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発生する電車遅延、乗客からの問い合わせ殺到……東急電鉄の遅延トラブル対処にBoxが採用された理由(2/4 ページ)

» 2017年09月13日 10時00分 公開
[キーマンズネット]

トラブル対応力向上を目指して社内を説得

 以前は各部署が独自に集めた時系列情報を部署ごとに設置されるホワイトボードに書き込むなどして状況を把握していた。しかし、それでは余分な手間が多過ぎる。そこで同社が模索したのが、iPhoneやiPadなどのiOS端末を使って情報共有を行うことだった。現場と電気部とのやりとりをiOS端末上で行い、その場で状況を可視化、そして、その状況を他部門のスタッフも確認できるようにすることで、情報共有をスムーズにしようというものだった。

 「他の鉄道会社の中には、自前でシステム開発し、情報共有を行っているところもあります。しかし当社の場合は、そこまでの予算・人的リソースをつぎ込む余裕がありませんでした。そこで、既存のサービスとiOS端末を組み合わせる道を選択。その中から浮上してきたのが、クラウドストレージサービスの『Box』でした。当社のグループ企業でケーブルテレビ事業を行う『イッツ・コミュニケーションズ』が二次代理店を務めている縁で、2015年の9月ごろにBoxの存在を知りました」(矢澤氏)

 Boxは多彩なファイルをクラウドに保存できる他、スマートフォンで撮影した画像をすぐにオンライン上で保存・共有できる「Box Capture」、複数のメンバーでメモを共有できる「Box Notes」などの機能を持つ。モバイルアプリをiOS端末にインストールし、技術員や駅係員などに配布すれば、スピーディーな情報共有が可能になると分かった。そこで矢澤氏は約1カ月と短期間のうちに社内を説得、2015年11月には導入を決めたのだ。

 実は当時、東急電鉄のイントラネットでは、Microsoftの「Office 365」が稼働。情報システム部門は「OneDrive」を全社的に導入しようと検討していた時期だったという。そのため、矢澤氏の部門でもOneDriveの利用をまず検討した。しかし、全社的なプロジェクトとして進行している分、導入に至るまで時間がかかるのが難点だったという。

 「2015年、われわれは大きなトラブルをいくつか経験しました。7月にはゲリラ豪雨で渋谷駅の一部が水浸しに、8月には電気トラブルで東横線・目黒線・多摩川線がストップしたこともありました。そのたびにお客さまにご迷惑をおかけしたので、一刻も早く現場のオペレーションを改善したいという思いが強かったのです。iOS端末+Boxという改善策なら、すぐにでも導入してお客さまの役に立てる。そう考え、社内を説得しました」(矢澤氏)

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