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行動追跡、可視化、画像認識技術とマーケティングの関係IT導入完全ガイド(3/4 ページ)

» 2018年01月15日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

ディープラーニング技術を用いた画像認識モデル構築

 このような行動分析や属性分析の精度を上げるために利用されているのがディープラーニングだ。その技術を応用して、小売業界のニーズにマッチするマーケティング分析サービスが登場している。

 ディープラーニングを主事業とするアベジャが提供を始めた「ABEJA Platform for Retail」がそれで、店舗内に設置した複数のカメラの映像から、来店人数を正確にカウントし、来店客の年齢と性別を推定して可視化するサービスとなっている。

 クラウドサービスとしての提供なので、インターネットに接続する環境が既にあれば、ネットワークカメラを導入するだけで簡単にマーケティング分析の材料が入手できる。カメラ1台当たり月額1万3000円(税別)からと、比較的低価格で画像認識技術がすぐに導入できるのが大きな特徴だ。

小売業界向けのサービス(SaaS)のAI分析 図5 小売業界向けのサービス(SaaS)のAI分析によるダッシュボード画面の例(出典:アベジャ)
スマートフォンによる店舗状況のチェック画面の例 図6 スマートフォンによる店舗状況のチェック画面の例(出典:アベジャ)

 来店状況とPOSデータとの突き合わせにより、来店客当たりの買い上げ率(コンバージョン)の可視化や、混雑状況に応じた店舗スタッフのシフト最適化、キャンペーンなどの効果測定に役立てられるばかりでなく、画像認識による来店客属性の現状や変化の傾向が統計的に、客観的数値として把握可能になる。

 ただしアベジャは小売業界に特化したサービス業者ではない。同社は「データを収集、管理し、ディープラーニングによって最適なモデルを作り、実行、運用し、その結果を学習にフィードバックする一連の仕組み」を一貫して提供しようとしている。

 現在、図7に見るようなAIプラットフォームの「ABEJA Platform」を利用し、ユーザーのニーズに沿ってオーダーメイドでソリューションを開発、提供するサービスと、パートナー企業にABEJA Platformを開放(オープン化)し、新たなサービス開発のために利用してもらうサービス(現在はβ版)の大きく2つの軸で事業を展開している。それに加え、前者のサービスを小売店向けに切り出した形でSaaSとして提供しているのが、ABEJA Platform for Retailとなる。

ABEJA Platformのイメージ 図7 ABEJA Platformのイメージ(出典:アベジャ)

 画像認識をビジネスに応用する場合には、絶え間なく学習を進め精度を上げる必要があり、また画像の分析目的が変化すれば、対応する分析エンジン(モデル)を新しく作って追加する必要も出てくる。AI応用システムには必須なこうした運用面をサポートする専業ベンダーは今のところ数少ない。

 アベジャでは学習を効率化するためのアノテーションツール(人間が機械に正解を教えるためのツール)や、学習用のデータセット作成のオフショア化などにより、コストを抑制して大量の学習が可能な環境を整えている。モデルの精度向上や新しいモデルの作成などが、同一のプラットフォーム上で比較的低コストに可能になると期待できそうだ。

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