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「Microsoft Teams」「Slack」「Google Chat」、チャットツールのトレンド解説

テレワークが浸透し、従業員同士が離れた環境で業務を進める中で、コミュニケーション手段の中心にあるのがチャットツールやWeb会議ツール。本稿は、チャットやWeb会議におけるツールのトレンドを解説する。

» 2021年03月26日 07時00分 公開
[小山新吾VTVジャパン]

 急速なテレワークシフトにより、業務におけるコミュニケーションが大きく変化しています。その中心にあるのがチャットやオンライン会議をはじめとしたコミュニケーションツールです。

 連載3回目となる本稿は、コミュニケーション環境の変化を概観しながら、チャットツールやオンライン会議ツールそれぞれの特徴を整理します。

チャットとWeb会議、どう使い分ける?

 オフィスに出社することが前提だったコロナ禍以前とは異なり、現在はテレワークを中心とした働き方が広く浸透していますが、新たな働き方においてメンバーやチームと円滑な意思疎通を図るために、どのようなコミュニケーション基盤があるのでしょうか。

 「メッセージコミュニケーション」、ミーティングなどで利用される「ビデオコミュニケーション」の2つに大別できます。

 2つのコミュニケーション手段は、どちらか一方だけを利用するというよりも、シーンによって使い分けながら、双方を混在させた形で利用するパターンが多いでしょう。例えば、ビデオコミュニケーションツールでオンライン会議を行いながら、チャットで資料を共有する、といったシーンもあります。

 もともと業務におけるメッセージコミュニケーションはメールが中心にあり、現在でもその位置付けは変わっていません。しかし、メールを主体とした情報のやりとりは、本人以外も含めたCCやBCCなどで関係者を巻き込んだメッセージになりがちで、重要なメッセージ以外のメールも大量に届きます。結果として、「大切な情報を見落としてしまった」という経験をお持ちの方もいることでしょう。

 日々、顔を突き合わせる環境であれば口頭でフォローすることも可能ですが、在宅勤務を中心としたテレワーク環境では、気軽に声を掛けるわけにもいきません。コロナ禍以前のように出社前提で整備されていたコミュニケーション基盤から脱却し、ニューノーマルの環境に適したコミュニケーション基盤の整備が急がれるところです。

 メール以外のコミュニケーション手段として利用が広まっているのが、コラボレーションツールの一つである「チャット」です。今では、手軽なコミュニケーション手段としてチャットを全社的に利用し、日常的な「報・連・相(報告・連絡・相談)」の手段としても浸透しています。相談したい相手に直接届きやすく、メールのような形式的な文章は不要で、気軽にメッセージを送れる点が主な利点です。

 これまで利用していたグループウェアやスケジューラーなども、部門内やプロジェクト担当同士での打ち合わせなどの調整時に利用されることから、チャットツールとともに重要なコラボレーションツールの一つとして位置付けられます。

 ここからは、チャットツールの代表的、「Microsoft Teams」「Slack」「Google Chat」の特徴や違いを整理しながら解説します。

チャットツールの代表格、Teams、Google Chat、Slackの特長を総整理

 ビジネスチャットツールは数多く存在しますが、社内のメンバーが参加しやすく、社外の人とも気軽にやりとりできるものが人気です。チャットツールの代表格と言えば「Microsoft 365」に含まれる「Microsoft Teams」や、Google Workspaceの「Google Chat」、そして「Slack」です。それぞれのツールで一長一短はありますが、導入、展開しやすいかどうかがポイントです。

 LINEのビジネス版チャット「LINE WORKS」や、国産ツールの「Chatwork」などもありますが、Microsoft 365やGoogle Workspaceのライセンスをすでに所有している企業もあり、急なテレワーク環境であっても全社展開のしやすさから、特にMicrosoft TeamsやGoogle Chatの活用が進んでいます。Slackについては、もともとエンジニアを中心に利用が広がり、現在では、企業の標準的なコラボレーション基盤として採用している企業もあります。

Microsoft 365の「Microsoft Teams」

 「Skype for business」の後継として登場したMicrosoft Teamsは、インスタントメッセージングとしてのチャット機能だけでなく、通話やオンライン会議、ファイル共有、Officeアプリ連携などの機能が備わっています。チャットで画像やファイルの共有はもちろん、作成中の「Microsoft Word」や「Microsoft Excel」などのアプリケーションを共有し、また複数人との同時編集など、Officeアプリケーションとの柔軟な連携が可能な点も特徴の一つです。

 一般法人向けのシンプルなライセンス「Microsoft 365 Business Basic」から、脅威対策や情報保護まで可能な大企業向けの「Office 365 E5」まで、どのライセンス形態であってもMicrosoft Teamsが利用できるため、何らかの契約をしている企業であれば、すぐに全社導入が可能です。

 無償版のMicrosoft Teamsであってもチャット機能があり、パートナー企業などを含めた社外とのチャットコミュニケーションが可能になるなど、汎用(はんよう)性の高いチャット機能が特徴です。

【コラム】Microsoft TeamsとSkype for business、何が違うの?

