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「Teams依存の情報共有」が組織をダメにする? 情弱組織にならないためのツール活用法

従業員それぞれが、知識やノウハウ、経験から得たベストプラクティスを組織に循環させる。それこそが情報共有だ。しかし管理者や組織のトップはビジネスにおける成果ばかりを見て、組織を強くしようと情報共有に励む従業員の取り組みは評価されにくいのが実情だ。

» 2021年09月13日 07時00分 公開
[太田浩史内田洋行]

 ITツールによってより広い範囲での情報共有が可能となり、日々の業務コミュニケーションがデジタル化、データ化されることで情報伝達が容易になる。「Microsoft Teams」などのコミュニケーションツールには、従業員同士のやりとりや知識、ノウハウがデジタル化され、蓄積されている。

 しかしながら、利用範囲が限られた部署や部門に閉じられていては、せっかくの有用な知識やノウハウも組織全体で共有できず、デジタルツールの活用メリットを最大限に享受できない。

“情強組織”はやっている 普通の企業と差がつく取り組み

 こうしたセクショナリズムによって組織間の情報共有が進まず、「他の部門が何をやっているのかが分からない」といった声が聞かれる。原因の一つとして他部門の業務に対して従業員が無関心なことが考えられるが、関心を持っていたとしてもそもそも組織全体で共有されていなければ情報を得ることもできないはずだ。

 従業員それぞれの業務内容や関心事、知識、ノウハウが社内に広く共有されている状態が望ましいが、それを実現するのは容易ではなく、そうした組織文化を作るには時間を要することもある。

 乗り越えなければならないのが「知識やノウハウを形式化するスキルやツールの使い方の習得」や「知識やノウハウを共有し合う社内文化の醸成」だ。

 近ごろの面白い傾向だが、ITツールの導入に合わせて「文書の書き方」に関する社員研修に興味を持つ企業が出てきている。コミュニケーションツールでやりとりされる情報をいかに有益なものにするかに注目が集まっているようだ。チャットによるコミュニケーションが増えたことで、簡潔で分かりやすいテキストを書くスキルがこれまで以上に必要になったのだろう。

 また、情報伝達手段の一つに、動画を使って知識やノウハウを共有しようという取り組みも増えてきた。テキストよりも動画の方が分かりやすく、手軽に伝えられるというメリットがある。

 Microsoft 365に含まれるツールだと、「Microsoft PowerPoint」の他、「Microsoft Stream」にも動画作成機能が備わっている。Microsoft Streamで作成した動画をそのまま社内に共有することも容易だ。こうしたツールも情報共有方法の一つとして使える。

 さらにMicrosoftは、2021年9月7日(米国時間)にブラウザで動画の作成、編集ができる「Clipchamp」を買収すると発表した。Microsoftは「ClipchampはMicrosoft 365の体験を拡張するのに適している」とし、買収の背景には動画を使った情報共有が広がる将来を見据えた動きがあると思われる。

PowerPointの「スライド ショーの記録」でナレーションを含めたプレゼンテーションの記録が可能。エクスポートして動画ファイルとして保存することも可能だ(出典:キャプチャー画面を基にした著者作成の資料)
Microsoft Streamを利用して画面を記録しながら説明する様子を動画として残すことができる(出典:キャプチャー画面を基にした著者作成の資料)

 ツールの使い方は学習できても、社内に知識やノウハウを共有する文化を作るのは容易ではない。そうした場合には「Yammer」や「Microsoft SharePoint」を使えばよい。Yammerは従業員が自由にコミュニティーを作成でき、気軽に情報を発信できる。インターネットで見つけた気になるニュースや参考になった記事などを共有することも簡単だ。

 しっかりと情報をまとめて共有したいのであればSharePointの利用をお勧めする。以前からMicrosoft 365を利用していた人の中には、SharePointと聞くだけで「難しそうだ」と感じる人もいるかもしれない。しかし、現在主流になっているモダンサイトは操作方法は簡単で、記事を作成し情報をまとめるといったレベルであれば、触りながら操作を覚えられる。近ごろは従業員がSharePointを利用してサイトを作成し、社内に情報を共有するという企業事例も増えてきている。

SharePointで作成された共有サイトの例。ここでは社内のメンバーが作成したMicrosoft 365の便利な使い方の記事が共有されている。さらに記事がYammerで共有されることで、社内に広く伝えられる(出典:キャプチャー画面を基にした著者作成の資料)

 YammerとSharePointは簡単に利用できるが、Microsoft Teamsなどのツールと同じくらい使われているかと言えば、まだそうではない印象がある。

「情報を共有し合う文化の醸成」を阻害する要因とは

 このように知識やノウハウの共有方法を身に付けたとしても、そうした取り組みを長続きさせるには社内の文化が鍵になる。

 ある従業員が情報共有を円滑にする仕組みを作ったとしても、それが業務の成果として認められにくい傾向がある。組織は従業員に与えた主業務に重きを置く。こうした古い組織文化が新しい取り組みを阻害する要因となる。

 この課題を乗り越えるためには、マネジャーの理解が重要だ。組織単位で情報共有がうまくできている企業では、組織のトップやマネジャーが従業員に対して繰り返し知識やノウハウを共有することの意義をメッセージとして発信し続けている。

 共有された知識やノウハウに対して従業員同士でフィードバックし合うことも重要だ。しかし、フィードバックの中身を見ると間違いや誤りを指摘するものが多く、共感や賛同、感謝といったフィードバックが少ないように思える。これでは従業員の意欲が削がれてしまう。こうした雰囲気を避けるためには、“盛り上げ役”を置き、共有された投稿や記事に対して積極的に反応、コメントすることも効果的だ。

 筆者の経験から、Microsoft 365を利用していても、情報共有で活発に使われているのはMicrosoft Teamsで、YammerやSharePointといったツールもナレッジ共有に有効に働くものだが、それらを効果的に活用できている企業はそう多くないように映る。

 そうした企業には「知識やノウハウを共有し合う社内文化の醸成」といった、ツール導入とは違った観点での取り組みが必要になる。トップやマネジャー、従業員をいかに巻き込んでいくかが重要となり、そのためにはIT部門だけではなく、広報や経営企画など他の部署と協力しながら進めていくことも効果的だ。

 Microsoft Teamsや「Microsoft Office」「Microsoft OneDrive」によって、個人やチームの働き方を効率化でき、YammerやSharePointといったツールによって個々の従業員が持つ知識や情報を組織内でうまく回せるようになり、そうすることで強い組織を作ることができる。従業員同士が積極的に知識やノウハウを共有する文化が根付いたときに、情報がデジタル化される恩恵をさらに強く感じられるだろう。

著者プロフィール:太田浩史(内田洋行 ネットワークビジネス推進事業部)

2010年に内田洋行でOffice 365(Office 365の前進であるBPOS)の導入に携わり、以後は自社、他社問わず、Office 365の導入から活用を支援し、Office 365の魅力に憑りつかれる。自称Office 365ギーク。多くの経験で得られたナレッジを各種イベントでの登壇や書籍、ブログ、SNSなどを通じて広く共有し、2013年にはMicrosoftから「Microsoft MVP Award」を受賞。


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