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企業規模別、目的別で考える「名刺管理ツール」の選び方IT導入完全ガイド(2/3 ページ)

» 2018年04月16日 10時00分 公開
[二瓶 朗グラムワークス]

対応する企業規模

 クラウドサービス型、オンプレミス型は利用可能なユーザー数が柔軟であり、企業規模の大小を考慮しなくても選択できるだろう。

ただしオンプレミス型はサーバを自前で用意する必要がある。クラウドサービス型の多くは、全従業員のアカウント発行はもちろん、部署単位やグループ単位でのアカウント発行が可能であったり、ユーザーの追加や削減にも柔軟に対応したりできることが多い。全社に名刺管理ツールを導入するのではなく、営業部門だけに導入するケースや、本格導入の前に特定の部署やグループでテスト運用を実施したいというようなケースではクラウドサービス型が便利だ。

 パッケージソフトウェア型については、ライセンス数が限定されていることや管理できる名刺の枚数にも限度があることから、大人数の部署や全社での導入は現実的ではないだろう。逆に言えば、少人数のユーザーが各PCで名刺を管理したいというのであれば、パッケージソフトウェア型が有力な選択肢になる。

コスト

 法人向けの名刺管理ツールを利用する場合、導入時の初期費用やランニングコストが必要となる。パッケージソフトウェア型であれば、基本的にはパッケージの購入金額がコストに該当する。オンプレミス型の導入にはツール自体のコストに加えてサーバの導入と運用にそれぞれコストが必要となる。

 クラウドサービス型については、ライセンスの数で月々の料金が決まるタイプや、企業単位で一定期間(1カ月など)内に読み取る名刺の枚数によって料金が決まるタイプが存在するため、サービスによってコストの算出方法が異なる。どちらがよいか一概にはいえないものの、全社的に名刺管理サービスを導入するなら、枚数ごとに利用料が算出されるサービスのほうが、各従業員の利用枚数の差分を吸収でき、コストの無駄を抑えられる可能性は高い。逆に、年に数度のペースでイベントなどを開催し、そのタイミングで読み取る名刺の枚数が激増するような企業であれば、前者の料金設定のほうがコストを抑えられるかもしれない。

営業支援機能

 昨今では、名刺から得られる人の情報を、SFAやCRMといった営業支援システムと連携して活用したいというニーズも多い。その場合、連携するための機能やAPIを備えている必要がある。オンプレミス型とクラウドサービス型については、営業支援システムとの連携に対応するツールも多い。反面、パッケージソフトウェア型については、直接連携する機能を備えていることはまずないため、必要があればユーザー自身が名刺データを抽出して他のアプリへ適応させることになるだろう。

また、クラウドサービス型名刺管理ツールの中には、「Salesforce」と連携することで同じアカウントで名刺を 管理できたり、API連携なしに最新データを同期したり、あるいは名刺情報をシームレスにSalesforceのリードや取引先として登録できるツールもある。自社でSalesforceを使用している場合は、選択肢として考えたい。

「SmartVisca」名刺情報をSalesforceのリードに登録 図3 「SmartVisca」名刺情報をSalesforceのリードに登録(出典:サンブリッジ)サンブリッジのクラウド型名刺管理ツール「SmartVisca」。SFAとして定番の「Salesforce」専用のクラウドサービスとして提供

コミュニケーションのための機能

 名刺情報の人物に対し、名刺管理ツールを基点として、いかにシームレスにコミュニケーションを取れるかということもポイントだ。名刺管理ツールによっては、相手の名刺情報が記載された画面からワンクリックでメールを作成するといったコミュニケーションを図ることが可能となる。この機能は、いずれの形態の名刺管理ツールでも備えている場合が多い。

 ただし、外出先などでスマホから名刺データにアクセスする場合、クラウドサービス型であれば大きな問題はないが、オンプレミス型、パッケージソフトウェア型の名刺管理ツールでは外部からデータベースにアクセスする手段(クラウドサービスとの併用、USBやWi-Fiを利用した転送など)が必要になる可能性が高いため、機動性のあるコミュニケーションという面では不足かもしれない。

 また、名刺管理ツールによっては、より発展した形のコミュニケーション機能を提供する場合もある。例えば名刺データに登録されている特定の企業について、関係するニュースをネットからピックアップして提示したり、その企業のニュースリリースをいち早く通知したりする機能だ。ビジネスのきっかけとなる情報を名刺管理ツールから得られることで、その後のコミュニケーションが円滑になる可能性も高い。

名刺情報の共有機能

 他のユーザーと名刺データを共有する機能も重要だ。「誰」が「いつ」その名刺を手に入れてデータ化したか、その人物がどのような業種の企業と面識が深いか、人脈を可視化し明示できる機能を備えるツールもある。この社内のソーシャルグラフを基に、これからアタックする人物と、以前に名刺交換をした自社の社員を探し出し、あらかじめ対象人物の情報を手に入れておくことも可能だ。

 もちろん、共有する範囲を制限できることも確認しておきたい。例えば、部署ごとに共有できるデータを分けたり、役職レベルや勤務形態(正社員、契約社員、派遣社員)によって参照できる名刺データを切り分けたりする機能を持つ製品もある。

 基本的な共有機能は、クラウドサービス型とオンプレミス型ではほぼサポートされている。加えて、クラウドサービス型のツールの中には、AI技術を基に、会社が所有する名刺情報の中から出会うべき人物をサジェストする機能(現在はβ版)や、アプリケーション上でチャット形式のメッセージを送り、アプリを介して名刺情報の共有ができる機能を有しているものもある。共有という観点では充実した機能を利用できることもクラウドサービス型のポイントだ。

Sansan、出会うべき人物をサジェストする「スマートレコメンデーション」 図4 Sansan、出会うべき人物をサジェストする「スマートレコメンデーション」(出典:Sansan)Sansanのクラウド型名刺管理ツール「Sansan」。クラウドサービス型名刺管理ツールとして最大シェアを誇る。

 一方、パッケージソフトウェア型ではNASを介して共有する必要があったり、そもそもサポートされていなかったりする場合も少なくない。とはいえ、パッケージソフトウェア型の名刺管理ツールにも、それに応じたメリットがある。例えば、秘書が重役の名刺情報を管理する際、その重役の交友関係を他の従業員と共有してはいけない場合もある。機密性の高い名刺情報は、秘書がパッケージソフトウェア型の名刺管理ツールをPCにインストールし、閉じた環境で管理するという使い方もあるだろう。

セキュリティ

 名刺管理ツールの選択において最大のチェックポイントはセキュリティだ。名刺は個人情報でもあることから(名刺と個人情報保護法の関係は次回の記事にて解説する)、容易に情報が漏れることは避けたい。セキュリティについては、各形態、各ツールにおいてさまざまな対策をこらしている。例えば、前述したSalesforceと連携する名刺管理ツールでは、名刺情報がSalesforce環境にのみ保管されるため、セキュリティレベルはSalesforceが提供するセキュリティと同等のレベルを確保できる。

 また、クラウド型の名刺管理ツールを提供する事業者の中には、プライバシーマークを取得していたり、従業員が個人情報保護士資格を持っていたりする場合もあるため、そうした要素を1つの指針にするのもよいだろう。

 とはいえ企業によっては、セキュリティポリシーから、自社の扱う名刺データをクラウドに置くことを避けたいというケースもある。その際には、企業規模や使用目的などを差し置いても、オンプレミス型を選択することも多い。

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