クラウドPBXの実装方法については、大きく分けると既存の電話機能だけをクラウド化するパターンと、全てのコミュニケーション環境を統合して新た働き方に移行するUC環境内でクラウドPBX機能を利用するパターンに分けることができる。
UC環境では、マイクロソフトが提供するクラウドサービスである「Microsoft Skype for Business」での実装方法の他に、シスコシステムズが提供する呼制御サーバであるCisco Unified Communications Managerをクラウド環境に設置したサービス、そしてクラウドサービス「Cisco Spark」を利用したものが具体的なものとして挙げられる。
既存のPBX機能をサービスとして利用する。具体的には、インターネット網を経由してSIerなどが構えるデータセンター内のPBXにアクセスし、従来通りの電話機能を利用するサービスもあれば、携帯電話事業者がFMCサービスとしてスマートフォン内線化とともに提供するものもある。また、独自のソフトウェアPBXをクラウドサービスとして提供するものまで、事業者によって提供スタイルが異なっている。
この形でのサービスであれば、これまで利用してきたPBXの機能が踏襲できるものが多く、現場の運用を変えることなくPBXを月額サービスとして利用できるようになる。単にPBXがオンプレミスからクラウドに移行しただけでなく、スマートフォンの内線化やWeb電話帳機能などもオプションとして提供してくれるものも多い。
働き方改革においては、長時間労働の是正や子育てや介護と仕事の両立など、さまざまなテーマで働き方のあるべき姿が議論されているが、新たな働き方に大きく役立つITソリューションとして注目されるのがUCだろう。UCのソリューションでいえば、Microsoft Skype for Businessがよく話題となるが、最近ではCisco Sparkや以前から提供されてきたCisco Unified Communications Managerを利用したUC環境が主なソリューションとして挙げられる。これらのソリューションにはPBX機能が実装されており、クラウド環境で利用する“クラウドPBX”が実現する。
Microsoft Skype for Business
マイクロソフトが提供するOffice 365で利用可能なサービスで、インスタントメッセンジャーにて相手のプレゼンス状態を把握、チャットをはじめ、音声/ビデオ通話などの機能が利用できる。外線電話の発着信もMicrosoft Skype for Businessのスマートフォンアプリから行うことが可能だ。
ただし、Microsoft Skype for Business対応のIP電話機やPC上からMicrosoft Skype for Businessを経由してPSTNへの発着信ができないため、Cloud Connector Edition(CCE)と呼ばれるアプライアンス機器をオフィス内に設置することで、Office365のクラウドPBX上でPSTNへの発着信制御が可能となる。
Cisco Unified Communications Manager
Cisco Unified Communications Manager(CUCM)と呼ばれる呼制御サーバをサービスとして利用できるもので、プレゼンスやチャット、音声、デスクトップ共有、Web会議などへのアクセスが可能なCisco Jabberを中心にUC環境が利用できるようになる。PSTNなどの外線発着信は社内にゲートウェイを設置することで可能になる。日本の企業にも採用実績の多いCUCMだけに、日本独自の環境に合わせたPBX機能が実装されており、従来行われてきたPBXでの運用が踏襲できるケースが多い。
Cisco Spark
シスコシステムズが提供するクラウドサービス「Cisco Spark」をベースにPBX機能が利用できるもので、チャットやWeb会議、音声会議、デスクトップ共有などの機能が手軽に利用できる。現状はCisco Sparkを経由してPSTNに抜けることができないものの、通信事業者の中にはCisco Sparkを利用して外線の発着信が可能な仕組みを提供する予定のところもある。その場合、企業内にPSTNとの接続を行うゲートウェイが不要となるため、運用管理の面でもメリットが大きなものになる。
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