「10%か、8%か」だけではない。2019年の消費税率引き上げをきっかけに、企業にとっては仕入れや請求書の発行、帳簿の記録を大幅に見直す必要がある大規模なルール変更が待ち構えている。猶予期間や救済策はどうなっているか、順を追って整理しておこう。
2019年10月1日からの消費税率引き上げが確定した。今回の引き上げは一律の税率ではなく標準税率(10%)と軽減税率(8%)が並立する「複数税率」になるのが大きなポイントだ。
これにより、請求書や領収書、帳簿の記載方法が変わるため、特に経理業務とその関連システムに影響が出る。本稿では、税理士 加藤行人氏の解説を基に増税後の経理業務の影響を整理する。
本稿は10月12日に開催されたOBC主催「奉行クラウドフォーラム2018」での加藤行人氏の講演を基にしている。
消費税は現在の8%(消費税率6.3%、地方消費税率1.7%)から標準税率の対象取引で10%(消費税率7.8%、地方消費税率2.2%)、軽減税率の対象取引で8%(消費税率6.24%、地方消費税率1.76%)に変わる。
時期 | 税率 | うち消費税率 | うち地方消費税率 | |
---|---|---|---|---|
現在 | 8% | 6.3% | 1.7% | |
2019年10月〜 | 標準税率対象取引 | 10% | 7.8% | 2.2% |
軽減税率対象取引 | 8% | 6.24% | 1.76% | |
2019年10月からスタートする消費税率変更の後、複数税率に対応した消費税の仕入れ税額控除の方式として「適格請求書等保存方式」(インボイス制度)が2023年10月1日から導入される。
「適格請求書」とは、売り手が買い手に対して正確な適用税率や消費税額などを伝えるための手段として、一定の事項が記載された請求書や納品書その他の書類のことを指す。請求書の作成は、事前に税務署に登録した「適格請求書発行事業者」が行う。「適格請求書等の保存」が仕入れ額控除(注)の要件になる。
注)商品を売って預かった消費税と、買って支払った消費税の差額を国に納めるのが消費税の仕組み。支払った消費税を税金から控除してもらうのが仕入れ税額控除である。
適格請求書等保存方式への移行期間は2019年10月1日から2023年9月30日までだ。
この移行期間の仕入れ税額控除の方式は区分記載請求書等保存方式を採用する。こちらは現行の仕入れ税額控除方式である請求書等保存方式を基本にしながら、標準税率の品目と軽減税率の品目とを区分して、帳簿や請求書に記入することを求めている。
つまり、2023年のインボイス制度導入に向け、経理部門はまず「区分記載請求書等保存方式」で仕入れの税率を記録、帳簿や請求書に記載する。同様に売り上げの中に軽減税率対象品目が含まれているかどうかを調べた上で、区分記載請求書を発行する準備を進めたい。その次の段階として、2023年からの適格請求書発行の準備が必要だ。
自社の商品が軽減税率対象ではないとしても、仕入れにはほぼ確実に軽減税率対象品目が含まれる。
例えば贈答用の食品や会議用の茶菓、弁当などは対象品目になる。これらはほとんどの企業で、交際費、会議費、福利厚生費、新聞図書費などの経費中に含まれているはずだ。加藤氏は「全ての事業者に影響がある」とし、次の点について検討すべきだと述べた。
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