AIをビジネスに活用するのために、何に留意すれば良いだろうか。「Microsoft AI Platform」を知り尽くした人材による、ビジネスのためのAIと、選び方の指針を紹介する。
AI(人工知能)技術を未来の物語として語るのではなく、現在のビジネスにどう応用できるのかを語るカンファレンス「THE AI 2018」が1月31日、東京・六本木アカデミーヒルズで開催された。本稿では「Microsoft AI Platform」を提供する日本マイクロソフト プリンシパルソフトウェアデベロップメントエンジニアの畠山大有氏の講演から、AIをビジネスに活用するのためのポイントを考えてみる。
ビジネスの現場でいま何が起きているのか。畠山氏は、ビジネスの重心がハードウェアからソフトウェアやインターネットを活用したデジタルプロダクト、サービスへシフトしていると分析した。「いいモノを作れば売れる」と思われてきた時代から、「モノを使って顧客に何を提供するのか」を考える時代へと変化しており、「ハードウェアとソフトウェアの間にあるデータ(コンテンツ)がより重要になっている。例えば、高スペックなテレビが作られ、高性能なソフトウェアを載せたとしても、見たいコンテンツがなければ使われない。ハードウェア、ソフトウェア、そしてデータの3つがそろってようやく売れるものができる」。
モノ売りからサービス提供へとビジネスがシフトしているのは、誰しもが体感していることだろう。顧客が求めるものを把握し、サービスを迅速に提供するのが「顧客中心主義」であるとすれば、顧客の声や行動を機敏に捉えなければならない。それには設計・製造、サプライチェーン、販売、マーケティングなどあらゆる種類のデータ活用が不可避である。そのようなデータ活用のために「現実には想像するよりはるかに巨大なデータが作られている」と指摘した。
AIは、そうしたビッグデータを敏速に活用するためのツールとしての側面がある。そもそもAI研究は1950年代に始まり、その中核になる「機械学習」技術は2012年に画期的な成果を挙げたディープラーニングによって急発展中だ。Microsoftもディープラーニング技術を磨き、2015年には画像認識で、2016年には会話の音声認識で、人間と同程度の認識精度を実現するに至っている。その技術を包含したインフラ、ツール群、サービスの総称が「Microsoft AI Platform」だ。
同プラットフォームには、最新GPUをはじめディープラーニングにも効果的なハードウェアをベースに、各種データベース、ビッグデータ分析用ミドルウェアなどを搭載する。加えて「TensorFlow」や「Caffe」といったサードパティ製AIフレームワークやコーディング、管理用ツールも提供されている。
このプラットフォームで提供するのは次の3つのサービスだ。1つはチャットbot開発フレームワークである「Bot Framework」、もう1つはMicrosoft自身がデータを集めて機械学習を行いそのまま使えるAIエンジンに仕上げた「Cognitive Services」、さらに独自のカスタムAIエンジンを作れる「Azure Machine Learning」である。
中でも注目されるのは「Cognitive Services」だ。このサービスは「Vision」「Language」「Speech」「Search」「Knowledge」の5つの領域に特化したAIエンジンが用意されている。このエンジンは外部からREST APIで呼び出して利用できるので、OSやデバイスを問わずにAIが使えることになる。
例えば「Search」と「Knowledge」のAIエンジンは同社の検索エンジンである「Bing」で集めた膨大なデータを学習したものである。利用者側にデータがなくともMicrosoftが収集した大量データによる成果を業務に利用できるというわけだ。活用の一例として、畠山氏は「画像を入力すれば類似した画像を表示してくれる」イメージサーチ機能を挙げた。これは類似画像を探し出すだけでなく、画像にひも付く属性情報(メタデータ)も合わせて抽出する。例えばある犬の画像を検索すると、それに似た犬を探し出してくれるだけでなく、その犬種の情報までが分かる。このように機能を組み合わせれば、さまざまな業務用途で活用できよう(求めるものによっては、自社独自のデータを用いて学習させた方が良い場合もあり、その場合はAzure Machine Learningが推奨される)。
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