最後に、BPOサービスを選択するときに注意しておきたい視点を幾つか見ておきたい。
従来は、自社の業務をそのまま外部に丸投げする企業もあったが、その場合は自社のプロセスに適した形でBPOサービスそのものにチューニングを加え、それなりのコストをかけて環境を整備しなければならなかった。しかし、それではコストが積みあがるばかりか、標準化が進まないことでRPAやAIといったテクノロジーが活用できず、結局効率化にはつながりにくい状況が生まれてしまう。
そこで最近では、効率化や最適化を前提に、既存業務のBPRや、運用改善を目指しPDCAを回すBPMを行う目的でBPOサービスを利用する企業が出てきている。それによってさらなる省力化やコスト削減、業務のスピードアップが期待できるという発想だ。だからこそ、BPRやBPMを実施するためのコンサルティングや導入後の効果測定といった、具体的な業務改善プロセスの提案能力を持ったサービスを選んでおきたい。
また、BPOサービスで課題になりやすいのが、その責任分界点だろう。これを明確にしなければ、対象業務の一連のプロセスの中で外部委託する範囲を設定することはできない。ただし、実際には既存のプロセスそのままでは責任分界点をきちんと定義するのが困難なケースも少なくない。この観点からも、プロセスの可視化や整理などといったBPRコンサルティングができるところを選ぶべきだ。
さらに、BPMのようにPDCAを回していくためにも、きちんと改善に向けたKPIが設定できるようにしておくべきだ。何らかのKPIを設定しておかないと、改善プロセスを回していくこと自体が難しい。人事系のBPOサービスであれば、例えば離職率を1つの指標とし、その動向によって効果を測定するという方法が考えられる。このように、定期的にKPIをモニターできる仕掛けが用意できるものを選びたい。
これまで語ってきた通り、BPOサービスとテクノロジーが切り離せない状況にある中で、BPOサービスベンダーがどの程度テクノロジーに投資しているのか、きちんとサービスに組み込んでいるのかについては、しっかり見極めておきたいところだ。実際の業務領域にもよるが、既に人海戦術でBPOサービスを運用してきた中小のBPOサービス事業者のなかには撤退せざるを得ない状況になっているところもある。テクノロジーへの対応力がコストを軽減し、効率化につながることになるため、BPOサービス側にその適用力がないと勝ち残っていけないのだ。
なお、海外ベンダーのほうがテクノロジーへの対応は進んでいるように思えるが、「BPaaS」の項でも触れた通り、欧米のように業務プロセスの標準化が既に一段落ついている環境で作られたシステムやツールが、現場での運用が中心の日本企業にそのまますぐ適用できるかといえば、それは微妙なところだろう。
将来的には標準化に向かう可能性は高いが、その運用に今の時点で耐えられるかどうかは未知数だ。もし標準化へ一気に舵を切るのであれば、現場主導で進めることは難しく、トップの決断で導入を進めていくことが成功への近道になり得る。
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