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» 2017年12月11日 10時00分 公開

オリックス、RPAで処理件数8倍、処理単価6分の1、動き出すグループ展開(前編)

[RPA BANK]

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リースやレンタル、不動産開発、保険業などのサービスを多角展開しているオリックスグループ。時代に応じた柔軟な事業戦略によって、直近3期の純利益は過去最高を更新し続けている。グループの各種業務を受託する沖縄の拠点では昨年から、ソフトウエアのロボットで定型業務を効率化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を業務改善の一環として導入。その成果を踏まえ、このほどグループ各社でもRPAを本格的に運用できる体制が整った。急速にRPAの活用を拡大する背景には何があるのか。取り組みの経緯と展望を2回に分けて紹介する。

RPAの運用統括を担う「業務改革室」に見る未来の組織体制

オリックスグループは2016年4月、800人規模のスタッフが営業事務や顧客対応などに従事しているオリックス・ビジネスセンター沖縄株式会社(OBCO、那覇市)においてRPAの試験導入を開始。そこで得られたノウハウをもとに統一的な開発・運用ガイドラインを作成したほか、ハード面の基盤も強化し、17年10月からはグループの7社が各社の業務で順次、RPAの導入に向けた検証と本番運用を開始している。

新たな体制下で、グループ全体としてのRPAの運用を統括するのはオリックス株式会社の「業務改革室」。ソフトウエアやサーバー環境といったプラットフォームをレンタルする制度を設け、グループ各社が、ごく小さい規模からRPAを導入できるようにした。対象とする業務の選定は、グループ各社の判断に委ねる方針で、システム構築の場合に実施するような厳格な投資効果の評価も行わない。ロボットを稼働させるサーバーの保守は、オリックス・システム株式会社(東京都中央区)が担当する。

RPAの全社展開をリードするオリックスの業務改革室には、生産性向上の施策を進めるチームと、ITガバナンスなどの内部統制を担うチームが併存している。“アクセル”と“ブレーキ”を使い分け、どちらにも偏らないというスタンスはRPAの推進においても同様だ。今回の体制構築に携わった業務改革室業務改革第三チームの鈴切俊毅主任は「RPAを広く浸透させるため、現場が習熟するための負担は極力減らしたい一方、運用方法はグループ全体で統一を図る必要がありました。そこで、オリックスが運用するセキュリティやガバナンスに関する規定をとりまとめた手順書に、RPAの運用方法についても記載しました。日々参照してもらえるよう手順書に落とし込むことで、手順書に沿って運用できるような仕組みにしています」と語る。

RPAのプラットフォームをレンタルしてグループ各社が運用する形態が必須ではなく、改善のターゲットを含めた業務をOBCOがまるごと受託した上で自動化を図る、あるいはOBCOが各社のRPAを遠隔操作するといった方法も推奨。「グループのシナジーを最大化したい」(鈴切氏)考えだ。

現場を熟知するスタッフがロボットの管理者に

オリックスグループ各社が具体的なRPA化の対象業務をどのように決め、いかなるロボットを作るかという実践面においては、先行するOBCOの事例が1つのモデルに位置づけられている。

OBCOでは現在「業務編成部」「IT企画チーム」の2部署がRPAに携わっている。業務編成部は、受託した業務の作業内容を精査し、処理方法を見直した上で最適な働き手を割り当てるのが役割で、RPAはOBCO社内の従業員や社外のクラウドワーカー、ITシステム構築などと並ぶ選択肢に位置づけられる。一方、IT企画チームは、作業にRPAが割り当てられた後の実行、運用、管理を担当。現場のスタッフから選抜された約10人が専任としてロボットの実装と保守に携わっている。

沖縄の拠点「OBCO」では、RPAによる作業の実行や運用・管理を「IT企画チーム」が担う

「OBCOでロボットの担当者を決める際には、現場管理者からの推薦をもとに適性も考慮した上でお願いしました。業務のロボット化にとても意欲的に取り組んでいる現場です」(鈴切氏)。プログラミング知識を必要とせず、現場主導による効率向上を図れるRPAのメリットを最大限に生かし、OBCOはこれまでに累計210人相当分の作業を自動化することに成功している。

稼働させているロボット約77台のスケジューリングもIT企画チームの担当だ。業務時間外を含む24時間を10分刻みにして作業を配分しており、「納期が近い」「後工程が控える」など特に確実性が求められる作業は、万一トラブルが生じても人手でカバーしうる日中に配置し、それ以外を夜間作業とする振り分けが確立している。

ちなみに、OBCOはRPAの導入前からオリックスグループのさまざまなシステムにアクセスして受託作業を行ってきたが、こうした基幹システムとの接続を伴う工程のロボット化については、グループのシステム運用に通じたオリックス・システムに委ねている。

グループ向けRPA説明会に120人が殺到。高まる期待への背景

全社的な体制構築を控えた今年8月、東京のオリックス本社で開かれたグループ会社向けのRPAセミナーには各部門から120人の担当者が詰めかけ、会場は超満員となった。今回7社でスタートした具体的な取り組みにおいても、今後さらなるフォロワーが控えている。

グループ内に共通する高い関心は言うまでもなく、沖縄でのOBCOの成功によるところが大きい。「作業のヒューマンエラーが解消」「ダブルチェックの工程が不要に」「1時間あたりの処理件数が8倍以上に増え、処理単価も6分の1近くまで低減」など、定量的な実績が数多く公表され、さらにそうした成果がメディアを通じても広く紹介されたことによって一定の安心感が生まれたためだ。

RPAの導入に併せて業務手順を見直し、処理時間の大幅な短縮を実現している

RPA普及の立役者であるOBCOでの運用を参考としながらも、オリックスグループ各社の取り組みにおいては個別事情に応じた違いもみられる。例えば、あるグループ会社では、ロボットに関する一定のノウハウをまず蓄積するため、あえて事業部門ではなく情報システム部門の担当者が集中的に実装経験を積むようにしているという。

ロボットに熱い視線を送るグループ各社の心情を、鈴切氏は「とにかく面倒な業務から早くラクになりたい」と代弁。全国的に人手不足が深刻化する中、現場の業務負担軽減という切実なニーズに応えるため、ROIをいったん横に置いてRPAを推進していると説明する。

もっともそれは同時に、中長期的な観点に立った生産性向上の一環でもあるという。「ラクになりたくてRPAを実装しようとすると、従来から業務改善に有効とされながらも手間がかかるため敬遠されてきた『業務手順の可視化・標準化』に取り組まざるを得なくなります。RPAは単体でも高い効果が見込めますが、現場における業務改善の機運を高めるという副次的なメリットも大きい。そこに期待しているのです」(鈴切氏)

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