経費精算処理にRPAを活用する企業で、月末にRPAロボット(以下、ロボ)が稼働していなかったと発覚した。経費精算書の新フォーマットにロボを対応させていなかったことが原因で、ロボが停止したのだ。未処理を警告するアラート機能を持ち合わせていなかったために発覚も遅れ、結果的に翌月の給料日に支払いが間に合わないというトラブルに発展した。
現在、2017年ごろから急速に増えてきた国内企業のRPA導入、検証数もピークを越え、一段落したといえる。導入を果たした企業が次のフェーズとして、全社へのRPA展開を進めはじめている。すると同時に、以上で紹介したようなトラブルが浮上し、開発や運営の課題が浮き彫りになってくる。
SHIFTは、ソフトウェアの品質保証およびテストの専門企業として、金融機関や保険会社、大手流通系企業や自動車メーカーに至るまで、さまざまな領域における企業のITシステムやソフトウェアの品質と向き合ってきた。そのノウハウを基に、2017年ごろからは、RPAロボットの開発や運用に関する多くの相談を受けるようになり、専任部署を立ち上げRPA事業に取り組んでいる。
本寄稿では、全社規模で展開した際にもトラブルをおこさないRPAを「高品質なRPA」とし、どのように実現できるかを解説する。「高品質なRPA」を実現するためには、RPAプロジェクトを担う現場部門が企画、設計、開発、テスト、運用の各フェーズで留意すべき点がある。要は問題をおこさない優等生のロボットをどう育て、彼らとどう付き合っていけばよいのかという話だとイメージしていただければよい。
今まさにRPAの全社展開に課題を抱えている企業の方はもちろんのこと、今後RPA導入に着手しようとしている企業の方々にも事前に考慮しておいていただきたい内容だ。
第1回となる今回は、目指すべき高品質なRPAとは何か、その実現のためにプロジェクトの各フェーズで必要な取り組みは何か、全体像を紹介したい。なお、世の中ではRPAツールで開発されたロボットを、ソフトロボ、bot、Digital Labor、シナリオ、Digital Workforceなどさまざまな呼称で呼ぶが、本寄稿ではRPAロボット(略称、ロボ)と称することにする。
起こりがちなトラブルの事例をもう少し説明しよう。図1は、ある経費精算処理に関わるロボの作業フローを図にしたものである。このロボの設定ファイルには、ある致命的な間違いが潜んでいる。お分かりだろうか?
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