RPAの導入事例が増えた今、RPAに抱いていた期待と導入後の現実にギャップがあると感じるケースも少なくない。一体なぜなのか。チェックシートで導入時の状況を振り返ることで、その理由が見えてくる。
RPA(Robotic Process Automation)という言葉を耳にするようになって久しい。今さら「RPAとは」ということをお話しても関心を持たれる読者は少ないだろう。既に、RPAを検討・導入している企業も多く、今求められているのは「どうすればRPAで更に効果を挙げられるのか」「導入時に何に留意すれば良いのか」といった活用を見据えた実践的な情報だ。
筆者は、オデッセイという企業で、人事部門向けにコア人事システム(人事/給与システム)やタレントマネジメントなどの人事システムだけでなくRPAのソリューションも展開しており、RPAを検討・導入するさまざまな企業をみてきた。
本連載では日本におけるRPAの変遷をたどり、導入企業が抱く期待と導入後の現実を明らかにする。さらに、現在の状況をふまえて、RPAを活用し効果を上げるための導入方法や効果を維持するために必要な方策などを整理してみたい。後半では、RPAを中心にしたオフィスの業務が今後どのように変わっていくのか、近未来のオフィスについても考える。
いつから日本でRPAが使い始められたか正確なところは分からない。私の感覚ではRPAが日本で広く認知されたのが2017年、多くの企業が導入しはじめたのが2018年といったところではなかろうか。
2017年から多くの外資系RPAベンダーが日本法人を設立し始めた。ツールの選択肢が増える一方で、ユーザーは各種RPAツールの違いが分からず、何を選べばよいかも分からないので、セミナーに参加し情報収集に明け暮れた。筆者もRPA関連のセミナーで講演しているが、2017年に開催したセミナーでは、案内開始直後から申し込みが増え続け、数日で満席になったのを記憶している。まさにRPAに対する世間の関心が急速に高まった1年だったといえる。
日本にRPAが浸透し始めた2017年から2年。現在は多くの企業がRPAを導入し、その事例が紹介されることも増えた。ユーザーにおけるRPAの経験値が上がり、セミナーなどで収集した情報だけでは分かり得ないことも体験として蓄積され、RPAの強み、弱みが見えてきたのが現在というところだろう。
ガートナーが提唱する「ハイプ・サイクル」(図1)でいえば、RPAは「黎明(れいめい)期」「流行期」を過ぎて「幻滅期」に入ったタイミングではないだろうか。「幻滅期」という言葉からはネガティブな印象を持たれがちだがそうではない。RPAの実態を理解した上で、適切な活用方法やより効果的な導入方法が検討され、一段と導入が進んでいく時期と理解している。「ハイプ・サイクル」でも「幻滅期」を経て「回復期」「安定期」へ向かうと示されている。
2017年ごろより、日本中のホワイトカラーの期待を一身に受け、トレンドとなり一気に普及したRPAも現在「幻滅期」に到達した。そのRPAの「期待」と「現実」を現在の認識で整理してみたい。
まずは期待だが、これまでにRPAの導入に踏み切った企業は、以下のような効果を見込んでいたのではないだろうか。実際に、いずれの期待も間違いではなくRPAで実現できることばかりである。
<期待>
では、現実はどうだったのか。キーマンズネット編集部が2018年11月26日〜12月21日に行った「IT活用実態調査」の中のRPAに関する調査結果からピックアップしてみた。
<現実>
これらを整理すると、RPAを導入すれば、大幅な業務の効率化が図れて人件費や労働時間を軽減できそうだと期待して導入したが、ロボットの開発はそれほど優しくはなく、手間がかかる上に、導入後も継続利用するためのメンテナンスが必要となり、期待した業務削減効果が出ていない、ということであろう。これらの現実に直面し落たんしているユーザーも多いかもしれない。
しかし、これらのことはある程度事前に想定できたのではないだろうか。以下にチェックポイントを用意してみた。導入前や導入中を振り返ってチェックして頂きたい。
チェックはどのぐらい付いただろうか。全て「Yes」とチェックされた読者の方は、きっと期待通りの導入効果が出ているだろう。既にお気付きの方もいらっしゃると思うが、RPAも万能ではないので、ユーザー側の考え方や、導入方法などによって導入後の効果が大きく左右されてしまうのである。次回は、これらを整理し「RPAを効果的に導入する4つのポイント」について述べてみたい。
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