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RPA成功へ導く6つのポイント

» 2017年09月05日 10時00分 公開
[相馬大輔RPA BANK]

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RPA BANK

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の研究者・開発者・ユーザーらが一堂に会した「RPA SUMMIT 2017」(2017年7月27日、東京・虎ノ門ヒルズで開催)。会場で構想が発表された「RPA成功化スクール」は、RPAの導入を検討している企業に向けた新たな学びの場だ。このプロジェクトが目指すものについて、発表後に開かれたプレスクールの模様と併せて紹介する。

導入・運用を支える人材育成の場に

発表ではまず、スクールの共同運営する者でありRPAの利活用促進サポートを強みとしてロボット派遣事業を展開する株式会社Sprout upの板場雅裕副社長が狙いと概要を説明した。それによると、RPAに対する企業の関心が急速に高まる一方、関連する知識を備えた人材が大幅に不足している現況を踏まえ、近日中に? RPAと生産性の関係などを学ぶ導入決裁者向けの講座 ? ロボット化すべき業務の抽出手法などを学ぶ推進責任者向けの講座 ? ロボットの作成とカスタマイズをマスターする実習、という3種類の講座を開講。導入を検討する各企業が、ロボットの作成・運用を自社主導で進められる環境の構築を目指すとしている。

続いて開かれたプレスクールにおいては、ロボットの豊富な実装経験を持つRPAエンジニアリング株式会社社長の大石純司氏、ホワイトカラー業務の生産性向上を支援している株式会社エイチ・ピィ・ピィ・ティ社長の坂本裕司氏が登壇。進行役の板場氏とともに、RPAの導入で重要な6つのポイントを次のように整理した。

成功に向けた「6つのポイント」

RPAの導入はゴールではなくスタート

「これまでRPAは、業務上抱えている課題の解決策を探す方が自ら見つけ出して導入してきたが、知名度が増した今年に入ってからは、社内で担当に任命された方が急きょ導入の検討を始めるケースが目立ち始めた。それに伴い、ロボット化する業務をうまく見つけられなかったり、見切り発車的にロボットを作り始めたりすることも増えている」(大石氏)「何かを実現したいがためにロボット化を検討しているはず。導入を進める側と、導入現場とのコミュニケーションが重要だ」(坂本氏)

先進的な導入企業が実績を挙げて注目されるようになった結果、RPAの導入それ自体が自己目的化していると両氏は指摘。「業務の改善に向けた1つの手段」という本来の趣旨を強調した。

RPAの導入で、働き方がどう変わるか示す

両氏の経験によると、RPAの導入にあたって社内準備を進める際には、ロボット化の合理性を訴えるだけでは十分ではない。特に、ロボット化の対象となる業務を現在担っているスタッフから前向きな理解を得られるかどうかが、プロジェクトの成否を分けるという。

「実際にロボットが動き出し、できることを直接見ていただければ一気に理解が進むものの、問題はその前段階。業務負担が大きい職場を改善するつもりでロボット化のターゲットを探っていても、『仕事を奪われるのでは』『余計な業務が増えるのでは』といった不安が現場に残っているうちは、実用的なロボットを作るのに十分な情報を得られない」(大石氏)「もともと人間には変化を嫌う傾向がある。しかもほとんどの企業においては、ホワイトカラー業務に対して期待する成果が明確になっていない。RPAによって、職場をどういう状態にしたいのか。現場の人にとってのメリットも織り込みながら情報共有していくことが大事だ」(坂本氏)

ロボットのマネジメントを社内で行う

実際の業務にRPAを定着させるためには、現場で生じる法改正や取引条件の見直しといった変化をリアルタイムに反映させていくことが欠かせない。ところがロボットの導入当初に仕様を決めたきり、その作成や運用を外部へ完全に委ねてしまうと、毎回修正を依頼しければならない負担からアップデートが滞っていき、結局途中で使われなくなるという。「貴重な時間を買うという観点でロボットの作成を外注すること自体は差し支えないが、その場合も業務におけるロボットの運用方法については社内でしっかり把握し、コントロールすべきだ」(大石氏)

ロボット化に取り組む全員が、対象業務の「粒度」に対する認識を合わせる

人間が行っている業務や作業のうち、どの部分をロボット化するかという検討を進める際には、前提として既存の作業工程が整理・分析されていなくてはならない。こうした分析で見落とされがちなのが、どこまで細かく見ていくかという「粒度」についての共通認識だ。粒度を細かくするほど分析の精度は増すが、それだけ手間もかかる。「例えば、受付業務に『電話連絡』が含まれるとして、それを『受話器を取る』『ダイヤルする』『受話器を置く』などと分解できるが、受話器を取る作業はさらに『手を伸ばす』『つかむ』『耳に当てる』といった行為にまで分けられる。導入作業の後になって余分な作業が生じる事態を避けるためにも、こうした分析レベルはあらかじめそろえておく必要がある」(坂本氏)

ロボット化の目標を、具体的に数値化しておく

業務の粒度に加えて「実現すべき定量的な目標」も、RPAの導入プロセスにおいてしばしば見過ごされているという。目標を立てるのは基本的なことのように思えるが、あまりにも大きいRPAの導入効果を前に、飛びついてしまうケースが多いと両氏は警告する。「例えば従来10人でやっていた仕事が、RPAの導入後4人でできるようになったとき、かかった費用と6人分の人件費で費用対効果を出しておけば十分評価されるかもしれない。ただ、それによって業務のスピードや品質がどうなったかも検証しなければ、成功とは言い切れない」(大石氏)「RPAのおかげで作業に要する人員が60%減ったとしても、かりに改善目標が80%だったならば、あくまでも『未達』。まず計画ありきというのがビジネスの基本で、“結果オーライ”は認められない」(坂本氏)

ロボット化で空いた時間をどの業務に充てるかという視点を持つ

国内でこれほどRPAが注目されるようになったのは、政府が主導する「働き方改革」の影響が大きい。RPAを採り入れることで、職場の働き方をどう変えていくか。導入後を見据えたビジョンの重要性は言うまでもない。「RPAの活用が進む導入先では『従来通り人間が行う作業に対してロボットのチェックを加え、ミスに気づけない新人も充てられるようにする』といった柔軟な発想をしている。ロボットの得手不得手を踏まえて何をさせるか、自分たち人間は本来どういうことをすべきか。絶えず考えていけば、すぐにプロセスを変えられない働き方においても質を向上できる」(大石氏)「RPAの活用は、働き方改革の『ゴール』ではなく『プロローグ』というのが私の考えだ。人間に期待されているのは、ロボットに業務を任せて浮いた時間を使い、判断業務や創造的な業務を強化していくこと。自社においてそれが何なのか明確化し、ロボット化の推進に併せて行動を変えていってほしい」(坂本氏)

今こそRPAに取り組むチャンス

発表を終えた板場氏は「参加を検討したいとの声がさっそく届き始め、手応えを感じている。実際にロボットを使いこなせる会社を増やしていく取り組みにしたい」とコメント。坂本氏は「RPAがもたらす効果を経営的視点から捉えられるエンジニアを育てたい」、大石氏は「現場の業務を改善したいマネージャークラスの参加を歓迎している。先進的な導入企業から直接助言を受けられる今こそRPAに取り組むチャンスだ」と話していた。

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