GoogleやFacebook、Microsoftの技術者が知恵を絞った最新技術満載のサーバが簡単に手に入る時代に。「ODMダイレクト」のトレンドと技術動向を紹介する。
GoogleやMicrosoft、Facebookのように、Webを中心としたITを強みとする企業は、いずれも自社サービスのために大規模なデータセンターを所有している。一般企業の情報システム部門のそれと比較して、データセンターの運営そのものが事業の中核を担っており、大規模であることから、原価低減や運用業務の効率化などの工夫は、あたかも工業製品の大量生産工場を想起させる知恵が数多く取り込まれている。
よく語られるのはクラウド時代のデータセンターでは、システム運用を「ペット飼育から畜産業へ」あるいは「家庭内手工業から工場制機械工業へ」と発想を切り替える必要があるという話だ。
サーバごとにコネクターの位置やスイッチの形状が異なっていたり、型番が異なっていたりすればメンテナンスのたびに資料を引っ張り出して確認しなければならない。あるいは大量のサーバを交換する際にサーバごとに停止や交換、機動の手順が違っていたら非効率このうえない。データセンターでこうした個別対応の積み重ねが行われていたとしたら、万一、どこかで障害が発生したときに、問題の切り分けはおろか、復旧すら難しくなるリスクがある。
こうした問題は冒頭に挙げたIT業界の“巨人”だけの話ではなく、一般の企業であってもよく聞く話だ。用件や部署ごとに調達時期が異なっていれば、同じデータセンターの中でも仕様やメーカーがバラバラになっていることは少なくないだろう。問題は、ユーザー企業のハードウェア調達がメーカー側の都合に影響されることが原因で起こる。
いま、冒頭に挙げたようなIT業界の巨人たちを中心に、こうした問題に風穴を開けるプロジェクトが進んでいる。11月30日、このプロジェクトに知見のある伊藤忠テクノソリューションズとインテルが「Open Platform Innovation Day」と題したイベントを開催、技術トレンドや一般企業が受ける恩恵がどのようなものかを紹介した。本稿では、その一部を紹介する。
2011年、Facebookは自社で設計したデータセンターの仕様を、丸ごとオープンソースのドキュメントとして公開した。
なぜ自前で設計したかというと、Facebookほどの規模であれば、電力消費量やコスト削減のためには、もはや建物も分電盤もサーバも、ソフトウェアも全てをまとめて設計して最適化を考えた方が安くて効率が良くできるためだ。そうして、同社と同じ課題を抱えるデータセンターの運営主体がハードを決めていける世界を目指して、同社の設計情報を丸ごと公開したのだ。
このプロジェクトに賛同する事業主が多くなればそれだけ規模の経済が働き調達コストは下がる。また、メーカーへのリクエストもしやすくなる。標準化した仕様があれば、供給側でも部品調達の効率が良くなるため、経済的なメリットは大きい。
Facebookは、このデータセンター設計図の公開と同時に、オープンソースのハードウェア開発プロジェクト「Open Compute Project(OCP)」を立ち上げ、データセンター事業者らの参加を募ったのだった。
こうしたFacebookの取り組みは、従来ハードウェア機器メーカーが担ってきた部品の調達や設計、品質の検証などをユーザー企業が行うということで、大いに注目を集めた。この取り組みは需要側と供給側とで主導権が切り替わることに加え、規模があれば思い切った効率化を検討できることを多くのデータセンター事業者に伝えることになった。
このような経緯から、OCPは本稿執筆時点で約200社の企業が参加する巨大プロジェクトに成長、次々に新しい技術を搭載したハードウェア仕様が公開されている。例えば、Facebookでは自社のディープラーニング専用サーバの仕様も公開しており、誰もが調達できるようになっている。
今回取材したイベントでは、このOCPをとりまとめる「OCP Foundation」のSteve Helvie氏が登壇、プロジェクトの最新動向を発表した。
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