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外部ツールはもう不要? Googleのサービスを使い倒す現場の工夫【活用事例】Google Workspaceの利用状況(2025年)/番外編

Google Workspaceを単なるメールやストレージとして利用するだけでは、投資効果は十分に発揮されない。本稿では、読者企業へのアンケートを基に、現場が工夫してアプリやサービスを活用する具体例を紹介する。

» 2025年11月27日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 「Google Workspace」に含まれるアプリやサービスを“最低限の業務をこなすためのツール”としてしか利用しているだけなら、それは投資の価値を十分に引き出せていない可能性がある。Google Workspaceの強みは、メールやストレージといったグループウェア機能だけではなく、リアルタイム共同編集や自動化、AI機能など、日々の業務を根本から効率化する仕組みにあるからだ。

 本稿では読者企業を対象に実施したアンケート(実施期間:2025年10月22日〜10月31日、回答件数:217件)のうち、「Google Workspace の基本アプリ(ドキュメント、スプレッドシート、ドライブ、カレンダー)以外のアプリやサービスを使ったことがあるか」という設問に寄せられたコメントを紹介する。各企業の現場がどのように工夫し、どのアプリを活用し、どのように業務効率化を模索しているのか。その具体的な活用例や、そこから見えてきた課題を基に、Google Workspaceをより生かすためのヒントを探る。

「外部ツールに頼らない」Googleサービスを使い倒す現場の活用例

 今回のアンケートでは、AIやクリエイティブ系ツールを積極的に活用する企業が目立った。企業や自治体なども利用が進む「NotebookLM」を使って社内データを要約したり、業務改善のアイデアを抽出したり、「Google Gemini」で長文の要約や記事の下書きを作成したりと、文章生成や情報整理といった業務プロセスにAIを組み込む取り組みが広がりつつある。

 また、画像生成AI「Imagen」で資料向けの画像を作成したり、「Google Vids」で動画編集したりするなど、これまで外部サービスに依存していたクリエイティブ領域をGoogle Workspaceで完結させる動きもある。

 ただし、こうしたユースケースはユーザーのスキルに左右されやすく、社内で活用度のばらつきが大きい点は課題として残る。実際には「Gemini のサイドパネルが浸透していない」という声も寄せられており、情シスとしてはAI活用をどのように促進させ、教育支援を進めていくかが今後の課題となるだろう。

 さらに、「Google AppSheet」で在庫管理アプリを開発したり、「Looker Studio」でデータを可視化したり、「Colab」でコード検証をするなど、Google Workspaceをデータ分析や開発プラットフォームとして活用する声も聞かれた。とはいえ、こうした活用法は一部の先行ユーザーに限られている点が課題となる。企業として活用を継続、拡大するためには、こうした先行ユーザーの知見やノウハウをどのように組織全体へ展開するかが重要であり、その仕組みづくりこそ情シスに求められる大きな役割と言える。

業務効率化のカギは情シスにあるか 利用のばらつきと運用課題

 また、利用が目立ったもう一つのアプリとして「Google フォーム」が挙げられる。多くの企業で社内アンケートや出欠管理、参加申込書の作成に日常的に活用されており、回答データが自動的にスプレッドシートへ蓄積され、データを管理しやすい点が評価されている。中には、Google フォームを業務用のフロントエンドとして位置付け、取得したデータをスプレッドシートで管理するユースケースも聞かれた。現場が自らデータ収集の仕組みを構築できることは、情シスの手を借りずに業務改善を進められるという意味で、Google Workspaceの大きな活用メリットと言える。

 「Microsoft Office」のファイルをGoogleのファイル形式へ変換して「スプレッドシート」で一元管理しているという声も聞かれたが、その一方で部署によっては「Excel」や「Word」の利用が根強く、Googleアプリとの併用によりファイル形式が混在しているという声もあった。完全にGoogleアプリへ移行できている企業もあれば、個人の裁量に任されている企業もあり、運用ルールが統一されていないという課題も浮かび上がった。

 オンライン会議ツールでは「Google Meet」の利用が根強い。従来のビデオ会議用途にとどまらず、AIと組み合わせた議事録の自動生成や文字起こしなど、会議後の作業を効率化する取り組みが広がっている様子が見て取れる。会議中の発言を自動的に文章化し、その内容を要約して議事録として配布するという企業もあり、会議運営全体の効率化へも取り組んでいることが分かる。これまで議事録作成に時間を割いていた担当者にとって、こうした機能は業務負担の軽減という大きなメリットを感じるところだろう。

 コミュニケーション面では「Google Chat」に関するコメントもあった。プロジェクトチームのやりとりやダイレクトメッセージでの連絡手段として日常的に活用されており、利用スタイルはMicrosoft Teamsと近い。また、「Google Keep」や「Google Tasks」をメモやタスク管理に使うユーザーも一定数おり、業務の補助的ツールとしてGoogle Workspaceの周辺アプリが自然に取り入れられている。ただし、これらの利用は個人レベルにとどまり、組織的な活用ルールが整備されていない可能性もある。

 今回寄せられたコメントを総合すると、Google Workspaceは多くの現場で幅広く利用されているものの、活用レベルや利用アプリの範囲は部署や個人によってバラつきがある。Google フォームやスプレッドシートのように現場での活用が自然に広がりやすいアプリもあれば、AIツールや高度なアプリなど、利用が限定されており組織的なサポートが不足している領域もある。また、Officeツールとの併用による混乱や、共有設定、命名規則といった基本的な運用ルールづくりも、多くの企業に共通する課題として浮かび上がった。

 情シスの役割は、もはやアカウント管理やセキュリティ設定といった管理業務だけではない。今回のアンケートが示す通り、Google Workspaceには現場の業務効率や働き方を変えるポテンシャルがある。それらを最大限生かすには、まず現場の利用実態を把握し、適切なルール整備、教育、そしてノウハウの水平展開を進める必要がある。Google Workspaceを単なる「便利なツールの集合体」から「組織全体の変革を支えるプラットフォーム」へと進化させる上で、その鍵を握るのは情シスの運用と支援体制であると言えるだろう。

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