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さよならサイボウズLive “難民”にならないために考えたい移行のこと

2019年4月15日に約8年間続いた「サイボウズLive」の提供が終了する。サイボウズLiveユーザーは難民にならないためにも移行や対策をどう考えるべきか。考えたい視点とポイントについて説明する。

» 2019年04月01日 08時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

 2017年10月24日、サイボウズはチームや小規模組織向けのグループウェア「サイボウズLive」の終了を発表した。システムの老朽化により、安定したサービスの提供が困難になったためだとしている。

 サイボウズLiveは「セカンドグループウェア」という位置付けで2010年に提供が始まり、200万人を超えるユーザーに利用されてきた。掲示板やカレンダー、チャット機能などグループウェアに必要最低限の機能がコンパクトに備わり、それらの機能が無償で提供されていた。操作も簡単で、誰でも気軽に利用できるというメリットが人気を得てか、企業だけでなくNPO法人や教育機関、PTA、社会人サークルなどにも利用が広まった。そうした背景もあり、サイボウズLive終了のインパクトは大きく、ソーシャルメディアのトレンドランキングで上位に入るほどの話題となった。

図1 サイボウズLiveの終了告知メール 図1 サイボウズLiveの終了告知メール

 サイボウズLiveは約8年にわたって提供され続けてきたが、このように、今まで利用していたサービスが突然終了を迎えるケースは珍しいことではない。2017年にはNTTコミュニケーションズの「Cloudn」の一部メニューの提供が終了し、2018年1月に富士通クラウドテクノロジーズの「NIFCLOUD」(ニフクラ)の専有サーバがサービス提供を終了した。そして2020年1月31日にはマイクロソフトの「Azure Container Service」が「Azure Kubernetes Service」に置き換えられ、サービスの終了を予定している。

 クラウドサービスには、ある日新機能が追加されたり強化されたりといった“うれしい”告知もあるが、その一方で突然サービスを終了するケースもある。クラウドサービスにはもちろん便利な点は多くあるが、オンプレミスのような安定性や安心感といった部分には課題がある。

 今回のサイボウズLiveのサービス終了を受けて、現ユーザーはどういう対応を取るべきだろうか。データ移行、移行先の選定において考えるべきポイントを説明する。

乗り換え計画を実行する前に考えたいデータ移行

 2018年の夏ごろにサイボウズはユーザーアンケートを実施し移行時期について尋ねたところ、2019年1月以降に移行準備を始めると回答したユーザーが圧倒的に多かったという。終了直前まで使いたいと考えるユーザーや年度末のタイミングで切り替えようと考えるユーザーが多いようだ。

 本記事の公開時点ではサイボウズLive終了まで残り2週間余りと迫る。ちょうど今、移行準備や移行先の検討で慌てているユーザーも多いのではないだろうか。サイボウズLiveの終了を機にこうしたツールを利用しないのであれば関係ないが、今後、別のツールに移行するとなれば、まず考えるべきはサイボウズLiveに蓄積したデータ移行だ。最初に、データのエクスポート方法について簡単に整理したい。

 サイボウズLiveには権限設定がないため、各種データのエクスポートはグループメンバーであれば誰でも行える。エクスポート可能なデータは以下の通りだ。

サイボウズLiveよりエクスポートできるデータ

  • ユーザー名簿(CSV形式)
  • イベント(CSV形式)
  • 掲示板(CSV形式、テキスト形式)
  • ToDoリスト(CSV形式)
  • マイカレンダー(CSV形式)
  • チャット(テキスト形式)
  • タイムライン(テキスト形式)
  • 共有フォルダ(一括ダウンロード)

 既に移行先が決まっていれば、エクスポートしたこれらのデータがどこまでインポート可能かを確かめたい。サイボウズLiveの情報全てが引き継げるとも限らないため、事前に確認が必要だ。

 例えば、「Chatwork」は、サイボウズLiveのデータ移行に対応とサービスページには記しているが、注釈を見ると移行できるのは掲示板のデータのみでそれ以外のデータは移行できないと明記している。また、掲示板に添付されたファイルは自動移行の対象外で、手動での対応が必要となるようだ。このようにサービスによってインポートできる情報と移行方法が異なる。

 なお、ChatworkやLINE WORKS、Zoho Connectでは、サイボウズLiveからのデータ移行に関する情報を公開している。こうしたページを参照し、どの機能のどの情報がどこまで引き継げるかを確認したい。

図2 他サービスのサイボウズLiveからの移行特設ページ(Chatwork、Zoho ConnectのWebサイトから抜粋) 図2 他サービスのサイボウズLiveからの移行特設ページ(Chatwork、Zoho ConnectのWebサイトから抜粋)

移行先を決める前に、自組織の移行ポリシーは?

