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元エンジニアが暴露する、OpenAIの社内事情と“クセ強”な企業文化:841st Lap

OpenAIは「ChatGPT」の開発元として世界的に注目を集める一方、社内には独特な企業文化が根付いているという。Microsoftとの微妙な関係や、優秀な人材を引き留めるための施策、そして“クセ強”な社内コミュニケーションの実態とは。

» 2025年08月08日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 「ChatGPT」の開発元として知られるOpenAI。現在、OpenAIは営利企業への移行を模索しているが、最大の出資者であるMicrosoftはその方針に慎重な姿勢を示しており、両社は微妙な緊張感を抱きつつも、パートナーシップを維持している。

 AI開発の最前線を走るOpenAIには、優秀な人材が多数在籍しており、ライバル企業からの引き抜きも後を絶たない。そのため、同社では他社からの高額オファーに対抗するために、報酬体系の見直しや充実した休暇制度など、従業員の流出を防ぐための施策を講じている。

 世界的な注目を集める企業であるが故に、その実態が見えにくいのも事実だ。だが、ChatGPTをはじめとするサービス開発の裏側には、製品に明確なロードマップを設けない方針や、一風変わったコミュニケーションスタイルなど、同社ならではの独自文化があるという。開発プロジェクトの進め方を考える上で参考になるヒントがあるかもしれない。

 元OpenAIのエンジニアであるカルヴァン・フレンチ・オーウェン氏は、同社において優秀なエンジニアとして活躍し、「Codex」の開発にも深く関わった人物だ。2024年5月にOpenAIへ入社し、約1年1カ月勤務した後、2025年6月に退職した。その後、自身で新たな会社を立ち上げた。

 オーウェン氏は、OpenAIでの1年強の経験について、自身のブログで詳細に振り返っている。これを受けて、Tech系メディア「Windows Central」も記事として取り上げ、OpenAIの内情が注目を集めた。

 オーウェン氏が退職を決断した背景には、OpenAIの急速な組織拡大がある。在籍わずか1年の間に従業員数は1000人から3000人へと急増し、その急成長に伴って社内のコミュニケーションや報告体制、採用プロセスに混乱が生じた。結果として、チームごとに文化や業務の進め方に大きなばらつきが見られるようになった。

 また、オーウェン氏はOpenAI特有のコミュニケーション文化にも言及している。メールの使用は極めて少なく、全てが「Slack」で完結するスタイルで、彼自身が受け取ったメールは在籍中わずか10通だったという。さらに、明確な製品ロードマップが存在せず、研究成果に応じて即座に方針転換し、実行力のある人材がそのまま昇進していくというスピーディーな組織運営がなされていた。特にChatGPTに関しては、迅速な意思決定と方向転換が常態化していたと述べている。

 加えて、OpenAIは外部の声に非常に敏感で、特に「X」(旧Twitter)への投稿に強い関心を持っていたという。SNSでOpenAI関連の話題が拡散されると、それが製品開発に影響を与えるケースも少なくなかったようだ。ある同僚が「OpenAIはTwitterのノリで動いている」と冗談を言うほどだったという。ただし、Slackであっても収益や経費に関する情報は厳重に管理されるなど、情報の安全性には細心の注意が払われていたようだ。

 一方で、メディアによって社内で未発表の情報が先に報道されることもたびたびあったと明かす。オーウェン氏は、これはOpenAIが常に社外から厳しく監視されている証左だと分析している。在籍中、自身のプロジェクトに関しても社外へ詳細を話すことが極めて困難だったという。

 彼が関わった「Codex」の開発では2つのチームを統合し、わずか7週間で開発からローンチまでを実現した。チームはエンジニア約8人、リサーチャー約4人、デザイナー2人、GTM担当2人、プロジェクトマネジャー1人という小規模ながら非常に効率的な構成であり、このチームの成果こそがOpenAIに集う人材の優秀さを物語っていると強調している。

 なお、オーウェン氏は、退社の理由について、社内トラブルや不満ではなかったと明言している。以前、自ら率いていた小規模なスタートアップと、1年で3000人規模へと成長した巨大組織との間に感じたギャップが主な理由だという。そして現在は、OpenAIで培った知見を生かし、新たに立ち上げた自身の企業で活動している。

 このように、オーウェン氏の証言からは、急成長するOpenAIの「カオス」と「魅力」が垣間見える。意外な一面もあれば想定内の部分もあるが、世界最先端のAI企業のリアルな姿を知るうえで興味深い内容であることは間違いない。今後のOpenAIのさらなる進化にも、大きな期待が寄せられる。


上司X

上司X: 元エンジニアによって、あまり知られていなかったOpenAIの内情がつまびらかにされた、という話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: なるほど。というかOpenAIって従業員3000人を超える企業規模になっているんですね。


上司X

上司X: ちらっと調べたら、ChatGPTが公開された1年後、2023年11月には750人とされていたみたいだからな。そこから爆発的に増えたことになる。


ブラックピット

ブラックピット: 従業員が増えれば開発スピードも上がるし、オーウェン氏が指摘したみたい“気まぐれ”の開発方針にも沿うような人材が多数いるってことなんでしょうねえ。


上司X

上司X: でも、アルトマン氏の解任騒動だったり、色々とこう経営と研究や開発の方向性のズレが起こることもあるからな。そういうことが実際あったし。


ブラックピット

ブラックピット: あとはSlack文化ということですが、Microsoftとの深い関係の割りにはSlackなんですねえ。


上司X

上司X: 「Microsoft Teams」があまりエンジニア向きではないからかもしれないな。でもMicrosoftとの関係性うんぬんより以前からSlackを使っていたようだからね。今回の件でも分かるように、OpenAIの企業風土というのは意外に世間に広まっていないものだ。辞めたエンジニアの発言でその実情が垣間見えるというだけでもちょっと面白いじゃないか。


ブラックピット

ブラックピット: 確かにそうかもしれませんね。逆に言ったら、従業員が劇的に増えたOpenAIを辞める人もどんどん増えるわけで、これからはその内情がさらにリークされる可能性があるということじゃないでしょうか。だからどうしたって話かもしれませんが。


上司X

上司X: 確かに「だからどうした」と思わなくもないが(笑)。でも、こういうリークがあって、最先端のAI企業がどうやって開発したり企業活動したりしているのかが分かるのは面白いことかもしれない。オーウェン氏に続く告白者が現れることに期待するのもいいのかもね。

川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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