同社の音声合成はどのような用途があるのだろうか。「さまざまな業界で活用できる」と話す戸田氏は、防災や電話自動応答、交通情報などのナビゲーション、メディアでの活用例を紹介した。
防災の分野では、災害発生時に住民に注意喚起を促すための、市区町村防災行政無線においてAITalkが活用されている。AITalkによって音声出力されたテキストが区町村の拡声スピーカーや各家庭の防災無線受信機を通じ、住民に避難などを呼び掛ける。
電話自動応答の分野では、図書館の利用者からくる休刊日の問い合わせ応答や、返却が遅れている利用者への督促電話に使用する音声を作成できる。その他、ユーザーに対するナビゲーションが必要な領域でも採用実績があり、道路交通情報センターが提供する道路交通情報案内サービスでは、オペレーターが直接電話口で対応できない夜間や休日、あるいは話し中などの場合において、AITalkで作成した音声が応答する。
また、新聞社やTV局での活用方法も印象的だ。大分合同新聞の会員向けのサービスでは、AITalkを使って毎日ニュース記事を10本ほど音声化して配信している。「地方では自動車通勤が多く、運転中にその日のニュースを知れる」(戸田氏)静岡新聞の「インコ式静岡新聞」というアプリは、ケータイの目覚まし機能として朝のニュースを読み上げるというサービスを提供するが、やはりテキストの音声化はAITalkが担う。
戸田氏によれば、機械がユーザーと双方向のコミュニケーションをとる手段として、音声を活用することが必至となってきた。
「チャットbotやロボットなどを通じて、ユーザーのパーソナルな情報を違和感なく聞き出せることが大きなポイントだと思う。その人がインドア派なのか、アウトドア派なのか。どこに住んでいるのか、出身はどこなのか。そういった情報を、ユーザーへの提案などに役立てれば、サービスの質も向上する」と話す戸田氏。具体的に、チャットbotの回答音声や、ヒト型ロボットの声をAITalkで作成するケースを紹介した。
アイ・ビジネスセンターでは、「情報最適化エンジンHIRO(ヒーロー)」にAITalk WebAPIを採用。福祉の分野でチャットbotの可能性を広げるべく開発を進めているという。
HIROとは、高齢者を対象にして、話相手、生活支援、見守りなどのサービスを行うチャットbotだ。普段は雑談の話相手を務めつつ、必要に応じて薬の案内をするといった生活補助を行う。例えば、「おはよう」というユーザーの問いかけに対し「今日はご機嫌いかがですか」という質問を返す。具合が悪いと伝えれば「ドラッグストアに行ってみますか」という提案をし、ドラッグストアまでの道案内も行うという構想だ。
同社では、「発話内容を、音声トーンやスピードを変えて感情的に表現できる」「ターゲットとなる高齢者にも、会話内容が伝わりやすい自然な発話が可能である」という2点を評価してAITalkを採用したという。
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