内ネットワークにアクセスできるサーバごとのエクスターナルコネクターライセンス(EC)、物理CPUの個数で金額が決まるプロセッサベースライセンス、同様にCPUコア数ベースのコアライセンス(仮想環境では仮想プロセッサベース)などがある。他ベンダーのサーバ製品の場合も同じように多様なライセンスがあり、中には拠点単位で利用上限ユーザー数を決めたサイトライセンスなどもある。
クライアントPCの場合は、まずその台数が多いことと、それぞれに数多くのソフトウェアがインストールされることが管理を難しくしている。会社が購入した有償ソフトウェアはもちろん、従業員がダウンロードしたフリーウェアやオープンソースソフト、デバイスドライバ、ユーティリティーなど、部門・部署により、またユーザー個別に導入ソフトは千差万別だ。たとえ無償のソフトウェアであっても、利用許諾条件は必ずあり、それにのっとっていないと思わぬ不具合に遭遇したり、ライセンス違反を指摘されたりすることがある。
また同一製品であってもオプション項目や購入形態によって使用許諾条件が違うことが多々ある。例えば次のようなバリエーションがある(一部はサーバ製品でも同じ)。
管理を怠っていると、例えばパッケージ版で購入したソフトにボリュームディスカウント版のバージョンアップが適用されていたというようなことが起こりうる。同一製品であっても、オプションを区別して管理できるようにしておく必要がある。
このようにバリエーションが多様すぎ、管理対象が多過ぎるのがPC用ライセンス管理の課題である。
さらに複雑化させているのが仮想デスクトップインフラの導入だ。本来は運用管理負荷を軽減してくれるはずのインフラなのだが、全社的に見ればほとんどのケースで物理PCとの並行運用になる。既存PCをシンクライアント化して利用する時には、別途仮想デスクトップ利用ライセンス(Windowsの場合ならVDAライセンス)の購入が必要になることが多い。
またOfficeのパッケージ版やプリインストール版はシンクライアント環境には対応しておらず、そのライセンスを買い換える必要も出てくる。これまでのIT資産管理ツールを端末単位のライセンスで購入していた場合などは、ユーザー単位のライセンスに買い替えなければいけないこともある。利用条件はソフトウェア個別にあらためて確認し直し、不明なところはベンダーに問い合わせて、ライセンスに問題がない状態での仮想デスクトップ導入を図るべきだ。
モバイルデバイスの場合も当然業務に利用するソフトウェアには会社による管理が不可欠だ。従来はMDMツールによるデバイス管理が利用されてきたが、現在では業務をより安全に利便性高く行うことを念頭に、MAMやMCM機能を追加したEMMツールによる管理にシフトしてきている。EMMツールはモバイル用途での安全確保や業務効率向上のために好適な機能を提供しており、Windows10デバイスの管理にも対応するものが多くなった。ユーザーデバイスのソフトウェア導入状況を把握することは、EMMツールを使えば難しくはない。
ただし、EMMツールが従来のIT資産管理ツールを置き換えるかといえば、まだまだ難しい。USBメモリの制御機能やリモート操作やファイル操作、ログ取得、セキュリティ管理、検疫機能などは未整備である。また、端末側アプリがリモート接続する社内サーバのソフトウェアに関しては、リモートからの利用が許されているか、ユーザーベースでのライセンスになっているかなどの確認・管理が必要になる。そこで今のところは既存のIT資産管理ツールにEMMからの情報を連携させて、全体像を把握するのが適切な方法といえるだろう。
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