このように「IoT」への取り組みにはクライアント端末環境が深くかかわっている。そこで、年商500億円未満の企業に対して「IoTへの投資意向」を尋ね、その結果別に先述の「さまざまな端末環境の活用意向」を集計した結果が以下のグラフである。
先に挙げた小売店における例の場合、商品配置が最適化する過程においては少量多品種を取り扱う必要が生じてくる。そのため、全ての企業が(1)のように自力でIoTへの取り組みを実践できるわけではない。「他の小売店と共同で商品の開発/調達をする」((2)に該当する)や「卸売業と協業して商品の調達力を高める」((3)に該当する)といった選択肢も考慮する必要があるわけだ。
それではグラフに示された内容を詳しく見てみよう。
上記2つの回答割合は「投資の必要はない」や「全く判断できない」と比べ、「自社単独で投資予定」「同業他社と共同で投資予定」「他業種と共同で投資予定」といったIoT投資意向を持つ企業で高くなっている。
センサーなどから収集したデータを分析し、その成果をビジネスに生かすためには「店舗」「工場」「建設現場」などの現場部門の従業員が分析結果に基づく指示を手軽かつ素早く確認できることが重要になる。
また最適化の一環として商品や資材の調達を他社と共有するとなれば、セキュリティの配慮も不可欠だ。こうした場合のクライアント端末環境としてはアプリケーションを一括管理でき、端末機器にデータを残さないデスクトップ仮想化が有効な選択肢の1つとなってくる。このようにIoTへの取り組みにより、デスクトップ仮想化が再度注目を集める可能性も十分考えられる。
年商500億円未満全体を対象に上記2つの活用意向を尋ねたときには回答割合はわずか4%程度にとどまっていた。だが、IoT投資意向に関して「自社単独で投資予定」や「同業他社と共同で投資予定」と回答した企業では10%超となっている。
設備の保守/サービスを担う業種ではスマートグラス上に装着したカメラで現場の状況を収集し、過去の作業情報と照合することで対処法をスマートグラフ上に表示するという取り組みが行われている。作業員の個人スキルに左右されない作業品質を実現するとともに、目の前の視界や両手が空いた状態で現場作業を行えることによる効率化を目指しているわけだ。
建設業では施工前の現場をドローンで空撮し、そこから3次元データを生成することで測量の手間を大幅に削減するといった取り組みが進みつつある。
このようにウェアラブル端末やドローンが「センサー」に相当する役割を果たすIoT活用も登場してきている。この場合、企業にとってはウェアラブル端末、ドローンの導入費用や操作に必要なスキルの習得が障壁となりやすい。
そのため、同じ業種の複数企業で共同利用するという選択肢も有効となってくる。ウェアラブル端末やドローンの活用意向が「自社単独で投資予定」よりも「同業他社と共同で投資予定」において若干高くなっている背景にはこうした要因があるものと考えられる。
これまで見てきたように、「IoT」は単にデバイスがネットワークに接続されるだけでなく、業務システムに変化を生じさせ、企業間には新たな協力関係をもたらす要素を持っている。その結果、クライアント環境にも「デスクトップ仮想化の活用」や「ウェアラブル端末やドローンといった新たな端末機器の導入」といった変革を起こす可能性があるわけだ。
「IoT」というと、センサー、ネットワーク、クラウドといったデータを「収集する部分」のみに注目してしまいがちだが、ビジネス面の成果を享受するためにはクライアント端末環境への配慮も欠かせない。こうした視点で考えると、PC関連の今後の計画立案も単なる現状維持ではなくなってくるはずだ。本稿がIoT時代に向けた賢いクライアント端末環境構築の参考となれば幸いである。
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