Slackのもう1つの特長は、Slackのアプリ連携機能によって、外部の業務システムと各チャンネルを連携させ、「人をつなげるだけでなく、多くの業務もつなげる」ことだ。
例えば「Salesforce」と任意のチャンネルをつなぐことで、「SlackからSalesforceの商談データを更新」という操作が可能になる。その他、「Google drive」とつなげた場合には、SlackからGoogle driveに格納されたドキュメントを共有したりコメントしたりできる。ユーザーはGoogle driveもSalesforceも立ち上げることなく、Slackをハブにして業務を進められるのだ。
また、一部の作業を代行する固有のカスタムbotを構築し、フローの中に組み込めば、業務はよりシームレスにつながる。水越氏は、プライベートチャンネルと、Google drive、Salesforce、さらにカスタムbotを連携させて、顧客に提出する提案書の共同作成と、顧客先に向かう商談メンバーの招集、商談情報の更新など、営業活動に必要な行程をSlackで完結させる例を示した。
作業の基点となるのは、営業メンバーが特定顧客をサポートするプライベートチャンネルだ。まず、ある営業担当者が、他の担当者のフィードバックを得るためにチャンネルに提案書を投稿する。このとき提案書はSlackから Google driveに保存され、共有される。Google drive にアクセス権がない営業メンバーには、専用のカスタムbotがその旨を通知し、アクセス権付与のプロセスに入れる。
商談の日程を決める段階に進むと、ミーティング用のカスタムbotが参加予定メンバー全員に「◯◯社でのミーティングを行う」ことを通知し、一方で全員の空き時間を参照して候補日時を導き出す。候補日時を選べば各メンバーのスケジューラーが押さえられ、ミーティングの設定は完了だ。実際の商談フェーズでは、前述したようにSlackチャンネルの操作だけでSalesforceの商談情報を更新できる。
デモでは、カスタムbotの例として会社のKPIを投稿するbot、人事チャンネルに従業員の勤務予定と実際とのギャップを通知する勤怠監視botの例も紹介された。ヘンダーソン氏は「トイレの待ち時間を知らせるカスタムbotもある」と付け加えた。操作はPCだけでなく、スマートフォンでも可能だ。
ちなみに、Slackに蓄積された大量の情報は、チャンネルを横断して共有、検索可能だ。人名で検索するとメッセージ、ファイル、チャンネルの検索結果が表示される。特定のファイルを探したい場合は、ファイル名だけでなく、コンテンツの全文を対象にキーワード検索ができる。検索された結果を、投稿者、投稿チャンネル、日時などで絞り込めるのも特長だ。
中小企業を中心にシェアを伸ばしてきた印象の強いSlackだが、同社は、オラクルやIBMをはじめとするグローバルな大企業、国内の日経、ヤフー、近畿大学、DeNAなどの大手企業・組織でも実績があるという。Slackを使うアクティブユーザーは1日当たり1000万人上り、普及率が高いためとしている。
代表的なユーザー事例としては、2018年10月にSlackの本社間接部門での導入に踏み切った武蔵精密工業を挙げた。武蔵精密工業は間接部門の残業時間や申請・承認時間、会議時間の短縮を目的に掲げ、本社間接部門のメンバーを中心にSlackを適用。社内システムとの連携も積極的に進めることで、残業時間などを50%ほど削減することを目指すという。
他にも、社外メンバーとのコミュニケーションやファイル共有にSlackを活用するバンダイナムコの事例、大学の全キャンパス・拠点の職員にSlackを適用し、学部をまたがるコラボレーションを深化させている近畿大学の事例などが発表された。創業130年の老舗メーカー、カクイチの事例紹介では、全従業員が社長と直接コミュニケーション可能なチャンネルを作り、社内のコミュニケーション改善と意思決定の迅速化に成功したというユニークな試みも語られた。
「企業を俊敏にして成功に導くにはやろうとする気持ちと、ツールと、ビジョンがいる」とヘンダーソン氏。Slackはこのコアバリューと姿勢で、日本や世界の企業文化を変えようとしている。
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