音声ネットワークのIP化が進み、今では多くの企業がIP対応のIP-PBXを利用している状況にある。従来のメタルケーブルを利用した従来型PBXそのものは、コスト的な視点で見てもIPネットワークへ統合していく過程でIP-PBXに置き換わっていくはずだ。また、管理者の負担を軽減する意味でも、PBXそのものをサービスとして利用するクラウドPBXへの移行も検討が進むものと考えられる。
ただし、IP-PBX含めたハードウェア型のPBX市場を見てみると、各ベンダーのシェアはさほど落ちておらず、ソフトウェア系のIP-PBXへ急激に移行が進んでいるわけでもないようだ。部署の島机に置かれた固定電話を課員で共用するなど、日本独特の働き方に求められる機能は、ソフトウェア系のPBX機能では対応できない部分もいまだに残っている。
そのため、一部既存の環境を残したままクラウドPBXやUC環境に移行するというハイブリッド型の運用も大きな選択肢の1つになってくる。PBX自体は大きな市場の伸びは期待できないものの、堅調な需要はしばらく続くものと思われる。
固定電話のIP化は、バックボーンを提供している通信事業者側にも加速している。以前からNTTが検討を進めてきた固定電話網であるPSTN(Public Switched Telephone Network)をIP網に移行するNTTの計画に関して、2017年6月に総務省の情報通信審議会、電気通信事業政策部会、電話網移行円滑化委員会では、PSTNのIP化を進める計画が示された報告書案を了承した。
実は、固定電話網に必要な交換機そのものが既に生産停止となっており、保守部品の入手が2025年には困難になることが、IP化への大きな理由の1つ。1世紀にわたってコミュニケーション基盤として利用されてきたPSTNがIP網に代わっていくことになるのだ。
この計画では、2020年後半からIP接続へのシステム変更を進めていき、2025年ごろにはIP網へ移行が完了することになっている。もちろんメタルケーブルそのものをアクセス回線に利用することは可能だが、音声ネットワーク全体のIP化に向けて大きく加速するなかで、PBXの扱いについても大きな議論になってくることだろう。
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