CRMの概況を理解したところで、実際の導入状況について見ていくことにしよう。以下のグラフは年商500億円未満を対象として「導入済みのCRM製品/サービス(複数回答可)」を尋ねた結果のうち、導入社数シェア上位10位までをプロットしたものである。
上記のグラフの中では「カスタマーリングス」がMAを主体とした新興の製品やサービスであるのに対して、残りはSFAを起点として発展してきた製品やサービスといえる。そのため、小規模企業や中堅・中小企業を含む年商500億円未満全体での導入社数という観点で「MA」の導入はまだ黎明期の段階にある。
だが、年商500億円以上の大企業も含めて捉えたときはセールスフォースドットコム、SAPジャパン、日本オラクルといった大手ベンダーもMAの展開に注力しており、シャノンやマルケトといった比較的新しいプレイヤーの動きも活発だ。従って、今後はMA導入の動きが年商規模の大きな企業から小さな企業へと徐々に広がっていく可能性も十分考えられる。
また、以下のグラフはCRMを導入済みの年商500億円未満の企業に対して、CRMの運用形態を尋ねた結果を2016年と2017年で比較したものだ。
2016年から2017年にかけては、以前から存在している「パッケージ(社内設置)」も伸びているが、「ASP/SaaS利用」の割合が16.7%から32.4%と大幅に増加していることが分かる。特に近年では外資系ベンダーにおけるASP/SaaS形態のCRM(SFAが主体のもの)の訴求が盛んだ。前述のグラフではセールスフォースドットコムの「Salesforce Sales/Service/Marketing Cloud」や日本マイクロソフトの「Microsoft Dynamics CRM/365」などが該当する。
このようにCRMの導入については「MAはまだ黎明(れいめい)期だが、今後は幅広い年商帯での導入が進む可能性があり、SFAについてはASP/SaaS形態での導入が大幅に増加している」という状況となっている。
MAの効果を最大限に発揮するためにはSNSのような外部サービスと連携し、スマートフォンからもアクセスしやすい環境を構築することが重要となってくる。その際はSaaSに代表されるクラウド形態が選択肢となってくるだろう。
つまり「MAの導入が進む」という流れと「CRMにおいてクラウド(SaaS)が増加する」という流れは密接に関連している。ユーザー企業がCRM導入において、社内設置(オンプレミス)かクラウドかを検討する際にはコスト面だけでなく、MAにどこまで取り組むかという観点を加味することが重要となってくる。
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