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注目のロボット開発人材育成――ヒューマンリソシアが描く未来のジョブディスクリプション

» 2018年04月18日 10時00分 公開
[相馬大輔RPA BANK]

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人間とロボットが共存、協働する世界。そう聞くと、未来を描いたSF映画の世界を連想する方も少なくないのではないだろうか。2018年1月16日、総務省が開催した「ICT分野における技術戦略検討会(第2回)では、社会・経済、人口、技術でそれぞれ、各調査機関のデータをもとに、2037年から2115年までの予測をまとめた資料を公開し、その中で、2037年までにロボットが幼児レベルの学習能力を持ち、人間の教示を受けることで成人レベルにまで成長する知能ロボットが実現すると予測している。

人間がロボットを育成する。ともするとまだ少し未来のお話と受け取られるかもしれないが、急速に普及が進むRPA市場では現在、ロボットを開発し、実装や運用を担えるスキル習得を目的としたワークショップが大変な盛況となっている。

教育事業をバックボーンとし、「育成型人材サービス」を展開するヒューマンリソシア株式会社(東京都新宿区)は、2017年よりRPAソフトウェアを活用したロボット開発・実装・運用を担える人材育成を目的としたワークショップ「RPAトレーニングセンター」を東京・銀座に開講。開講以降、受講者が増え続け、4カ所に拡張し、全国的なニーズにも応える計画だ。RPAソリューション「WinActor」について学ぶ講座は今後、開催地と学習内容を順次拡大していく方針という。同社講師として連日レクチャーを担当している小松華子氏に、講座の内容と、受講生の受講きっかけ、そしてロボット開発に求められる人材像について聞いた。

開設後約半年で、受講者層が管理者層から実運用担当者へ変化

―まず、講座の概要を教えてください。

ヒューマンリソシアは現在、WinActor /WinDirectorの販売元であるNTTデータと共同開発した3種類のカリキュラムでRPA講座を開いています。会場は、既に開設している東京の2カ所と大阪、名古屋のほか、6月までに札幌・仙台・広島・福岡・那覇でも順次開講を予定しています。

3つの講座は段階別で、初めてWinActorに触れる方が簡単なシナリオ(自動実行する作業内容や手順をまとめたファイル)を作成する「初級」から、基礎知識をもとに活用法を学ぶ「中級」、さらに中級を修了後に自立可能なレベルを目指す「上級」が、それぞれ1回7時間(中級のみ2日間・計14時間)。私を含めて12人のインストラクターが分担しています。

―どのような方が受講しているのですか。

既に「WinActor」を導入され実際にRPAを使用する方、「WinActor」の導入を予定している、もしくは検討されている企業の方などが参加されています。

東京で最初の講座を開いたのは昨年11月ですが、この数カ月の間でも、主な受講者層や受講動機には変化があるように思います。当初は役職にある方や情報システム部門の方が、RPAの実用性を確認するために受講する例が目立っていましたが、現在ではそうした企業が実際にWinActorを導入して、導入部署から業務担当者が来られるケースが多くなっています。

―実運用を担う受講者が増えたことで、講座の雰囲気も変わってきましたか?

そうですね。社内で白羽の矢が立ち、既に導入されているツールについて受講に来られている方々は、やはり非常に熱心です。1日7時間というかなりハードな講習にもかかわらず、休憩時間も「きりのいいところまで終わらせたい」と、作業を続けている方がいるほどです。

ある程度まで独学で取り組まれた方の受講が増えてくるにつれて、質問内容も「ここで起きるエラーを解決したい」など、かなり具体的になっています。テキストに沿ってカリキュラムを進めるのが基本ですが、研修では、そのような疑問が解決できるように心がけています。また、必要に応じて、RPAエンジニアへ取り次ぎ、受講者の職場で生じている具体的な課題を解決することもあります。今後そうした連携を行う場面は、さらに増えていくと思いますし、ここがRPA活用を全面的にサポートできる当社の強みだと思っています。

RPAに向くのは「パズル感覚で取り組める人」

―まだRPAをよく知らない受講者が来たとき、WinActorについてどのように説明しているのですか。

「ユーザーに楽しくITを活用してもらうことを目指して開発され、常に進化を続けているツール」と説明しています。ユーザーインターフェースが非常になじみやすく、WindowsのPC操作にさえ慣れていれば、ITエンジニアではない事務系のスタッフでも直感的に操作できるのが大きな特徴だと思います。

直感的に操作しやすい一方、シナリオが実行される背後ではしっかりプログラムが走っていますから、思い通りに動いたときの楽しさ・ものづくりの喜びが得られるのもよいところだと思います。試行錯誤の末、シナリオを作りあげた受講者の充実した表情を見ていると、私もうれしくなります。