 Skype for Business は、法人向けに2011年から提供されてきた「Microsoft Lync」の機能を移管した上で2015年に登場しました。オンラインで利用可能なSkype for Business Onlineは、インスタントメッセージや在籍確認のためのプレゼンス、Web会議や画面共有機能など、Microsoft Teams同様に豊富な機能が備わっています。

 ただし、ファイル共有機能や必要な相手に通知するメンション機能、メンバー管理などは十分でなく、現在MicrosoftはMicrosoft Teamsへの移行を推奨しており、Skype for Business Onlineは2021年7月31日をもってサポートを終了することがアナウンスされています。社内外のコミュニケーションを円滑にするツールとして一時代を築いたSkype for Businessですが、これからはMicrosoft Teamsが新たな時代のコラボレーションツールとして期待されます。

Google Workspaceの「Google Chat」

 「G Suite」がGoogle Workspaceとしてリブランドされ、そのライセンスに含まれているチャットツールがGoogle Chatです。Google Workspaceが持つ各種機能、例えば「Gmail」や「Googleカレンダー」「Google ドライブ」、オンライン会議ツールの「Google Meet」はドキュメントやスプレッドシート、スライドなどとの連携が容易で、旧G Suiteを契約していた企業であればスムーズな全社利用が可能です。

 Gmailからすぐにメンバーとチャットができるなど、利便性の高さが大きな特徴です。また、AI(人工知能)を活用したbot機能がサードパーティー製も含めて手軽に利用できるなど、他サービスとの連携も容易です。例えば、Googleが提供するMeet botを適用すれば、「今日の予定は?」とチャットに書き込むだけで、botがGoogleカレンダーから予定を抽出し、表示します。「Salesforce」の情報を検索できる「Salesforce bot」やGitHubプロジェクトに関する更新情報を受け取ることが可能な「GitHub bot」、「Zoom」のテレビ会議を開催する「Zoom bot」など、さまざまなbotが用意されています。

 なお、Google Workspaceで最も安価な「Business Starter」ライセンスでは、過去履歴の有効/無効設定や招待状の自動承認、ドメイン外のユーザーとのチャットといった機能は利用できないため、注意が必要です。

Slack

 Slack Technologyが提供するビジネスチャットツールで、拡張性の高さからエンジニアを中心に利用が進んでいるツールの一つです。Microsoft TeamsやGoogle Workspaceのように、メールやスケジュールなど、他の機能とバンドルして提供されるソリューションとは異なり、あくまでもビジネスチャットに特化したツールです。外部との柔軟な連携が可能で、日本国内でも利用が進んでいます。Slackコールと呼ばれる音声通話やビデオ通話機能もあり、チャット以外のコミュニケーションも可能です。

 Slackの大きな特徴は、拡張性の高さです。Microsoft 365やGoogle Workspaceが提供する各種機能との連携はもちろん、外部サービスとの豊富な連携が可能なアプリを多数提供しており、「Slack App Directory」から必要な連携機能が簡単に入手できます。社内で利用しているさまざまなツールをSlackと連携させることで、単なるチャットツールにとどまらない、業務インタフェースの中心的な役割としても活用できるツールと言えます。

 個人はもちろん、組織やプロジェクト、顧客別といったチャンネルを個別に設定することで話題が簡潔に整理できるだけでなく、必要な情報にたどり着くための検索機能が備わっている点も特徴の一つです。無償プランも用意されていますが、閲覧できるメッセージ件数に制限があるだけでなく、ビデオ通話が1対1ユーザーのみに限定されています。

Teams、Google Meet、Zoom、3大オンライン会議ツールの特長まとめ

 またチャットツールとともに利用が進んでいるのが、音声と映像を使ったリッチなビデオコミュニケーションを可能にするオンライン会議ツールです。従来は、本社と支店間など遠隔地同士のコミュニケーション手段としてビデオ会議端末を利用してきた企業もあるでしょう。しかし、テレワークに移行するなかで、身近にあるPCなどのデバイスを利用して自宅からでも会議に参加できる環境が求められ、オンライン会議ツールが主役となりました。

