図2に、従来技術と帯域ダブラ技術を採用した場合との違いを示す。
図の上部のように、250Gbps(エラー訂正のためのオーバーヘッドを含めると300Gbps)のデジタル信号がDSPに入力されると、DSPのデジタル処理部分は問題ないが、DACのところで帯域幅が30GHz程度に制限されるため、光コンポーネントの電気ー光変換の出力信号の帯域幅も30GHz以下になってしまう。
この帯域幅では、多値変調技術を駆使して最大限に情報を詰め込んでも、伝送できるデータのビットレートは約125Gbps(オーバーヘッドを含めると150Gbps)になる。十分速いようだが、これでは開発チームは満足できなかった。
そこで新たに開発されたのが、図の下部に見る帯域ダブラだ。DACの限界が30GHzであることを前提に、まずはDSPの出力の後段に、前置信号処理回路を入れた。この信号処理では目的である信号周波数の半分の周波数に落としつつ、2つのDACに配分する役目を果たす。
2つのDACからはそれぞれ30GHz以下の周波数の信号が出力される。それをチップとは独立した新開発のAMUXが受け取り、高速なスイッチングにより60GHzの1つの信号として送り出す。これだけの帯域幅を使うことができれば、約250Gbps(オーバーヘッドを含めると300Gbps)の伝送が可能となる。
現在、図3のような実験系において信号送信の実証が済んだ段階だ。図に見る通り、送受信機はPCなども使いながらの模擬環境だ。レーザー光源には、波長1305ナノメートルの高速変調器集積レーザーであるEADFBレーザーを使う。
このシステムで10キロ長の光ファイバーを経由して、250Gbpsのスピードで受信側のビット誤り率は0.0263だった。これはエラー訂正で訂正可能なビット誤り率の上限である0.027よりも低い(正確には、20%のオーバーヘッドを持つエラー訂正符号の使用を前提として250x1.2=300Gbpsで実験を行い、上記の誤り率を得た。これにより実質250Gbpsで高品質な伝送が可能であることを原理実証した)。
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