紙のタイムカードをやめて勤怠管理システムを導入するとして、業務内容や従業員の好みも違う状況で何を選ぶのが最適でしょうか。現在の状況や従業員の勤務形態、持つ設備の状況によって最適な選択肢は異なります。チャートを織り交ぜ、検討時に注意するポイントを紹介していきます。
本連載では紙のタイムカードから勤怠管理システムへ移行するメリットや、勤怠管理システムの種類を説明してきました。今回が最終回です。
第1回では、紙のタイムカードから勤怠管理システムに移行するメリットを紹介しました。紙のタイムカードは、現在も多くの事業者に使われていますが、働き方改革で時間管理の適正化が求められていることから、従来よりも厳密な管理が必要になってきています。そのような中で、紙のタイムカードでは「できているようでできなかったこと」がどのくらいあるのか、あるいは勤怠管理システムへの移行で業務がどう変わるかを紹介しました。
勤怠管理システム導入のハードルは以前に比べて低くなっており、小規模な事業者や、コンピュータに詳しくない人でも導入しやすくなっていることも紹介しました。
第2回では、紙のタイムカードに代わる勤怠管理の製品を、以下の3つのカテゴリーに分け、それぞれの特徴を紹介しました。
今回はシリーズ最終回です。第2回で紹介したカテゴリーをさらに具体的に落とし込んで、「どのような事業者にどのカテゴリーの製品が適しているか」「各製品カテゴリーの中では、どのような観点で製品を選べばよいか」を見ていきます。
自社に合った製品カテゴリーを選ぶことは重要です。自社に合わない製品カテゴリーを選んでしまうと期待した効果が得られなかったり、使い続けられなかったりするためです。例えば複数拠点を統合管理したい場合にクラウド勤怠管理システム以外を採用してしまうと、遠隔地のデータの管理が大変になります。
さらに同じカテゴリーの中でも何を選ぶべきかはいくつかの勘所がありますので、選び方のポイントも紹介していきます。
ここからは、どのような事業者にどのカテゴリーの製品が適しているかを見ていきましょう。どのカテゴリーの製品を導入しても、紙のタイムカードより管理効率がよくなり、勤怠の情報を把握しやすくなることに変わりはありませんが、拠点の状況や現場のIT浸透度、業務内容や従業員の移動の有無によって、選ぶべき製品は大きく異なります。これを、シンプルなチャートで表すと図1のようになるでしょう。
複数の拠点をまとめて管理したい場合はクラウド勤怠管理システムが最も適しています。月の途中で、拠点を問わずに従業員の勤怠や残業時間をチェックする用途にも適しているでしょう。利用者から見たときには、拠点が異なっていても1つのクラウドサービスで管理できるため、忙しい部署に応援に行ったり、何らかの業務で一時的に他の拠点で勤務するような場合も効率良く集計できます。
他の製品カテゴリーの場合、月の途中で遠隔地の勤怠を確認、編集、出力したい場合、メールなどの手段でデータを送ってもらう必要があります。日によって打刻する拠点が変わったり、出勤と退勤で拠点が異なる従業員がいる場合にも対応できません。日々の勤怠が各拠点内で完結するならば、クラウド勤怠管理システム以外を選択しても大丈夫でしょう。
現場の従業員に年配の方が多い場合などで、タブレット端末への拒絶感が強い場合は「紙のタイムカード以外を用いるタイムレコーダー」がいいでしょう。従来のタイムレコーダーと操作感が似ており、勤怠管理システムを使ったことがない人にもなじみやすいからです。この場合も打刻の操作などは「紙」に近いかも知れませんが、記録はデータ化できますから、打刻後の管理は効率良く行えるようになるでしょう。
現場の従業員にタブレット端末への拒絶感がないのであれば、いっそ「タイムレコーダーアプリ」を選択する方法が考えられます。既にタブレット端末を導入してレジアプリや予約管理アプリなどを使っている場合は、そのタブレットをそのまま勤怠管理に流用できますから、設備コスト削減の面でも効率的です。店舗などの機器を置くスペースを多く取れない場合にもタブレットは有効でしょう。
ここからは、各カテゴリー内でどのような観点で製品を選べばよいかを紹介します。選び方のポイントは以下の4点です。
導入を検討する製品が自社の集計ルールに対応しているか、は始めにチェックしておくべき重要なポイントです。実績のある製品なら、休憩、残業などの基本的な集計ルールには対応しています。
しかし以下のような機能が必要な場合、製品によっては対応していないものもあるので、注意が必要です。
料金プランによって利用できる機能が異なる場合、適切な料金プランを選ばないと、必要な機能が使えなかったり、逆に使わない機能に費用がかかってしまったりします。また、人数に応じて課金するシステムの場合、従業員数の増加により月額が上がるリスクがあることにも注意が必要です。
