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イーサネットを1Tbpsに増速する「帯域ダブラ技術」って何?5分で分かる最新キーワード解説(3/3 ページ)

» 2016年11月09日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]
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「帯域ダブラ技術」の今後

 この技術のポイントは、イーサネットによる短距離通信が、低コスト、コンパクト、低消費電力の送受信機で、高速伝送が可能になるという点だ。NTTによると、強度変調を用いた光伝送では250Gbpsで10キロ伝送は世界最速の記録だ。

 現在、1波長での実証が済んだが、この次は4波長の多重により1Tbpsの伝送実現を目指す。さらに開発、実証が済めば、100Gbpsイーサネットと同様のシンプルな光トランシーバにおいて、大幅なネットワーク増速が可能になりそうだ。

 光通信では先進的な変調技術や多値化技術が注目されがちだが、電子回路の面からのアナログ技術も盛り込んだ高速化へのアプローチは新鮮だ。また、高速化の基礎的な部分はさまざまな分野への応用も効きそうだ。

 光ファイバーの領域では実に多様な高速化技術が続々登場する。現在、やっと100Gbpsイーサネットが普及し始めし、400Gbpsのイーサネット規格が2017年には固まりそうな段階だ。その次に来るのは1Tbpsの規格といわれる。帯域ダブラ技術は、さらに次世代のイーサネット規格の候補技術としての可能性も広がる。

関連するキーワード

CMOS

 Complementary Metal-Oxide-Semiconductor、相補型金属酸化膜半導体。現在のシステムLSIのほとんどがこのタイプだ。これに乗る電子回路、論理回路は長年微細化が続けられる。デジタルデータの処理には強いが、アナログデータの処理には最適化されておらず、その部分の回路設計やノイズ低減の技術が課題となる。

「帯域ダブラ技術」との関連は?

 帯域ダブラ技術は、送信用のレーザーコンポーネントの前段でDSPからの出力を2つのDACに振り分ける技術だが、これはCMOSで作り込まれるDACの出力帯域幅が30GHz程度であり、大幅な広帯域化が当面見込めないため、より高速なデータ送信を目指すために考えられた技術だ。

デジタルコヒーレント光伝送

 光ファイバーにより多くの情報を載せて高速伝送するための技術の1つ。周波数多重に加え、位相変調、偏波多重、多値符号化などの技術を導入し、ノイズを低減しながら高速データ通信を行う。100Gbpsの速度で100波長を多重して10Tbpsのネットワークが実用化される。

「帯域ダブラ技術」との関連は?

 デジタルコヒーレント光伝送は先端光技術を利用し、レーザー装置や受光装置など光コンポーネントに高度なデバイスを必要とする。このため現状では比較的長距離のネットワークへの導入が中心で、コストや設置スペースの制約が厳しい短距離イーサネット光通信への導入は進んでいない。

 帯域ダブラ技術を用いることで、従来の短距離イーサネット光通信で採用されてきた強度変調、直接検波(IMDD)光伝送の基本構成を変更することなく、高速化を実現できる。なお、帯域ダブラ技術自体はデジタルコヒーレント光伝送にも適用可能であり、実際に両者の組み合わせによる大容量、長距離伝送の検討も進む。

AMUX

  Analog Multiplexerの略語。アナログ多重化器。複数のアナログ信号を、波形を崩すことなく切り替えて伝送するデバイス。

「帯域ダブラ技術」との関連は?

 帯域ダブラ技術では、DACの前段で入力信号を2つに分離し、それぞれを別々のDACに入力する。各DACからの出力は、DSP/DACチップの外部でAMUXを利用して1つにまとめられる。DAC前段での入力信号の分離を適切なアルゴリズムに基づいて行うことで、AMUXの出力として所望の信号を得られる。これにより限られた性能のDACの出力を倍加した上で送信できる。

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