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コネクテッドカープラットフォームの本命となるか、「AGL」とは?5分で分かる最新キーワード解説(3/4 ページ)

» 2017年10月18日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

開発コスト低減や短期開発のためには標準プラットフォームが必要

 車載用では、かつてITRONなどリアルタイムOSが主流を占めていたが、自動車メーカーがそれぞれ別々のソフトウェア/ハードウェア構成をとる必要があり、サプライヤー側は各社専用にソフトウェアを開発せざるを得なかった。今後さらなる多機能化が進む中で、自動車業界のエコシステムを考えれば、ソフトウェアの標準プラットフォームの活用が求められるのは当然だ。オープンソースであり組み込み系システムの主流であるLinuxが、車載用途においても活用が図られるのは至極まっとうな成り行きだろう。

 AGLでは、自動車メーカー、ソフトウェアベンダー、チップベンダーなどの関係各社が協力して共通プラットフォームを構築し、基本機能や新機能をプラットフォーム内に取りこむことで、各社個別の開発量やコストを低減し、短期間で最新機能を活用できる製品をリリースできるようにすることを狙っている。

AGLが目指す自動車業界のエコシステム 図4 AGLが目指す自動車業界のエコシステム(出典:NTTデータMSE)

車載用ソフトウェアプラットフォームの変遷・統合

 インテルはLinuxベースの車載用OSとプラットフォーム化推進にかねてより意欲的で、Moblin IVIやMeeGo、MeeGo IVI(IVIはIn-Vehicle Infotainmentの略)などの開発を主導したが、十分な成果を上げないまま、Linuxベースの携帯電話OSを開発していたLimo Foundationと合流。サムスンとともにTizen Associationを立ち上げて、車載用LinuxベースプラットフォームであるTizen IVIを開発してきた。しかし2014年頃からTizenの活動は足踏みを始め、2015年2月のTIZEN IVI 3.0リリース後、実質的な活動を停止している。

 AGLに関係の深いイベントとして、Linux Foundationは2011年 11月横浜にて第1回目となる「Automotive Linux Summit」を開催。このイベントでトヨタ自動車は講演を行った。2012年9月にAGLが発足し、その時点でトヨタ自動車がAGLに参加している。その後2013年頃までAGLがTizen IVIにパッチなどの一部コードを提供して貢献する立場だったが、2014年には資金を募り、自前のプラットフォーム開発に乗り出すようになった。2015年には独自Linuxディストリビューションに向けた要件仕様書バージョン1.0が発表された。

 AGLの特徴の1つは「コードファースト」であること。ドキュメントにより仕様が定義されることよりも、コードのインテグレーションが優先される。Tizenの成果や、ヨーロッパ中心にコネクテッドカーの標準プラットフォーム開発を進めるGENIVI(「関連するキーワード」の項参照)の成果もインテグレートして、UCB(Unified Code Base)と呼ばれる統一コードを開発、公開することを目指している。

 UCBの最初のリリース、バージョン1.0は「Agile Albacore(AA)」と名付けられ、2016年1月に公開された。同年7月にはバージョン2.0の「Brilliant Blowfish(BB)」が、2017年1月にはバージョン3.0「Charming Chinook(CC)」がリリースされている。現在はバージョン4.0「DD」が作成済みで、バージョン5.0の「EE」は2017年末には完成、2018年初めにリリース予定だ。

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