―多くの受講者と接する中で、特にRPAの習得に向いているタイプや、早く上達するためのコツがあると思いますか。

企業がRPAを導入する目的は業務改善にあるので、普段から効率的に仕事を進めようと工夫し、実際に効率化できたとき充実感を感じられる方は、その延長上でWinActorにも取り組めると思います。

あとは、シナリオの作成を“パズル感覚”で楽しめる人が向いていると思います。RPAはプログラミングに比べて技術的なハードルこそ低いですが、まず1回では完璧に動かない点は同じ。エラーメッセージが出るたび、不具合の場所を順番に確認して探し当てるという繰り返しになるので、ここで自信をなくさないことが大切です。せっかく学ぶなら楽しく、「正解を探すパズル」だと思って取り組んでほしいと願っています。

―「ExcelのマクロやVBAが使える人はRPAを覚えるのも早い」という話も聞きます。

ええ。講習の最初に「ExcelとWord、どっちが得意ですか?」と尋ねて手を挙げてもらうこともあるのですが、各企業からの受講者のうち、平均すると半数弱はExcelを使い慣れている印象です。Excelでデータを論理的に扱う感覚が分かっていたり、ちょっとしたマクロを自作して省力化した経験があったりすると、それがRPAでも応用できるので、WinActorの習得に有利な面があるのは確かです。

ただ、VBAのようなプログラミングの感覚に引っ張られすぎると技術的な細部に注意が向いてしまい、WinActorを道具として使いこなす意識が薄くなりがちです。何もかも理解しようという完璧主義をあえて捨て、ブラックボックスの機能同士をパーツとして手早く組み合わせる割り切りが必要な場面もあり、ITに詳しい方にとってはそこが課題となります。

―WinActorの習得で特につまずきやすい部分と、そこへの対処法を教えてください。

いまお話ししたこととも関連しますが、システム開発の経験がある方はWinActorでも複雑で難しいシナリオを作りがちな傾向があります。現場のスタッフで十分運用できる操作性というWinActorのメリットを最大限生かすには、ITに詳しくない同僚でもすぐ分かる、なるべく単純な仕組みを心がける必要があります。

また、従来ExcelやAccessと手作業を組み合わせて処理していた業務にWinActorを採り入れる際、すべての作業工程を自動化するシナリオを作ろうとする方もいます。RPAは、既存の業務手順を大きく変えることなく手作業を減らせるのが利点のツールですから、既にソフトウェアで処理している工程は基本的にそのまま残し、すき間の手作業をWinActorでロボット化していくケースが多いです。講習では、WinActorは業務を全面的に自動化するのではなく、部分的に橋渡しするツールであると説明しています。

RPAツールの操作を学ぶことは、それ自体が目的ではなく、最終的に業務改善を実現することこそが重要です。そこで中級以降の講習では、PoC(概念実証)や標準化、文書化といった内容にも触れ、ツールの操作だけではなく、業務改善全般を理解していただくように心がけています。

RPAの躍進を女性の力が担う

―小松さんは、今回WinActorの講師を始める前からRPAをご存じだったのですか。

いいえ、じつは初めて知りました(笑)。ただ今回「RPAインストラクター」を募集する求人を見つけてからRPAについて調べる中で、既存の仕組みを生かしてムダなく合理化を進めるコンセプトには強い共感を持ちました。

私はIT関連の講師を通算6年ほどしていますが、その前はアプリケーション開発エンジニアの経験が長く、さらに自社の経営企画室に所属して業務改善に2年ほど携わっていたこともあります。そうしたキャリアを経てきた私が、育児のピークを過ぎたところでもう一度真剣に打ち込める仕事を考えたとき、残業の多いITエンジニアに戻るのは現実的ではありませんでした。新たなテクノロジーとして高いニーズがあり、個人的な興味もある業務改善に関連したRPAに携わることができる今の仕事にとてもやりがいを感じていますし、同時に家庭・育児との両立を実現できる今の職場に巡り会えたのは、とても幸運だったと思います。

―RPAとの出会いから、仕事も家庭も充実させるライフスタイルが可能になったのですね。最後に、将来の受講生へのメッセージをお願いします。

さきほども少し触れましたが、私はWinActorを学ばれる方が「楽しかった」「受けてよかった」と思えるような講習を目指しています。既に独学でお使いの方も、一通りの知識をおさらいすることで“穴”がなくなり、見通しがよくなると思います。

さまざまな業務知識や、早く正確なPCスキルを磨いてきた事務職の方は「職場で頼りにされる立場を築いてきた」という自負をお持ちだと思います。ロボットによる業務効率化が、そうした蓄積を台無しにするのではないかと警戒なさるかもしれませんが、高いレベルの業務知識とPC操作はRPAと両立するもので、今後はこれらのスキルを併せ持つ方が高く評価されるようになると思います。なるべく早いうちに、しかも楽しみながら、ご自身の強みを磨いていくお手伝いができればと願っています。

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