すっかり生活範囲に定着した感のあるスマートスピーカー。呼びかけるだけで、ネットを検索したり家電を操作したり、ちょっとした話し相手にもなったりして、家族も同然というような家庭もあるかもしれない。
米国オレゴン州ポートランドに住む夫婦は、Alexa(アレクサ)に対応する「Amazon Echo」を愛用していた。各部屋に1台ずつ配置し、照明や空調、セキュリティシステムの制御に使っていた。もはや日常生活に欠かせない存在だ。
ところが、夫の会社の部下からの電話で事態は急変する。スマートスピーカーがとんでもない迷惑行為を働いているというのだ。それは一体?
電話を受けた妻のダニエルさんは耳を疑った。「あなた方はハッキングされ、盗聴されている」と言うのだ。電話の主は「さっき、フローリングについて話していたでしょう?」と指摘する。確かに夫婦はフローリングの話をしていた。
Amazon Echoには、登録した連絡先に音声メッセージを送信する機能がある(日本語では未実装)。通常は、ユーザーが「アレクサ」と呼びかけることでAmazon Echoが指示待ち状態になり、幾つかの命令と確認のステップを踏んでメッセージを送信する。ところが、何らかの事情でユーザーである夫婦が認識することなく命令が実行されていたのだ。
ダニエルさんは、Amazonに説明を求めたが、当初は明確な回答を得られなかった。そこで彼女は家中のAmazon Echoの電源を引っこ抜いて、返品手続きを始めた。
この出来事が報道され、大きな話題となったことで、Amazonも調査を行い、回答をせざるを得ない状況となった。だが、Amazonの見解は意外なものだった。要約すると「たまたま」だったというのだ。
メッセージを送信したAmazon Echoのログを確認すると、夫婦の会話の中で、たまたまウェイク(起動)コマンドのように聞こえる発言があった。標準設定では「アレクサ」だ。その後、夫婦の会話の中から「send message(メッセージを送信)」という命令に聞こえる何かをたまたま聞き取った。
Alexaは「to Whom?(誰に?)」と宛先を確認するが、その音声は夫婦には届かなかった。しかし、たまたま夫婦は夫の部下の話をしていたので、これを宛先だと判断した。そして、Alexaは「○○, right?(○○さんでいいですか?)」と確認をした。すると、たまたま夫婦の会話の中で「right(いいよ)」という発言があった。命令は正式に認証され、その後の夫婦の会話が録音され、夫の部下に送信されたのだった。
Amazon Echoに限らず、スマートスピーカーに搭載される音声アシスタントは、常時待機状態にあり、ユーザーの音声コマンドを拾うようになっている。ユーザーならば、話しかけたつもりではなかったのに、自分の会話に反応したスマートスピーカーが動き出した経験があるのではないか。
今回の事件は、ハッカーの仕業ではなかった。勤勉すぎる音声アシスタントが、夫婦の会話からたまたまコマンドを拾ってしまったのだ。ダニエルさん宅では、各部屋のAmazon Echoを連携させていたため、宅内のあちこちで話したことが拾われて一連の現象が発生したと推定されている。
これは、Amazon Echoの仕様だ。今後も同様の現象が発生する可能性はゼロではない。ダニエルさんのケースよりもオオゴトになるような「たまたまコマンド」が発せられないことを祈るばかりだ。
上司X: Amazon Echoがたまたまコマンドを拾って、メッセージが送信されちゃってタイヘンという話だよ。
ブラックピット: 何という偶然。スマスピもやりますね。
上司X: その省略形は一般的なのかい。それにしても「たまたま」というにはハイレベルな偶然だよな。もはや「奇跡」だよ。
ブラックピット: 僕も自宅でAmazon Echoを使ってますけど、遊びにきた友達とAlexaの話をしているとウェイクしちゃいますからね。
上司X: ええっ!
ブラックピット: いや、そんなに驚くことじゃないですよ。
上司X: いやね、キミの自宅に遊びにくるような友人がいるっていうところに驚いてしまったんだ。
ブラックピット: 友達ぐらい、いますよ。ともかくAlexaは勤勉過ぎるきらいがありますね。すぐ起動しちゃう。少なくともメッセージ送信コマンドはオフにしておくとか、予防が必要かもしれませんね。
上司X: スマートスピーカーが普及すれば、こういう事件も増えるだろうな。もちろん家庭のプライバシーが流出するのはイカンが、企業でも使われるようになったら企業機密が録音されてしまうかもしれないな。
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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