メディア

デジタル庁、生成AIの利用実績を初公表、職員の間で利用格差も

デジタル庁は生成AI利用環境「源内」を職員向けに内製導入し、その利用実績を公開した。業務効率化や文章校正などにおいて、約8割の職員が効果を実感しているという。役職や年齢、経歴によって利用状況には差が見られた。

» 2025年09月08日 10時00分 公開
[後藤大地有限会社オングス]

 デジタル庁は2025年8月29日、同庁職員による生成AIの利用実績を公表した。人口減少と少子高齢化による担い手不足が進行する中、公共サービスの維持と強化のためにはAIの積極的な活用が不可欠と考え、今回の公表はその取り組みの一環とされている。

約8割の職員が効果を実感、生成AI環境「源内」の活用実態

 デジタル庁は5月から「ガバメントAI」の取り組みの一部として、全職員が利用可能な生成AI利用環境「源内」(げんない)を内製した。源内では「国会答弁検索AI」や「法制度調査支援AI」といった行政実務用のアプリケーションに加え、文章生成や要約、翻訳などの汎用(はんよう)的なAIが提供されている。8月時点で20種類の行政実務用AIが利用可能となっており、今後も拡充が予定されている。

 2025年5月から7月までの3カ月間で、約1200人の職員のうち約950人が源内を利用し、利用回数はのべ6万5000回を超えた。職員1人当たり平均70回利用した計算となり、生成AIが日常業務で一定程度定着している状況が示されている。利用内容としては、チャット機能の利用が最多で、文章生成や校正、画像生成、翻訳機能なども幅広く活用されている。行政実務用アプリについても、法令調査や国会答弁検索、公用文チェックなど多様なユースケースで利用されている。

 利用実態には差が見られた。

 利用頻度にはばらつきがあり、3カ月間で100回以上活用した職員が150人を超える一方で、170人は5回未満の利用にとどまった。若手職員や民間出身の職員が生成AIを積極的に活用する傾向が見られる一方で、課長級職員の約半数は利用実績がなかった。デジタル庁はこうした状況を踏まえ、全体的な理解の促進や実用性の高いツール開発を推進する方針を示している。

 職員を対象としたアンケートにおいて、利用頻度として「週に数回」が多く、業務効率化への寄与については「ある程度寄与している」が57.3%、「非常に寄与している」が21.8%となり、約8割の職員が効果を認めた。満足度は5点満点中3.7、今後の必要性は同4.2点と評価された。

 生成AIの利用で得られた成果としては、情報整理や思考の補助、文章校正や翻訳などに役立ったとの意見が多く寄せられた。特に壁打ち相手として考えを整理する用途や、大量の行政文書から必要部分を抽出する用途が評価されている。議事録や要約作成、プログラムのデバッグ補助など業務改善に直結する具体的な事例も報告されている。

 改善要望も多く、最新モデルへの更新や情報源を明示する機能、ファイル処理機能の拡張、翻訳精度の向上、議事録品質の改善などが挙げられた。モデルの性能や回答精度に関する不満も一定数存在し、職員によっては私的に利用している外部サービスとの比較で差を感じるとの声もあった。

 今後についてデジタル庁は、庁内での利用検証を基に、政府および地方公共団体に同様の環境を展開する方針を示している。また官民連携によるAIエコシステムの形成を進め、社会全体へのAI実装を後押しするとしている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。

アイティメディアからのお知らせ