いかに業務を止めずにNASに保管されているコンテンツをDropboxに移動するのか――大きな壁が立ちはだかった。あるプロジェクトはNASのデータ量が数十〜数百GB程度になり、長いと数日もかかるアップロードの間はコンテンツが更新できない上、毎日NASのデータは増え続けていく。
そこで同期用のPCを用意し、Windowsの「robocopy」コマンドを使ってNASから少しずつデータをDropboxに移行させるスケジュールを立て、自動アップロードする仕組みを構築した。全てのデータがDropboxに完全に複製できた時点で一斉にDropboxに切り替える。業務を滞らせることなくデータを移行させるためのノウハウだ。
Dropboxを導入したことで欲しいデータにすぐアクセスできるようになり、現場の働き方はガラリと変わった。
「DropboxはCADデータにも対応するので、タブレットのデータビュワーで設計情報をサクサク確認できます。手元のデバイスで入力や編集、保存も可能です。紙の図面を持ち込む必要がなくなり、事務所から離れた場所や高層階での作業などが大きく変わりました」(小澤氏)
社外とのコラボレーションがスムーズになったことも利点だ。施工現場では複数の企業との情報共有が必要だ。しかし自社サーバへのアクセスを許可するならば厳密なアクセス制御が求められる。入れ替わりが激しい現場で権限付与や廃止を行うことは無理があった。そのためメールにファイルを添付したり、USBメモリなどの外部記憶媒体を手渡ししたりして共有していた。小澤氏は「容量の制限や情報流出のリスクといった問題を抱えていた」と打ち明ける。
Dropbox導入後は、JV構成会社や協力会社にアカウントを払い出すことで、スムーズにコンテンツを共有している。共有はコンテンツへのリンクをメールするだけなのでメール容量を気にする必要もない。閲覧や編集などの権限設定が細かく行えるため、セキュリティやコンプライアンスの問題もクリアできた。
現場ユーザーだけでなく、情報システム部門が得た効果も大きかった。小澤氏は過去データを即座に復元できるようになったと話す。
「試行当初は操作ミスでフォルダを丸ごと削除してしまうケースがありましたが、削除してもすぐに元に戻せます。一般的なオンプレミスシステムではバックアップからリカバリーするのに数時間〜数日かかることを思うと劇的な変化です」(小澤氏)。
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