実績も比較のポイントとして重要です。多くの利用実績がある製品は必要な機能が充実していることが多く、また多くの人に利用されるため、不具合が少ないことが期待できます。実際、筆者らも多くのユーザーに使っていただく中で機能を改善したり、不備を修正したりすることがありました。既存利用者が多く、不具合対応が迅速な製品であれば、導入後の運用も安心できるでしょう。
実際に実績を推し測る際には次の情報を把握すると参考になります。
集計ルールへの対応以外にも自社の勤怠管理に必要な機能があるか、確認が必要です。例えば以下のような機能は、搭載している製品とそうでない製品があります。
最後に、各カテゴリーの具体的な製品を紹介します。
第2回で説明した通り、このカテゴリー内では実績の面から定番といえる製品は多くはありません。第2回では、紙以外のタイムカードを用いるタイムレコーダーとして、アマノの「TimeP@CK iC」(リンク)を、タイムレコーダーアプリとしてネオレックスの「タブレット タイムレコーダー」(リンク)を紹介しました。
TimeP@CK iCは、従来のタイムレコーダーと似た操作感なので、現場にタブレット端末へのアレルギーがあっても利用しやすくなっています。また、社員証などにICカードを用いている場合は、打刻用カードとして流用することができます。
タブレット タイムレコーダー は、高機能であり、一通りの集計ルールに対応しています。また、以下に挙げるような、この製品ならではのユニークな機能があり、それ自体が選定の決め手になる場合があります。
一方、クラウド勤怠管理システムには、実績のある製品が数多くあります。特に、以下の製品は有名です。
どの製品も、基本的な機能はそろっており、機能のラインアップは似ていますが、異なる点もあります。そして、個々の企業のニーズはさまざまであり、自社にマッチする製品とそうでない製品があります。以下は筆者が各社Webサイトで特にPRしていると思われる特徴を抜粋したものです。
製品ごとの特長 | |
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●CYBER XEED すまぁと勤怠(アマノ)《リンク》 | |
最短3日で導入可能 | |
さまざまな帳簿類が出力可能 | |
サポートが充実している | |
●KING OF TIME(ヒューマンテクノロジーズ)《リンク》 | |
シンプルで分かりやすい画面構成 | |
利用する環境に合わせた多彩な打刻方法 | |
導入前後の充実したサポート | |
「LINEWORKS」経由での打刻、「SmartHR」の労務データとの連携など、外部サービスとの連携が充実 | |
●ジョブカン(Donuts)《リンク》 | |
シンプルで、初めてでも使いやすい操作性 | |
変形労働、フレックス、裁量労働などあらゆる勤務形態に対応 | |
電話、メール、チャットによる問い合わせや、初期設定代行サポート | |
必要な機能だけを単独利用できるので、使いやすく、安価 | |
●AKASHI(ソニーネットワークコミュニケーションズ)《リンク》 | |
初期費用無料 | |
マニュアル不要で従業員も管理者もストレスなく使える操作性 | |
PC、iPad、スマートフォンなど、さまざまなデバイスから打刻、管理できる | |
クラウド勤怠管理システムは、主に中小規模の事業者向けで、汎用的な機能を備えるサービスが多いようです。「手前みそ」になりますが、ネオレックスの「バイバイ タイムカード」は、大企業への導入実績が多数あり、企業ごとの高度なカスタマイズに対応している点で、他のクラウド勤怠管理システムと一線を画する特長を持っています。
シリーズを通して、紙のタイムカードから勤怠管理システムへ移行するメリットや、勤怠管理システムの選び方を紹介してきました。
勤怠管理システムに移行することで、紙のタイムカードではできているようでできなかった厳密な勤怠管理ができるようになり、業務が改善します。例えば、残業時間の上限に達する前に労働時間を把握したりすることが、手軽にできるようになります。このような厳密な勤怠管理は、昨今話題になっている働き方改革の観点からも重要です。
紙のタイムカードに代わる勤怠管理システムの選択肢は幾つかありますが、それぞれの製品カテゴリーの特徴や、比較するためのポイントをつかみ、自社に最適な製品を選ぶことが重要です。そうしないと、必要な機能が足りなかったり、不要なコストがかかったりしてしまいます。
本連載が、皆さまの会社に最適な勤怠管理システムを導入する助けになれば幸いです。
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