 会議ツールの中でも代表的なのが、Microsoft TeamsやGoogle Meet、そしてWeb会議専業のベンダーが提供するZoomです。

Microsoft Teams

 Microsoft Teamsのオンライン会議機能は、最大300人が参加でき、無償でも有償版と同じ規模での会議開催が実現できます。Outlookはもちろん、Googleカレンダーでの会議予約が可能で、会議招集のためのURLが発行され、そのURLをクリックするだけで会議に参加できます。

 背景設定や画面共有、ホワイトボード機能、会議メモといった、テレワークに有用なオンライン会議機能が備わっています。また、英語対応のみではあるものの、Web会議でのやりとりに関する議事録作成が可能なライブキャプション機能もあります。

 Microsoft 365を契約済みの企業であれば、セキュアな環境でオンライン会議が手軽に始められるため、全社的な共通コミュニケーション基盤として利用されているツールの一つと言えるでしょう。ただし、無償版はレコーディング機能や電話会議機能が利用できず、一般公衆回線網での外部との電話会議も一部のライセンスのみに提供されています。

Google Meet

 Google Meetは、Google Workspaceに含まれるオンライン会議機能で、以前は「Google Hangouts」と呼ばれていたサービスです。PCで利用可能な専用デスクトップアプリケーションを提供する他のサービスとは異なり、Webブラウザで全ての機能が利用できる点が特徴です。Google MeetはWebブラウザさえあれば利用できるため、参加者の環境を意識せずに会議が進行できます。なお、スマートフォンからのアクセスはモバイルアプリが必要です。

 ホワイトボード機能や画面共有、アンケートおよびQ&A機能、ノイズキャンセリングなどの機能を持ち、会議の長さは最長24時間まで。GoogleカレンダーにGoogle Meetへの参加ボタンが表示されるなど、Googleが提供する各種サービスとの親和性の高さも大きな特徴の一つです。ただし、Googleのアカウントを持っていなければ参加することができないため、外部の人に参加を促す場合はGoogleのアカウント登録が必要です。

 ライセンスによって同時に参加できる人数の上限が決まっており、最大250人までの参加が可能です。またレコーディング機能や動画ファイルをGoogle ドライブに保存する機能も一部のライセンスでは制限されています。なお、バーチャル背景機能などは備わっていません。

Zoom

 Zoomは、Web会議専業ベンダーであるZoom Video Communications, Inc.が提供するWeb会議ツールです。最大1000人がミーティングに参加でき、最大49人のビデオを画面に表示させつつ、HDビデオと高音質なオーディオで会議が実施できます。無償版には時間制限はあるものの、豊富な機能が備わっていることから、ビジネスユースはもちろん、個人ユースでも利用されています。Web会議を一気に広めた立役者として認知度が広まっています。

 録画機能や画面共有機能、ホワイトボード機能、ブレークアウトルーム設置、バーチャル背景機能、リモートでのキーボード・マウス制御機能など機能も豊富で、使いやすいシンプルなインタフェースがユーザーからの支持を得ています。当初課題となっていたセキュリティ機能も充実してきており、他社製品との連携も柔軟で、Google ChatやSlackなどからZoomを呼び出して利用することも可能です。

 グループチャットや履歴検索、ファイル転送などのチャット機能も充実していますが、会議中では利用機会があるものの、Zoomをチャットツールとして日常的に利用している企業はまだ少ないのが現状です。

 コミュニケーション基盤としてMicrosoft 365やGoogle Workspaceなどに含まれるツールを中心に利用し、現場のニーズからSlackとZoomを組み合わせるという選択肢を採用している企業もあります。コミュニケーション基盤は、在籍する全従業員が利用するアプリケーションであるため、使い勝手の面が生産性に影響することもあります。どんなツールが自社にとって最適なのか、改めて考えてみたいところです。

著者プロフィール:小山新吾(VTVジャパン 経営企画室 営業企画チーム)

2005年5月にVTVジャパンに入社。現在大阪オフィスで勤務。営業職を経て、2013年に営業企画チームに配属。メールマガジン「VTVジャパンメールニュース」の編集長として、オンライン会議やビデオ会議、Web会議、周辺機器など、ビジュアルコミュニケーションにまつわる最新情報やリアルな現状を毎月1回配信中。


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