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» 2018年05月14日 10時00分 公開

RPA運用の成功は経営戦略への組み込みが肝になるーーBlue Prism日本法人 ポール・ワッツ社長に聞く

[相馬大輔RPA BANK]

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RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の語源を知っていますか?と聞かれた際に、回答することができない方は多いのではないだろうか。起源は2012年に遡り、英国のエンタープライズRPA開発企業・Blue Prismの現チーフエバンジェリストで当時はCMOのPat Geary氏が当時のBlue Prismの事業内容について説明する際に「Robotic Process Automation」と使ったことがその始まりだという。

RPAの先駆者として知名度の高いBlue Prism。グローバル企業での豊富な採用実績を誇り、大学との実証研究も進めてきた同社は、2017年4月に日本法人のBlue Prism株式会社(東京都港区)を設立。現在はパートナー企業を通して製品の普及を進める一方、大規模運用に成功した海外で積み上げられたナレッジの紹介に力を注いでいる。「RPAは単なるツールの導入ではなく、組織文化を根本から変える挑戦」と語るポール・ワッツ日本法人社長に、世界最先端のRPAトレンドと同社の国内戦略を聞いた。

グローバル企業ではRPA活用を「戦術」から「戦略」に

―まずご自身と日本法人の簡単なご紹介をお願いします。

私はエンタープライズ向けソフトウエアの業界で30年のキャリアがあり、中でも香港に15年、シンガポールに6年とアジア・パシフィックで長く勤務してきました。その間、業務プロセスを可視化・効率化するワークフローやBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)の分野でビジネスをしてきたのですが、定型業務をソフトウエア ロボットで代替するRPAはBPMとも関係が深く、共通の知人を介してBlue Prismの共同創業者で現CEOのアレスター・バスゲート氏とロンドンで面識を持ったのが入社のきっかけです。その直後、2017年4月に設立されたBlue Prism株式会社の社長として赴任し、現在に至ります。

現在のところ、日本における当社のビジネスはすべて、販社やコンサルティングファームといったパートナー企業との共同プロジェクトで進めています。RPAの成長市場で現地の実情とニーズをつかみ、われわれと各国のユーザーが蓄積してきた知見を共有することが当社のミッションです。

―主要なRPAツールのひとつとして世界各国で導入されているBlue Prismの事例を踏まえて、現在の日本市場への印象を聞かせてください。

日本ではすでに30社を超える企業がBlue Prismを導入しています。経営戦略の一環として長期的視点を持って展開する企業がある一方、最初に導入したロボット単体からどうスケールさせるか、模索しているユーザーもいらっしゃいます。

日本のRPA市場全体をみると、現段階での活用はおおむね局所的な業務効率化を図る「戦術」のレベルにとどまっていますが、グローバルにおいてはRPA活用に「戦略」レベルで取り組み、1,000以上のソフトウエア ロボットの運用に成功している例も出てきています。日本におけるRPAは、そうした世界標準から2年ほど立ち後れており、急速に高まっている関心を追い風にキャッチアップを図りたいと考えています。

RPAは「組織文化を根本から変える挑戦」

―日本でのRPAの取り組みが世界標準に追いつくには、どうすればよいでしょうか。

RPAによって定型的な事務作業を自動化していくプロジェクトそのものは世界共通です。また、新しい取り組みにあたっては最初から完璧を求めず、小さい失敗を重ねながら進めていくことも変わりはありません。問題は、日本企業が失敗を受け入れにくい文化を持つ点にあります。

「まず小規模な導入で徹底的にカスタマイズを重ね、完璧な精度にしてから本格展開に進む」という導入プロセスは日本独特のもので、これでは展開のスピードはどうしても遅くなってしまいます。RPAの導入を加速させるには、「業務の最初から最後まで、一貫して自動化する」という理想を持ち、どんな業務もまず自動化することを考えてみるべきです。そして「完全な自動化」という理想へ近づくために、優先順位の高いものから・完璧を求めずに進めていくアプローチが必要です。

