ほとんど耳にすることもなくなった「ブロードバンド」という言葉。「常時接続」というワードも懐かしい限りだ。憧れのネット環境を「ビービーしよう。」してくれたサービスが終わるらしい。
2019年現在、ネットはほとんど光回線をベースとした高速大容量通信で、出先で使うスマホだってサクサク高速に通信できて動画鑑賞だって快適だ。だが「テレホーダイ」の接続競争に明け暮れていたころ、定額制でいつでもネットを利用できる=「常時接続」環境は憧れ以外のナニモノでもなかった。
ADSLはブロードバンドや常時接続を一気に身近にした。中でも「Yahoo! BB」(現Yahoo! BB ADSL)は、ISP料金込みで月額2280円という破格の料金で登場し、多くのユーザーを快適なネット環境へと誘った。
ついにYahoo! BB ADSLが終了するという。ところがどっこい、まだまだサービスは続くのだ。一体どういうこと?
Yahoo! BB終了のお知らせとあれば、「いよいよサービスも終了なのね」「まだ、やっていたんだ」と思うかもしれない。ソフトバンクは光回線の普及を理由として挙げる。「ソフトバンク光」のサービスエリアも順調に拡大中だ。
ただし、終了するのはADSLサービスの新規申し込みだ。ADSLサービス自体は継続され、終了時期も今のところ未定だ。同社のADSLサービスは92万6000回線で使われている(2018年9月末日時点)。利用中のユーザーに対してサービス終了のアナウンスは特に行われていないようだ。
Yahoo! BBが登場した前後を少し振り返ってみよう。日本でADSLサービスが開始したのは1999年のこと。NTT東西のADSLサービスが広がりつつある中、「イー・アクセス」「アッカ・ネットワークス」「東京めたりっく通信」といったADSL専用の通信事業者が登場した。
定額制(月額5000〜6000円)のADSLサービスによって、常時接続とブロードバンドの普及が加速した。通信速度は下り1.5Mbps。ISDNテレホーダイが128kbps(いずれも理論値)だったことを考えれば、まさに別次元だ。
これらのサービスに遅れること数カ月。2001年6月19日、後発サービスとしてソフトバンクの孫 正義社長(当時)が登壇して直々に発表したのがYahoo! BBだった。まず月額2280円という利用料で他サービスを圧倒し、最大通信速度8Mbps(理論値)をうたったのだ。
街角に多数の販促部隊が繰り出されていたことを覚えている人も少なくないだろう。Yahoo! BBのロゴで飾られた赤いビーチパラソルを広げ、その下のテーブルで契約モロモロを済ませたら、その場でモデムを手渡すというスタイルも画期的だった。
ユーザーは回線工事が済み次第、自宅のモジュラージャックにモデムを接続することで、ブロードバンド常時接続の世界に没入できた。Yahoo! BBは2007年3月にユーザー数のピークを迎え、516万回線を超えた。通信速度は徐々に向上し、最高で下り50Mbpsまで至ったものの、悲しいかなメタル回線の限界に……。
光回線の伸長だけでなく、スマホの普及に伴って固定回線よりもモバイル回線の方が重宝がられるようになったという時代背景もあるだろう。いささか過去を振り返りすぎな感じもするが、一世を風靡したYahoo! BBも、もうしばらくしたら終焉(しゅうえん)を迎えることとなるのだろう。Yahoo! BBが日本におけるブロードバンドの門戸を広げる一翼を担ったとなったのは確かなこと。1つの歴史が終わる、そんな瞬間にわれわれは立ち会っている。
上司X: Yahoo! BB ADSLが終了するという話だよ。
ブラックピット: えっ、サービスが続いていたとは……。「まだ、やっていたの?」と思ってしまいましたよ。
上司X: それは今も利用中の90万オーバーのユーザーの皆さんに失礼というものだよ。
ブラックピット: すみません。
上司X: キミだってかつてはADSLのお世話になっていたろう? どこのサービスを使っていたんだい?
ブラックピット: Yahoo! BBですよ……。顧客情報が流出したとかで、500円の金券が送られてきたのもいい思い出ですよ!
上司X: ああ、そんなこともあったねえ。450万件ものユーザー情報の流出と、それと引き換えに30億円を要求した恐喝未遂事件はセンセーショナルだった。流出した個人情報の値段が500円になったのも……。
ブラックピット: それにしてもADSLがなくなることでネット通信が難しくなる地域もあるんじゃないですか。光回線は100%普及しているわけじゃないでしょうし。
上司X: そうなるとネットは無線というかケータイ回線で利用するってことになるんだろう。4Gのカバー率は99%超えだし、ADSLより高速だし、いずれ5Gも始まるしな。一時代を築いたサービスが終わる瞬間を、しかと見届けようじゃないか。
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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