では、匿名化したデータは具体的にどのような場面で活用できるのだろうか? イメージをつかむために、以降では匿名化データの具体的な活用例を見ていこう。
最も身近な例が、企業内やグループ内でデータを融通し合うことで、製品やサービスの質を向上させたり、営業やマーケティングの施策を強化したりするという使い道だ。
例えば、あるサービスに登録したユーザーの情報は、そのサービスや事業の範囲内でのみ利用が許されており、それ以外の目的で利用することはできない。しかしデータを正しく匿名化すれば個人情報として扱わなくても済むため、他の目的でも利用できるようになる。例えば、とあるサービスの登録ユーザーの情報を匿名化した上でマーケティング部門に引き渡し、各種ユーザー属性や購買履歴・行動履歴の間の相関を分析することで顧客の潜在ニーズを割り出し、製品・サービスの開発に生かすことができる。
また先に述べたように、行政機関が提供する匿名化されたオープンデータと、自社が保有するデータとを突き合わせることで、やはり新たな知見が得られる可能性がある。2017年5月の改正個人情報保護法の施行によって、いよいよこのようなビッグデータ利活用が現実味を帯びてきた。現在多くの企業では自社内に存在するデータの価値と活用をあらためて検討し始めている。
中長期的には、企業内やグループ内だけにとどまらず、企業の垣根を越えてデータを突き合わせて分析することで、これまでにない新たな価値をビッグデータから引き出せるようになるだろう。既に一部ではそうした動きが始まっているが、改正個人情報保護法にはもともと、こうした取り組みを国全体としてより一層加速させる狙いがある。ただし当然、個人が特定できないようデータを匿名化しておくことが大前提となる。
また将来的には、匿名化したビッグデータそのものが高付加価値の商品となり得るかもしれない。行政機関が提供するオープンデータと同様に、通信キャリアや公共交通機関、大手小売企業などが顧客の購買履歴や移動履歴のデータを匿名化した上で公開すれば、これを使ってさまざまなビジネスアイデアが生まれる可能性がある。一部ではこうした動きも先行して始まっているが、この場合もやはりデータの匿名化が必須となる。
このように、今後社会全体でビッグデータ利活用が進むに伴い、データ匿名化のソリューションも徐々に普及が進むと見られている。そこで次回は、データ匿名化ソリューションの導入を検討するにあたり留意すべきポイントや、主要な製品の特徴などを紹介する。
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