フリーコメントで詳細な状況を探っていくと、いくつかの興味深い傾向が分かった。
まず、BIを導入しない理由では、大企業を中心に「海外子会社や国内関連会社の情報をタイムリーに収集することが難しい」「全社共通の仕組みで提供できるデータと、各部門独自で管理するレベルのデータに差異がある。これを共通の仕組みで提供するには部門単位でデータの事前処理が必要となり負担が大きく、踏み込めない」といった、BI導入以前のデータ整備の課題が重くのしかかる状況が推察できるコメントが散見された。
BIで扱うべきデータ量や関係部署、組織が多くなると、有効なデータを参照できるようにするための工数は膨大になる。粒度の異なる情報を照合するわけにもいかず、データ整備の工数を各部門で確保することも難しい状況があることが予想される。
この他、全回答者を対象にBIツールの有無にかかわらず「業務データ分析の課題」を尋ねた、3つの特徴的な課題が浮き彫りになった。それぞれ、代表的な意見を見ていこう。
せっかくBIツールを導入したとしても「データサイエンティストが不在。膨大なデータを取り扱ったり統計的なデータを扱える技術者が少ない(スキル不足)」「データサイエンティストが必要だと考えるが、人材育成に時間がかかる」といったデータ分析スキルそのものに課題があり、人材育成が追い付かない点を課題に挙げる声もあった。
いわゆるビッグデータを取り扱っている回答者からは、既存BIツールの性能への課題が挙げられた。
既存の一般的なBIツールで莫大なデータを単独で取り扱えるものはそう多くない。一方でビッグデータ向けデータ基盤「Apache Hadoop」や「Apache Spark」を使って膨大なデータを分析してレポーティングに使う場合、ETL処理に待ち時間があるため、ユーザーが求めるレポート表示のタイミングに追い付かない、という具体的な意見も挙がった。
BIツールを扱うユーザーが見たい情報が多角的渇望大になるにつれ、
「各管理システムが独立しており、データを統合する仕組みがない」という意見も散見された。
こうした企業は、手動でExcelなどのオフィスツールを駆使して処理することも多い。
BIツール未導入企業
「同じような情報を得るために、都度データ加工作業が必要になる」「営業の係数資料などがExcelで管理されており、他の資料と連携が取れない」
このように日々蓄積される膨大な企業データの活用はその大小問わず既に多くの会社で取り入れられているものの、まだまだ課題は多いようだ。しかしデータ活用によって経営状況をスピーディーに可視化し競合優位性を得ていくためにも、このような課題に向き合いながら改善を繰り返し自社に最適な在り方を考えていく必要があるだろう。そういった意味でも近いうちにBIツールを検討する企業は増えていくと予測できそうだ。
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