RPAは、あらゆる業務プロセスを自動化していく「デジタルトランスフォーメーション」のための一手法で、それらの必要性は日本の企業経営者も理解していると思います。重要なのは、デジタルトランスフォーメーションが単なるIT製品の導入ではなく「組織文化を根本から変える挑戦」だということです。この認識をいかに全社的なものとするか、とりわけ、業務を担っている現場にどう浸透させていくかがポイントとなります。

―ツール操作にとどまらず、業務改善を主導していくための従業員教育が重要なのですね。

はい。RPAを導入した企業は従業員に対する研修やサポートを必要としますから、外部のパートナーとなるコンサルタントの育成が急務といえます。ただ一方、限られた予算の中で、より適切な業務を、少しでも多く、効果的に自動化していくためには、RPAユーザーによるパートナーの活用が全面的な依存になってしまうのを避けなくてはなりません。

RPAのプロジェクトを社内で主導し、パートナーとのチームワークをうまく展開したユーザーとしては、英国最大のロイズ銀行が挙げられます。ロイズはRPAを運用するにあたり、授業形式の研修や助言を担うコンサルタント会社をパートナーとしました。研修終了後の実装においてはコンサル側が手本を示しましたが、ロイズの従業員とコンサルの担当者が混成チームを組み、RPAの運用を共同作業で行うことが効果的であることが実証されました。

コンサル側はメンタリングを担い、「RPAに適した業務をどのように見極め、選択するか?」、「良いビジネス ケースに見えるが、コスト効果は高いか?」、「それを推進する価値はあるか?」を問いながらプロジェクトを進めます。良きパートナーシップがRPA運用成功の要(かなめ)なのです。最終的にRPAのプロジェクト管理にはロイズの従業員が責任を持っています。RPAの導入拡大に際しても、ロイズの社内でまかないきれない作業を具体的に特定し、必要最小限のサポートを主体的に活用できるチームが現れています。

ユーザーがプロジェクトをリードすることによって、RPAが事業戦略の中にしっかり落とし込まれ、運用コストを大幅に削減でき、さらに自社による継続的な運用が可能となります。日本においても今後、こうした運用を確立するためのサポート体制をつくっていく必要があります。

グローバルで蓄積した知見を日本国内でローカライズ

―従事してきた業務の自動化を現場の従業員に求めるためには、省力化が実現した後の働き方への展望も示す必要があります。

ここでもロイズの事例が参考になるでしょう。同社ではRPA の導入によって、新しい職務がいくつか生まれました。それまで担ってきた業務の分野でRPA の専門知識を生かす人もいれば、新たなキャリアパスに挑戦する人もいます。個別の自動化の担当者にとどまらず、より上位のアドバイザー職や技術職にステップアップする道も開かれており、RPAが従業員のキャリアパスを広げたと言ってよいでしょう。

デジタルトランスフォーメーションが進展していく中で、今後は人工知能(AI)の採用も進みます。いまRPAに取り組み、業務効率化の基礎を身につけておくことは、やがて普及するAIを活用する上でも意義が大きいことだと思います。

―海外で蓄積した知見とノウハウを、日本にどう広めていく計画ですか。

まずは製品の完全なローカライズです。ロードマップにあるBlue Prism 製品の日本語化は順調に進んでおります。また、さきほど述べたとおり、RPAの普及にはトレーニングやサポートの存在が欠かせません。「ユーザー主導の業務改革を支える」というビジョンを共有できる先進的なパートナーと共に、導入支援のメニューを充実させていきたいと考えています。

過去10年にわたってRPAの市場をリードしてきたわれわれの製品は、エンタープライズの大規模運用を想定した堅牢な設計と、BPMやAIとの連携を見すえた高い拡張性を特長とし、第三者機関による調査でも「導入企業の96%が満足」との結果が出ています。また製品そのものだけでなく、RPAの導入から運用、導入範囲の拡大に至るプロセスに関しては、ワークショップなど独自のメソッドの共有を進めております。

これからRPAに取り組む企業はもとより、一度着手したRPA化で壁にぶつかっている企業に対しても、こうしたわれわれの強みをアピールしていくつもりです。優れた海外ユーザーの取り組みをご紹介しながら、日本からも海外へご紹介できるRPAの成功事例を生み出していきたいと取り組んでいます。

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