エンドポイントでランサムウェアの本体が実行される。ネットワーク対策ではマルウェアの実行を阻止することは無理だ。不用意な添付ファイルの開封やURLクリックを避けるよう従業員を啓発し、日頃からシステム内に既知の脆弱性が存在しないよう、セキュリティパッチ適用やバージョンアップを適時に実行しておく必要がある。
マルウェアの実行を阻止するためには統合的なセキュリティサービスとエンドポイントでの監視ツールが必要だ。例えば、図2にあるウォッチガードの「TDR」は、セキュリティアプライアンスとエンドポイント(センサーモジュール)からのイベント情報を収集し、クラウド上の管理基盤上で脅威インテリジェンスとの相関分析、脅威情報のスコアリングを行い、エンドポイントでの自動レスポンスまで含めたセキュリティ強化を可能とするソリューションだ。PC上のホストセンサーはスタンドアロン環境でも有効なランサムウェア防御機能に対応している。
また、参考までに、セキュリティサービス業者が提供している監視サービスの一例を図3に示す。
なお、攻撃パターンの分析によりシグネチャが出来上がったタイミングで、同ベンダーのUTM全てにシグネチャが自動配布されるので、以降、同種の攻撃はブロック可能になる。つまり、世界のどこかで発見された攻撃はシグネチャ化され、同じ攻撃はそれ以降ブロック可能になるわけだ。
内部に潜伏したマルウェアの機能により、外部の司令サーバ(C&Cサーバ)との通信経路を確立し、ランサムウェアの場合は暗号化キーを取得する。標的型攻撃の場合はさらなる侵入のためのツールなどをダウンロードする。
UTMによる防御機能
【Webフィルタリング】
既知のC&Cサーバとの通信を検知次第に遮断する
【Webレピュテーション】
ハイリスクな外部サイトとして登録されている通信先との接続を遮断、あるいは通報する
ランサムウェアの場合はファイルの暗号化がスタート。標的型攻撃の場合はシステム内の情報探索、その後の情報収集、外部送信などのプロセスが続く。
プロセスの動作を監視するにはエンドポイントでのツールが不可欠だ。(3)の場合と同様に、統合的なセキュリティサービスとエンドポイントの監視ツールを利用する場合は、実ファイルの変更前に変更の振る舞いを検知し、そのプロセスを自動停止することが可能だ。
以上が、ランサムウェアや標的型攻撃の典型的なパターンとそれに即したUTMを利用した防御機能となる。これほどの多層的な防御をしていても、現在の脅威に完璧な対策とはならないことには注意が必要だ。例えばPetyaなどの新手の攻撃ではOSのマスターブートレコードを改変する手法が使われており、エンドポイントのセンサー機能が無効化されることもままある。同様に、特にIPSやアンチウイルス、サンドボックスでの検知を回避する機能など、セキュリティ機器の裏をかく手口が日々追加されている状況にあることは理解しておかなければならない。
もちろん、だからといって対策が無意味になることはない。現実では既知の古い手法を使った攻撃が主流だ。標的型攻撃であっても、実際は無差別に標的探索が行われており、セキュリティが甘いシステムや脆弱性を狙いやすいシステムが標的になることが多い。これは金銭目的の攻撃者は、常にコストと報酬をてんびんにかけており、攻撃コストが高いと思えば狙わないからだ。その意味でも既知の攻撃に対応できるよう、UTM導入などの基本的なセキュリティ対策を急ぐ必要がある。
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