AIのビジネスへの導入が当たり前になりつつある近年、AIに関連する企画も複数登場している。現在日本で受験できるAI関連の資格試験について、実施母体や学べる内容、2026年度の試験日程をまとめる。
ビジネスでのAI活用が当たり前になりつつある現在、AI関連資格を取得したことで給与や担当領域が見直されることもあるが、資格の勉強をするだけでも、いま広く普及しているAIやAIを組み込んだ各種ツールへの理解は大きく深まる。
AI関連の試験は大きく3つに分類できる。1つ目はAIの開発や実装などを意識したITエンジニア向けのもの、2つ目はAIをビジネスで活用するための知識を身に着けることを目的としたジェネラリスト向けのものだ。この他、ベンダーが主体となって実施される認定試験もある。
本稿では、現在国内で受験できるAI関連の資格試験について、実施母体や学べる内容、2026年度の試験日程をまとめる。年末年始を含む長期休暇などを利用して勉強してみてはいかがだろうか。
エンジニア向けとビジネス向け、ベンダー認定の3つに大別し、主要なAI資格の概要と最新スケジュールをまとめた。自身のキャリアプランや習得したいスキルレベルに合わせ、最適な試験選びの参考にしてほしい。
E資格は松尾豊教授(東京大学大学院工学系研究科)が理事長を務める日本ディープラーニング協会が実施する資格試験だ。「ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力や知識を有しているかを認定する」としている。
JDLA認定プログラムとは、大学や民間企業が実施する講座のうち日本ディープラーニング協会が認定したもので、これを試験日から数えて2年以内に修了している必要がある。
試験範囲は「数学的基礎」「深層学習の基礎」「開発・運用環境」「機械学習」「深層学習の応用」とされている。過去の問題は公開されておらず、資格勉強用の問題集やテキストが書籍として販売されている。問題集には行列計算やプログラムの穴埋め問題などが掲載されている。シラバスは2026年8月実施分から改訂されるため注意が必要だ。
AI実装検定は「AI実装検定実行委員会」が実施する資格試験だ。同事業はITコンサルティングや運用支援などを手がけるEQUATIONが運営する。「ディープラーニングに関する実装能力と知識の判別を目的に行うもの」としている。
難易度別に「S級」「A級」「B級」があり、それぞれに実施内容が異なる。
S級は「AIの実装力だけでなく画像処理をメインとした実践的な力と、自然言語処理や有名モデルの実装などの応用的な実装に対しても挑戦できる力を認定」するという位置付けの試験だ。試験範囲は自然言語処理とさまざまな深層学習モデルで、公式Webサイトには、プログラムを見て対象範囲にあるプログラムの役割を答える問題が掲載されている。
A級は「ディープラーニングの実装について数学、プログラミングの基本的な知識を有し、ディープラーニングの理論的な書籍読みはじめることができ、独学の準備が出来る力を認定」するという位置付けだ。日本ディープラーニング協会のE資格に挑戦できるレベルとしており、試験範囲も「AI」「プログラミング」「数学」となっている。
B級は「AIに興味があるが、全く知識のない入門者が最初の目標として気軽に挑戦できる試験」とされている。試験範囲は歴史や「CPUとGPUの違い」、ディープラーニングの概念的理解などが含まれる。
G検定はE資格と同様に日本ディープラーニング協会が実施する試験だ。「AI・ディープラーニングの活用リテラシー習得のための検定試験」としている。
G検定はE資格と異なり、開発実装力を見るものではなく、AIやディープラーニングの基礎的な知識や法令に関する内容、「AIプロジェクトの進め方」などを学べる資格試験だ。公式Webサイトで例題が公開されている他、問題集やテキストが書籍として販売されている。
生成AIパスポートは井畑敏氏が理事長を務める生成AI活用普及協会が実施する資格試験だ。「生成AIに関する基礎知識や動向、活用方法に加え、情報漏洩や権利侵害などの注意点まで網羅し、AI初心者が最低限押さえておきたいリテラシーを体系的に習得できる」としている。
試験範囲は「AI」「生成AI」「現在の生成AIの動向」「情報リテラシー・AI事業者ガイドライン・AI新法」「テキスト生成AIのプロンプト制作と実例」としている。G検定と同様にAIやディープラーニングなどの技術の基礎的な知識も学べるが、プロンプティング技法についての項目もあり、AIを利用する人向けの内容という印象を受ける。
試験対策においては、LINEアプリで問題集にチャレンジできる取り組みがある他、公認テキストも用意している。パソコン教室アビバなどで試験対策講座も開かれている。
AWS Certified AI PractitionerはAmazon Web Services(AWS)が実施する認定試験だ。「AWSのAI、機械学習技術を使用するソリューションを熟知してはいるが、必ずしも構築するわけではないという個人」としている。
AWS Certified AI Practitionerは、AWSの主要なサービスについて精通していることを推奨している認定試験だ。出題範囲は「AIと機械学習の基礎」「生成AIの基礎」「基盤モデルの応用」「責任あるAIに関するガイドライン」「AIソリューションのセキュリティ、コンプライアンス、ガバナンス」と、G検定に似た構成になっている。65問のうち採点対象外の問題が15問含まれているが、受験者が採点対象の問題を判別することはできない。
試験は各地にあるピアソンVUEのテストセンターで受験できる。AWSの認定試験は複数あり、AI Practitioner合格後に受験を推奨する試験として「AWS Certified Machine Learning - Specialty」や「AWS Certified Data Engineer - Associate」「AWS Certified Machine Learning Engineer - Associate」などが用意されている。
AI-900とAI-102はそれぞれ、初級の「Azure AI の基礎」、中級の「Azure AI エンジニア アソシエイト」のことだ。
AI-900はG検定のように、AIやディープラーニングの基礎的な内容を確認するのに加え、AzureのAIサービスについても聞かれる認定試験。各種サービスで何ができるかは理解している必要がある印象だ。AI-102は難易度が上昇するとともに、AzureのAIサービスに関する問題の割合が急増する。
いずれも「プラクティス評価」というサンプル問題が提供されている。試験は各地にあるピアソンVUEのテストセンターで受験できる。
Generative AI Leader(Leader)とProfessional Machine Learning Engineer(Engineer)は、生成AIや機械学習の知識を図る認定試験だ。「Gemini」や「Vertex AI」などGoogleの生成AIサービスに関する問題も出題される。
Leaderは生成AIの基礎やビジネス戦略などを問うもので、公式Webサイトに掲載されたサンプル問題の内容はG検定やAI-900とほぼ同様だった。一部GeminiなどGoogleの生成AIサービスに関する問題が含まれる。
Engineerは「Google Cloud を使用したソリューションの設計と管理の1年以上を含む、3年以上の業界経験」があることを推奨している。こちらは寄り難易度が高く、Vertex AIをはじめとするGoogleの生成AIサービスの知識が前提として求められる。
試験はいずれもオンラインもしくは各地のテストセンターで受験できる。
AI関連資格は、職種によって受験すべき試験の方向性が異なる。ビジネス部門ならG検定や各種ベンダーが実施する初級試験、ITエンジニアならE資格やベンダーの中級以上の試験などが推奨されている。
AI関連資格の多くは選択式で構成されているため、運が良ければ勘でも合格してしまう可能性がある。受験においては資格を取得することも重要だが、勉強期間において知識や技能を身に着けることが重要だ。
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