会議中に送っていたメールがバレる。「Office 365」のメールの使用時間とスケジューラーに設定されている予定の相関を分析してAIが働き方をレコメンドすると企業はどうなる?
残業上限月60時間案――本当に対応できるのか? そう不安を感じる企業も多いのではないだろうか。日本政府の「働き方改革」は国内のみならず、世界でも珍しい国を挙げての取り組みと注目されている。そんな中、日本マイクロソフトは2月16日、「もうやってます」とばかりに、「Office 365」に搭載されている「MyAnalytics」および「Office Delve」を働き方改革に利用する方法について、自社事例を例に引いて説明した。
「2017年は日本マイクロソフトの働き方改革、第2章の始まり」と語るのは同社コーポレートコミュニケーション本部 本部長の岡部一志氏だ。同社は2011年頃から始まったフリーアドレスオフィス、テレワーク、モバイルワークといったフレキシブルなワークスタイルを支援する取り組みを行ってきたという。
「その取り組みにAI(人工知能技術)の活用をプラスして、働き方の分析を基にした『気付き』を取り入れる方向へシフトする。これは社員の健康管理と長時間労働の抑制を柱とし、また新しい会議形態を作り出すものでもある。当社は政府の働き方改革の方針に沿って、全社をあげてこれに取り組む」と決意を語る。その決意に現実味を与えているのが、Office 365に搭載されている「MyAnalytics」と「Office Delve」である。
日本マイクロソフトがいう「働き方AI」とは何だろうか。Officeマーケティング本部の輪島文氏は「量と質の両面で働き方を見える化し、より良い働き方を示唆する、華やかさはなくともリアルで地に足がついたソリューション」だと説明する。
「時間外労働の抑制が表面的にはできたとしても、自宅に仕事を持ち帰る人もいるでしょう。実際の労働時間と残業時間にはギャップ発生してしまうものです。また時間外労働を減らせば仕事の量も減るのでは企業としては成長しない。それなら仕事から無駄時間をなくすという、本質的な部分に力を注ぐ方が良い」といい、そのために自分の働き方を振り返り、見直すことが重要だとする。その支援を行うのがOffice 365などのICTである。「あくまで働き方支援ツールであり、従業員管理のためのものではない」とした上で、次のような機能を紹介した。
MyAnalytics(Office 365 Enterprise E5に標準搭載、他のエンタープライズエディションにアドオン可能)では、Office 365を使って誰とどのようなコミュニケーション、コラボレーションを行っているのかの傾向が可視化できる。図1は従業員の1人の作業時間の統計情報(ダッシュボード)画面だ。
全世界のホワイトカラーの仕事の3割がメール作業で占められており、その次に占めるものは会議であるという。メールに費やした時間と会議時間を見える化すれば、自分の働き方のを客観的、具体的な数値をもって眺められることになる。
メールの統計では作業時間ばかりでなく、相手側の既読率、相手先のグループ、応答までの時間などの状況も分かる(図2)。連絡や情報共有に時間がかかっていれば、連絡手段を相手に応じて対面会議、SNS、チャットなど最適なものに変えたり、別の情報共有手段を利用するなどの対応を図ることができる。
会議の傾向も同様にまとめて表示可能だ。どのような会議にどれだけ時間がかかったかはもちろん、残業時間に実施された会議、比較的長時間かかった会議、予定時間が被った会議(競合)、さらには会議中の「内職」(多重タスク=会議中にメールするなど)もカウントされる(図3)。
このような結果を見れば、会議中にメール作成、送受信などを行う“内職”の多い会議は重要性が乏しいのでもっとアジェンダと目的を絞り込んで回数を減らすとか、全員参加の会議で多くの時間が取られているならその頻度を見直すなどの対策が可能になりそうだ。
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