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日本型RPAと欧米型RPAとは!?

» 2016年11月18日 10時00分 公開
[相馬大輔RPA BANK]

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日本RPA協会 代表理事で、RPAテクノロジーズ 代表取締役社長の大角暢之氏は2016年10月27日、虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都港区)で開催された「第3回 Pega Tokyo Summit」で、「日本型RPAの実態と今後の方向性について」と題する講演を行った。日本ならではのRPAの形や、日本RPA協会がどんなことを目標にしているのかなどについて語り、集まった人たちの興味を誘った。

「RPA(ロボテック・プロセス・オートメーション)という言葉が、今年に入って日本でも一気に広まってきました」――。大角暢之氏は講演の冒頭でこう切り出した。

大角氏は過去10年に渡り、RPAの研究開発を含めた事業を行ってきた。RPAテクノロジーズの主力製品である「BizRobo」は、現在国内ユーザー数100社、4000ロボットが利用されている。 こうしたことを踏まえ、「現在はRPAの普及期に差し掛かっている」と大角氏は分析する。

 そんななか、エンドユーザーや有識者などに対し、安心してRPAを普及させたいと感じたことをきっかけに、2016年7月に日本RPA協会を設立した。「日本RPA協会では、日本型のRPAをきちんと普及させたいと考えています」と大角氏は話す。 日本RPA協会は、ホワイトカラーの生産性を上げることに直接的に貢献していく方針だ。ただ、問題はRPAを作る人材とロボットをマネジメントする人材が不足していること。

 また、ロボットをどう管理していくのかも課題の1つである。 「人のマネジメントなのか、ITのマネジメントなのか、あるいは両方を融合した形になるのか。ここをしっかりと整理する必要があると考えています」(大角氏) こうした課題を解決するだけでなく、様々な分野の有識者と連携し、RPA市場を活性化させ、雇用の創出や新しい事業の創造に貢献するのが日本RPA協会の目指すゴールだという。 また、日本RPA協会は米国のRPA協会や、欧州のRPAフォーラムとも連携しており、それぞれの団体への視察も行っている。

人間とアプリの間に入る「デジタルレイバー」

 RPAについて、実は世界共通の定義は定まっていないという。だが、ブルーカラーの作業をファクトリーオートメーション(FA)が代行しているのと同じように、ホワイトカラーの作業を『デジタルレイバー』が代行するという考え方があり、これが世界共通語となっている。 「これまでは電卓というアプリケーションがあっても、それを操作するのは人間だという前提がありました。

 しかし、RPAを用いることで、RPAが人間の操作を記録し、記録したファイルが人間の作業を代行できるようになる。つまり、人間が電卓を叩く必要がなくなるのです」(大角氏) しかもデジタルレイバーは、プログラミングを行う必要がないため、業務の変化をキャッチアップしやすいというメリットを持つ。チューニング的な感覚で作業の変化に対応できるのだ。「そのため、KPI(重要業績評価指標)が改善させるどころか、最大化させることができます」と大角氏は言う。

  また、デジタルレイバーのもう1つの特長として、圧倒的な能力を持つことが挙げられる。例えば経費チェックを人間が行う場合に10時間のリードタイムが掛かっていたものが、ロボットを使えば5分で終わる。また、人間の場合、多少のミスが発生するかもしれないが、ロボットならばミスを犯す恐れがない。原価も限界コストまで下げることができる。また、人間が作業を行う場合、リードタイムを縮めるほど品質が落ちていくという課題があるが、デジタルレイバーであればそういった心配はまったくないのだ。

  「日本ではこういった経営面の効果に加え、労務的な効果も高く評価されています。人間の場合、1日の作業時間は8時間ですが、人間の180倍のパフォーマンスを発揮するデジタルレイバーの場合、24時間365日稼働させ続けることができるからです」(大角氏) また、人間の場合、離職リスクがあるが、デジタルレイバーの場合、延々と働き続けることが可能となる。 「ブルーカラーの仕事では、人間と機械の間にFAがある3層構造ですが、ホワイトカラーの仕事においても、人間とアプリケーションの間に入る新たな層としてデジタルレイバーがあるのだと考えています」(大角氏)

 では、RPAはどのような職場で利用されているのだろうか。「BizRoboのビジネスを始めたころは、それを受け入れてくれるところが少なく、仕事が過酷で人がどんどんやめていく事務センターや、先進的な考えを持つ企業に導入してもらう程度でした」と大角氏は当時を振り返る。 先進的な考えを持つ企業の1つが日本生命だ。

 ロボット事務センターを設置し、従来、80人の社員で行っていた業務のうちルーチンワークをRPAに任せることで、13人の社員でまかなえるようにすることに成功した。「まさに人とアプリケーションとデジタルレイバーの3層構造で結果を出した好事例です」と大角氏は笑みを見せる。 RPAにまったく技術的な課題がないわけではない。

 例えば、ソフトウェアのトラブルが生じたとき、誰がどうやってトラブルシューティングするのかといったことはとても重要だ。また、人間とロボットが一緒に働いたときに安定的に運用できるか、想定外のデータが届いたときに作業を止めることができるかなどといったことも重要である。「RPAを利用する際、危険が生じることもありますので、こうした点には注意していかないといけないと考えています」と大角氏は説明する。

日本の多くの企業でRPAの導入検討が始まる

 外資系コンサルティングファームのRPAソリューションが出揃うなど、現在、RPAの普及が進んでいる。今後、企業規模を問わず、日本の企業の多くがRPAの導入を検討し始め、PoCレベルのプロジェクトがあちこちで行われるようになることが予想される。

  「そういった中で日本RPA協会は、RPA事業者のマーケティングを支援するとともに、ユーザーの立場に立って客観的に技術を評価し、適切な製品を勧めるといった両方の役割を全うしてRPAの普及に貢献していきたいと考えています」(大角氏)

 日本では、現場の業務課題や業務要望はシステム間起案として検討されるが、ROI(投資対効果)の壁があり、それに見合うものはシステム投資、あるいはBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)プロジェクトとして投資されるだろう。

 「しかし、投資が断念された業務や、起案もされないような作業はどうしても人が行わなければならなりません。それをRPAが担っていくというのが日本型RPAだと考えています」と大角氏は指摘する。

 「直接部門の3層化が原理としてはシンプルだと思いますし、日本人の得意とするところです。今後、日本は労働人口が減っていくのでデジタルレイバーにどんどん働いてもうことが日本型RPAの進化のシナリオの1つだと考えています」(大角氏) 大角氏は最後に日本RPA協会の事業について語った。1つはBizRoboを中心としたRPAユーザー企業を取材して書籍化することやマスメディアへの対応などといった情報発信。

 また、RPAを体感できるワークショップの開催やRPA事業開発支援も行うという。 2つめは人材の育成。「本来であればシステムエンジニアにRPAを使ってもらうことが一番良いと思っていますが、構造的な問題もありなかなか難しいのが現状です」と大角氏。デジタルネイティブ世代の若者がRPAに興味を持ってもらえるような活動をしていくことが欠かせないのだ。 3つめはRPAファンドの運営。実証実験や事業開発も行っていくという。

  「日本RPA協会の会員になったユーザー企業の方や、RPAを使って事業開発を検討している方とはフラットな関係で事業を創造していきたいと考えています。協会の活動に興味を持った方は、ぜひ入会してください」。大角氏はこう話し、講演を締めくくった。

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