働き方改革推進を追い風にさまざまなベンダーが参入するビジネスチャットツールかいわい。老舗ベンダーはOS化に商機を見いだすという。
2011年に誕生した「ChatWork」は、いまや世界223地域で16万3000社以上が導入するビジネスチャットツールだ。開発元であるChatWorkは2018年2月8日、東京オフィスを会場に今後の成長戦略を発表した。
グループチャット、タスク管理、ファイル共有、ビデオ通話/音声通話の4機能を備える「ChatWork」は競合がほとんど存在しなかった2011年にリリースされ、グローバルおよび国内での導入実績を増やしてきた。中小企業での採用が多かったものの、最近では大和証券をはじめとする非IT系の大企業での採用が増えているという。
開発初期は競合がなかったものの、クラウドサービスが普及したことと働き方改革推進の波によって、事業は拡大、一方で、競合も増えてきた。
戦略発表会では同社が何を強みにしていくか、どのような分野に注力していくのかが示された。ポイントはエンタープライズ市場向けの機能強化と、プラットフォーム化、グローバル展開へ注力だ。
ChatWorkの強みは金融系企業を含む企業導入実績の豊富さとタスク管理を応用したワークフロー機能やファイル共有、社内外を巻き込んだチャットグループ作成など、企業利用に適した機能の提供にある。
ビジネスチャットツールでは、同社製品に限らず、グループチャット機能や音声/ビデオ通話・会議機能は基本機能であり、どの製品でもその機能に大差はないだろう。同社ChatWorkの特長はチャット機能と融合した「タスク管理」と「ファイル共有」機能にある。
タスク管理機能の操作は非常にシンプルだ。画面右下のタスク入力ボックスで「〇〇さん、□月□日までに議事録を作成してください」というように、文章の形で担当者、期限、タスク内容を設定・入力するだけだ。内容はチャットのタイムラインに表示されるとともに、指名した担当者の画面の右側に他のタスクとともに一覧表示される。一覧は自分のタスクリストとグループ内全体のタスクリストを切り替えて表示できるので、他のメンバーがタスクの進捗を確かめたり、期限超過について注意を促したりできる。
自分のタスクを済ましたら「完了」ボタンをクリックすると、タスク終了の旨が中央のタイムラインでグループ内に通知される。この機能を利用し、ユーザーの中には社内稟議をタスク登録して、チャット上で承認を得るというワークフローツールとして使うこともできる。
ファイル共有機能もWebブラウザや専用アプリで表示したチャット画面にドラッグ&ドロップでアップロードでき、タイムライン上に表示されるリンクのクリックでダウンロードできる。5GBまでのファイルがアップロード可能なので、外部のファイル共有サービスを利用する必要がなくなる。
チャットグループの登録は無償版では14個までだが、有償版では無制限。目的ごとに1000個以上のグループを運用するパワーユーザーもいるという。最近ではクラウドサービスも普及してきたこともあり、働き方改革の取り組みと組み合わせた採用が増えており、現在、利用企業は16万社を突破している。
多くのチャットツールが個人向けであったり、ビジネス向けでも社内専用であったりする中で、ChatWorkはビジネス用途に使えて社内外を結べるツールであるところに特色がある。導入ケースは中小企業から大企業、教育、医療機関などさまざまな規模・業態の組織に広がっており、直近では大和証券の法人部門が採用を表明している。
今後の同社の成長戦略の柱は3つだ。1つはエンタープライズ市場への営業強化。これまでのビジネスプランに加え、エンタープライズプランを新たに設け、法人営業にさらに厚みを持たせた。2つ目はチャットを起点としたプラットフォーム構想だ。「チャットはビジネスのOS」だと山本CEOは言う。「チャットからファイル共有、チャットからタスク、チャットから予定調整という流れは業務と親和性が高い。ファイル共有からチャット、ノートからチャットという逆のアプローチをとるツールはうまくいっていない」。しかしチャットをプラットフォームとして各種サービスを連携させればうまくいくというわけだ。
面白いのは各種クラウドサービスや業務システムとの連携ばかりでなく、労働集約型サービスとも連携しようとしていることだ。電話対応の代行サービス、アシスタント(秘書)業務代行サービス、助成金相談手続き代行サービスなどのサービスメニューが既に追加されている。
なお、プラットフォーム化については「春から初夏にかけて新展開がある」とのこと。これは発表されるまでのお楽しみということだ。
成長戦略の3つ目がアジアを中心としたグローバル展開だ。既に台湾やベトナムに社員を派遣、現地採用スタッフも拡充しているという。
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