日本企業のクラウド利用は進んでいる。なのに、どうにもコスト削減に結びついていない上にIT部門は煩雑なExcel仕事が増えがちだという。日本企業のITインフラの現状と課題を取材した。
企業ITのクラウド移行は進んだが、クラウド移行の主目的である「コスト削減」を十分に達成した企業はわずか16%しかいない――。日本企業のクラウド利用状況に関する意外な調査レポートが公開された。
この背景には、日本企業特有の問題が潜んでいるようだ。調査結果を公表したモビンギに話を聞いた。
モビンギは独立系調査会社アイ・ティ・アールと共同で「国内企業におけるクラウド利活用状況と現有課題」と題した調査レポートを発表した。
調査は2019年3月に行われたもの。年商1億円以上かつ従業員数100人以上で、IaaSやPaaSを利用する企業を対象とした(有効回答数:946件)。
それによると、自社システムのクラウド化の割合は40%以上とする回答が半数以上だった。またクラウドを利用するきっかけとしてはオンプレミスのシステムをクラウドに移転したことを挙げる企業が約6割だった。
クラウドで利用しているサービスでは「仮想マシン」が47%、次いでブロックストレージ(31%)、API管理(29%)が続いた。コンテナは11%にとどまった一方で、サーバレス/FaaS(Function as a Service)を利用すると回答した企業は22%だった。
仮想マシンの比率が高いことから、既存システムをIaaSとしてのクラウドに移行したものの、システムのクラウド最適化よりも、まずはFaaSなどの新しい取り組みを推進する状況が見て取れる。コンテナ技術を利用してクラウド最適なシステム構成を実現するような取り組みは進んでいない。
モビンギの石田知也氏(Sales部門バイスプレジデント)は「私の経験からするとコンテナ技術の採用は海外でコンテナ化したシステムを日本で導入するケースがほとんど。コンテナ技術は保守運用の技術的な難しさもある。運用をSIに依存することが多い日本企業では特にコンテナ化は実現しにくい」と状況を分析する。
コンテナ技術を導入するスキルを持つSIがまだ少なく、クラウド移行に際してもクラウド最適な提案を受けられない企業が多い状況が考えられる。こうしたことから、クラウドネイティブ化によるコスト削減や効率化は今後数年の課題となるとモビンギでは見ている。その理由はどこにあるか。
従来、IT環境を内製化できる企業のみがクラウドネイティブ化の恩恵を受けていたが、Kubernetesをはじめとするコンテナ技術が自律型の自動運用技術の開発を進めていることから、モビンギの小路剛広氏(営業/マーケティングディレクター)は「おそらくこの数年で既存環境のクラウド最適化が進み、その間にコンテナなどのクラウドネイティブ技術が進展する」と予測する。今後SIによる運用支援が不要な状況が生まれれば一般企業にもコンテナ技術が普及するとの見通しだ。
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