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新世代不揮発性メモリ「NRAM」って何だ?5分で分かる最新キーワード解説(3/3 ページ)

» 2016年12月14日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]
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NRAMのカバー領域と今後の展開

 NRAMの特徴をまとめると、不揮発性、大容量、低消費電力、高速な読み出しと書き込み、高速ランダムアクセス、書き換え可能回数の上限が大きい、熱耐性が強いといった点だ。これは冒頭に記したメモリデバイスに求められることの多くを満たす。

 サイズとコストはどうだろうか。富士通セミコンダクターが当面目指すのは55ナノメートルプロセスのNRAM混載カスタムLSIだ。半導体のプロセス微細化は14ナノメートルにまで進み、7ナノメートルプロセス試作のニュースも聞こえる昨今、少し控えめな数字に見えるが、さらなる微細化は計画に入っている。

 同社では2018年末にはNRAM混載のカスタムLSI生産を始め、翌年からの販売を予定する。その次は汎用(はんよう)メモリとしての生産を計画し、数年をかけて16Mビット、64Mビット、256Mビットへと容量を拡大する考えだ。この流れの中で微細化も実現すると思われる。

 当初、市場でライバルとなるのは大容量のEEPROMや小容量のNOR Flashとなると見ており、当初からEEPROMに対してコスト優位に立つことを考えている。

 具体的なアプリケーションとして、自動車、ネットワーク(ルーター)、サーバ(SSD)、産業機器(PLC、CNC、HMI)、電力メーター、OA機器(プリンタ、電子ペーパー)、医療機器(補聴器)、ゲーム機(アミューズメント)を視野に入れる。

 他の不揮発性メモリとの住み分けは主に容量と書き換え耐性が関わると考えられ、NRAMは図3のように比較的書き換えが多く、大容量が求められる用途に向く。

不揮発性メモリの容量と書き換え耐性によるすみ分け 図3 不揮発性メモリの容量と書き換え耐性によるすみ分け(出典:富士通セミコンダクター)

 NRAMは、Nanteroが技術開発してライセンス提供ビジネスを展開中であり、複数の半導体企業や工場が共同開発やライセンスを協議中とのこと。その中で商品化をいち早く表明したのが富士通セミコンダクターだ。また、ウェハーファウンドリ会社(製造受託会社)である三重富士通セミコンダクターは、ファウンドリ顧客向けにNRAMベースのテクノロジーを提供する予定だ。

 なお、NRAM技術の最新の学術研究では1兆回(10の12乗)までの書き換えや、300度で10年以上のデータリテンション(記憶保持)が可能との研究成果がある。さらなる書き換え上限回数の伸びや厳しい条件で使用される組み込み機器への応用が考えられそうだ。

 書き込み速度に関しては、ほぼDRAM並みの高速動作が将来的には期待できる。取材した専門家は「将来的にはDRAMを置き換える」との意気込みも示した。3D Xpointなどの新技術やMRAMの進化にも期待される現在、不揮発性メモリの動向からは目が離せない。

関連するキーワード

カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube/CNT)

 炭素原子が六角形状の網の目のようにつながり、中空の筒形となった構造を持った物質。単層CNTの場合は円筒型、多層CNTの場合は単層CNTが入れ子になる。サイズは直径で0.4〜50ナノメートル(ナノメートルは10億分の1メートル)と微細なもの。高い導電性と耐熱性、化学的安定性を持ち、機械的強度も高いが柔軟性もある。LSIの配線部などへの応用も期待されており、チップ微細化にも役立つと考えられる。

「NRAM」との関連は?

 データの記録と保持にCNTを利用する次世代不揮発性半導体メモリが「NRAM」だ。

NAND Flash、NOR Flash

 EEPROMから発展した不揮発性半導体メモリ技術。NOR Flashはバイト単位アクセスなどの長所があり、NAND Flashは高速書き込み、ページ単位アクセス、高集積可能なところが強み。NAND Flash技術はSSDとしてHDDに匹敵する大容量、HDDを上回る高速記録メディアとして普及した。NOR Flash技術は組み込み機器用のシステムメモリとして多用される。

「NRAM」との関連は?

 NRAMはNOR Flashの応用領域も一部包含するが、書き換え消費電力、書き換え速度、書き換え上限回数、データ保持特性、熱耐性などのNOR Flashの課題をNRAMは解消すると考えられる。

CBRAM(Conductive Bridge RAM)、PCRAM(Phase Change RAM)

 CBRAMは導電性ブリッジRAMともいい、抵抗変化を利用してデータを記録、保持するReRAMの一種。低消費電力、低コスト、DRAM並みの容量が特徴の不揮発性半導体メモリ。

 PCRAMは相変化メモリ、PRAM、PCMなどとも呼ばれ、DRAMのキャパシタ部分を相変化膜とした構造をとる。材料が結晶相である場合に抵抗が低く、アモルファス相である場合に抵抗が高くなる特性を利用した不揮発性半導体メモリ。特に微細化、高集積度に期待される。

「NRAM」との関連は?

 抵抗変化を利用する点では同じだが、原理が全く異なる。NRAMはCBRAMとPCRAMに共通する書き換え回数の上限の低さや書き込みの遅さをカバーするものと考えられる。

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