急成長を続けるハイパーコンバージドシステム。市場から求められる理由とともに主要ベンダーの動向について徹底解説する。
宝出幸久(Yukihisa Hode):IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャ マーケットアナリスト
エンタープライズインフラストラクチャ市場調査グループにおいて、ハイパーコンバージドインフラストラクチャやコンバージドシステムの市場動向分析や市場予測などを担当。この他、Software-Defined Storage、ファイル/オブジェクトストレージなどストレージ市場における新規分野の調査も担当している。IDC Japan では、エンタープライズストレージシステムの市場動向分析と市場予測のほか、産業分野別の分析と市場予測などを担当、ストレージ市場における新規分野の調査を担当し、国内市場調査プログラムの拡充に貢献した。
国内ハイパーコンバージド(Hyperconverged)システム市場が活性化している。国内サーバ市場やストレージ市場が横ばいから縮小気味となる中で、今後、同市場の年間平均成長率は30%超で推移すると予測されている。今回は、普及が加速するハイパーコンバージドシステムの現状と成長の理由、そして各ベンダーの奏功を整理してみよう。
IDC Japanでは、2016年〜2021年の国内ハイパーコンバージドシステム市場の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)を31.3%と見込んでいる。2017年の出荷金額は、2016年の77億円を大きく上回り138億円となり、前年比78.4%のプラス成長になると予測する。
一方、2016年の国内サーバ市場は、全ての製品分野で出荷額と出荷台数ともにマイナス成長となった。また国内外付型エンタープライズストレージシステム市場も2016年の支出額は前年比8.9%減であった。2016年〜2021年の年間平均成長率は0.6%と見込んでおり、それほど高い成長とはならない予測である。これらの数字と比較して、国内ハイパーコンバージドシステム市場の成長率は非常に高い水準といえる。
IDC Japanではハイパーコンバージドシステムをコンバージドシステム市場の1つのカテゴリーとしており、サーバやストレージとは別に調査、分析をしている。コンバージドシステム市場は、ハイパーコンバージドシステムを含め、次の3つのサブカテゴリーで構成されている。
インテグレーテッドインフラストラクチャ
サーバ、エンタープライズストレージシステム、ネットワーク機器およびシステムインフラソフトウェアを構成要素としており、これらの組み合せをベンダーが統合して提供するシステムのことをいう。用途を限定せずに幅広いワークロードをサポートできるようにパッケージングした製品である。
インテグレーテッドプラットフォーム
インテグレーテッドインフラストラクチャの構成要素に加えて、アプリケーション開発用ソフトウェア、データベース、テストツールや統合ツールなどを追加し、さらにこうしたソフトウェアにシステムを最適化することで性能や安定性を高め、特定用途(ワークロード)向けに使いやすくした製品である。
ハイパーコンバージドシステム
コンピュートおよびストレージ機能を高度に仮想化して、単一のサーバベースのハードウェア上で提供する製品である。複数のサーバノードでクラスタを形成することで、コンピュートやストレージのリソースプールを提供している。
インテグレーテッドインフラストラクチャやインテグレーテッドプラットフォームはいわゆる「垂直統合」型の製品であり、ハードウェアの観点では、サーバ、ネットワーク、ストレージを統合して提供する。全てを通して製品ベンダーが検証済みであるところが特徴だ。
これはシステムの安定性に寄与するポイントであるとともに、サポートが複数ベンダーに分散せず、ワンストップサービスとして利用可能であるところもメリットになる。もちろん、各リソースを別々に購入してシステムインフラを構築する手間と時間、コストが省ける(導入容易性と導入工程の短縮)ことも重要なメリットである。
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