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FacebookやGoogleが参加するOCPとは何か、日本企業にメリットは?(4/4 ページ)

» 2017年12月12日 10時00分 公開
[原田美穂キーマンズネット]
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日本企業がODM製品を採用するメリットはあるのか

 ここまではOCPの成り立ちと概要を紹介した。ここまで読んでいただいても、恐らくは「IT業界の巨人たちだからできること、ウチには関係ない」と思われるかもしれない。しかし、一般の中堅・中小企業であっても、ITインフラの世界的な大波に乗る方法がある。

 FoxconnやQuantaなど、OCP準拠のハードウェア供給企業の多くは台湾に集まっている。地理的にも言語的にも電子機器の製造拠点が集まる中国と取引しやすく、技術面では日本との地理的距離が近いことも、この地にハードウェアメーカーが集まる理由だ。

 ここで、OCPのように、設計図面をおこした上でハードウェアメーカーに製造を委託することをODM(Original Design Manufacturing)と呼ぶ。いま、このODM市場が急成長している。

 伊藤忠テクノソリューションズ ITインフラビジネス推進第2部部長代行 小泉利治氏は、IDCジャパンによる日本国内市場の調査を基に、「出荷台数ベースでx86サーバに変化はないが、ODMは増加傾向。米国ではさらにこの傾向が顕著になっている」と指摘する。

小泉氏の発表より、数値はIDCジャパンによる日本のサーバ市場調査を基にしている 小泉氏の発表より、数値はIDCジャパンによる日本のサーバ市場調査を基にしている

 メーカー任せでなく調達するODMでは「パーツ管理コストとODM管理コストはやや増える可能性がある。ただし、メーカー管理コスト部分を安くできるため、全体ではコストを削減できる。OCP準拠のハードウェアでは価格競争が生まれるため、より安く調達できる可能性は高い」(小泉氏)

ODMの方がサポートの距離が近い場合も

 設計に責任を持てるならばコストを抑えた調達が可能なODMは確かに魅力だが、日本企業からは取引経験のないメーカーであることなどから、サポートレベルや品質への心配が多く寄せられるという。

 「実はODMの方がエンジニアまでの距離が近くて話がスムーズだった経験もあるくらい。対応OS情報などの開示はしっかりしているし、万一未対応の場合も依頼をすれば検証してくれることが多く、ちょっと話をしたらすぐに対応してくれるケースも少なくない」(小泉氏)

 保守レベルも遜色はなく、日本企業と組んでサポートしているメーカーであれば、オンサイトサービスを提供するメーカーもあるということなので、あまり心配には及ばないようだ。

 「確かに、出荷前の品質管理にはまだ改善の余地があるメーカーも多いが、ほとんどの問題は初期不良。検収時の品質チェックをしっかりしておけば、大きな問題が起こることはない」(小泉氏)

 とはいえ、設計や試作のプロセスにはコストがかかる。さらにラインを動かすにはそれなりのボリュームが必要であるから「一般の企業では、設計開発済みODM製品を採用する方法を検討すると良い」という。設計済み汎用(はんよう)製品であれば、小ロットでも検討できるからだ。

日本向けに専用ラックまで開発、高圧直流電源にも対応するCTCのOCP

小泉氏はFacebookが設計したサーバを手に取り「見た目は素っ気ないかもしれません。でも、データセンターのサーバが華美である必要はないですよね」とコメント 小泉氏はFacebookが設計したサーバを手に取り「見た目は素っ気ないかもしれません。でも、データセンターのサーバが華美である必要はないですよね」とコメント

 そして、もう1つの選択肢となるのがOCPだ。OCPのポイントはユーザー企業が参加していること。用件ごとの構成ノウハウも獲得できている。OCPの良いところはFacebookらが利用する「枯れた」構成を利用できること、彼らの調達ボリュームに乗って安く調達できることだ。さらに、効率を追究した設計であることから、電力消費量も低くできる。

 「CTCによる消費電力の比較では、10%程度の削減が認められています。コスト削減と効率化、標準化を実現するには、あと1歩を踏み出す勇気がいるだけです」(小泉氏)

 最新の技術を盛り込んだデータセンターを低価格で調達できるとはいえ、調達に関わるリスクや管理プロセスの変更などを考えると、未経験の企業には簡単には手を出しにくい。

 その点で、CTCは日本企業では初めてOCPの「ソリューションプロバイダー」認定を受けているため、OCPメンバー間で最新の技術情報などがいち早く入手できることも強みだ。実績という意味では、Yahoo!JAPANを運営するヤフーが米国に設立したYJ Americaのデータセンターの構築を担当したことでも知られる。

 これだけでなく、同社はかなり踏み込んだ製品開発も行っている。

 実は、OCP準拠のラックは21インチ、電源は三相4線(200V/480V)と、そのままでは日本のデータセンターでは扱いにくい仕様だ。そこでCTCでは、村田製作所やNTTデータ先端技術と共同で独自にOCP専用ラックシステムを開発、電源もNTTデータ先端技術が持つ技術を生かした集中電源方式を採用。三相4線の他、日本向けに三相3線、単層も用意、さらに電力効率のよいHVDC(高電圧直流給電)も選択できるようにしている。これに加えてOCP認定製品の調達、ラッキングや受け入れ時の初期不良検査など、一般企業ではなかなか受けきれない作業を受け持つメニューも用意する。

 冒頭で示したように、IT業界の巨人は、データセンターのハードウェアそのものは競争力を生むものでないと考えている。メーカーに振り回されるのではなく、ユーザーが調達の主導権を取り、導入コスト、運用コストを最小化するために、皆で知恵を出し合おうというフェーズだ。一般企業からすると、先進的なデータセンターを運営する企業らがこぞって知恵を絞った高効率ハードウェアやそれに付随する周辺テクノロジーの恩恵を享受できる時代になったといえるだろう。

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