 サイボウズLiveの移行先として考えられるサービスが幾つかある。例えば無償からでも利用できるツールだと、グループウェアであれば「Zoho Connect」「aipo」「GRIDY」、ビジネスチャットツールであれば「Slack」「Chatwork」「LINE WORKS」などだ。こうした選択肢がある中で、移行先を決めるにはどういった視点をもって考えるべきか。ある企業の移行例を基に考えてみよう。

野原興産が優先して考えた3つの視点

 ゴルフ場やテニスコートなどスポーツ施設を運営する野原興産は、縦割りだった従来のコミュニケーションを変えようとサイボウズLiveを導入し、施設ごとにグループを作成してチャットや掲示板の機能を活用していた。

 2017年にサイボウズLive終了の告知を受け、まず心配だったのが今までに蓄積した情報をどこまで保存でき、またそれらの情報をどこまで移行先でも活用できるかであった。情報は資産と考える同社は、情報の保護と活用を優先して移行先を考えたという。また、サイボウズLiveからの移行を機に機能も拡張させたいという考えもあったため、拡張性も移行先を考える上でのポイントとなった。

 野原興産では、「データの保存」「既存データの活用」「拡張性」の3つのポイントを軸に移行先を検討したが、このように、自組織やチームにとって何を優先するかを考え移行ポリシーを明確にした上で次の打ち手を考えたい。

「あれができない、これができない」とならないために

 サイボウズLiveが多くのユーザーに使われた理由の1つに、誰でも簡単に操作できる「使いやすさ」があった。多機能で便利なツールはあるが、重要なのは利用者のリテラシーを考え、それに合ったツールを選定することだ。ツールが変わっても利用者が戸惑うことなく利用できるツールを選定するのもポイントの1つだ。

 機能についてはあれもこれもと考えるのではなく、今の組織やチームでどこまでの機能を求めるか、今の運用において過不足のない機能を備えているかどうかという視点をもって考えたい。有料のグループウェアに移行するにしても、有償製品だからといってサイボウズLiveの機能の全てを備えているとは限らない。例えば、サイボウズLiveとサイボウズOfficeの機能を比較しても以下のように備える機能がそれぞれで異なる。

図3-1 サイボウズLiveとサイボウズOfficeの機能比較表(管理機能) 図3-1 サイボウズLiveとサイボウズOfficeの機能比較表(管理機能)
図3-2 サイボウズLiveとサイボウズOfficeの機能比較表(スケジュール管理、ファイル管理) 図3-2 サイボウズLiveとサイボウズOfficeの機能比較表(スケジュール管理、ファイル管理)
図3-3 サイボウズLiveとサイボウズOfficeの機能比較表(その他の機能) 図3-3 サイボウズLiveとサイボウズOfficeの機能比較表(その他の機能)

 例えば、サイボウズLiveでは掲示板に書き込みがあった場合に、その情報をメンバーへメールで通知する機能が備わっているが、サイボウズOfficeではカスタムアプリ機能を利用する必要がある。カスタムアプリ機能を利用するには「プレミアムコース」を契約する必要があり、それによって利用料金も変わってくる。このようにサイボウズのグループウェアであっても「できること」と「できないこと」があり、基本機能として全て備わっているわけではない。「有償製品だから、当然標準機能として備えていると思っていた」とならないためにも、求める機能を整理して考えたい。

 また、必ずしも1つのサービスに絞る必要もない。例えば、グループウェアとチャットツールでそれぞれ別のサービスを利用するなど、機能ごとにツールを分ける考え方もある。コストを抑えたければ無償サービスをベースにし、足りない機能は別途有償サービスを使って補うという考えもできる。機能や使い勝手、コストと移行先を考えるうえで幾つかの視点があるが、どれを重視するかは移行前にしっかりと考えたい。心配であれば、製品の中にはトライアル期間を設けている製品もあるため、操作性や機能を確かめるには、こうしたサービスを活用し試用してから考えてみるのもいいだろう。


 先にも説明したが、サイボウズが実施したアンケートを見ると、終了直前になって慌てて対応するユーザーが増え、問い合わせ窓口が込み合うことが予想される。「移行データが少ないから、終了間際でも大丈夫」と考え、後になって必要なデータが欠けていたとならないためにも、余裕をもった準備を考えたい。

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