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アポロ11号とビットコインの不思議な関係:522nd Lap

1969年7月20日、アポロ11号が人類初の月面着陸に成功した。2019年の夏、人類が月面を歩いてから50周年を迎えるというわけだ。当時、生放送でテレビ中継もされたから、読者の中にはリアルタイムでその状況を見た人もいるかもしれない。

» 2019年07月19日 08時00分 公開
[キーマンズネット]

 月面着陸50周年のお祝いムードがある一方で、この夏は暗号資産(仮想通貨)の話題にもことかかない。相変わらずビットコインは乱高下を繰り返し、Facebookが参画する新たな暗号資産「リブラ」は米議会や当局が懸念を抱いて先行き不透明だ。

 「アポロの話題の後に暗号資産の話とか、唐突すぎないか?」と思う人も多いかもしれない。実はこれ、大いに関係のある話なのだ。一体どんな関係があるのかというと……。

 アポロ計画と暗号資産の話題を結び付けて報道したのは、VICEが運営するTech系メディア「MOTHERBOARD」だ。

 まずアポロの話。「アポロ誘導コンピュータ(Apollo Guidance Computer、AGC)」は、1960年代にマサチューセッツ工科大学(MIT)の器械工学研究所(現チャールズ・スターク・ドレイパー研究所)がアメリカ航空宇宙局 (NASA)の要請で開発したものだ。宇宙船の航行機能を自動制御した他、乗船した宇宙飛行士をサポートし航行情報を確認および修正するのに使われた。

 AGCは16ビットのワード長(データ15ビット、パリティ1ビット)で処理する能力を備えたコンピュータで、1秒当たり4万回の計算ができた。月探査船に搭載するため重量70ポンド(約32キロ)未満、サイズも1立方フィート(約0.03立方メートル)未満と軽量小型である必要があった。当時としては高性能だったものの、今となっては超がつくほどの骨董品だ。

 AGCはいまも動作するかはさておき、世界に数台存在する。その中の1台をソフトウェアエンジニアのケン・シュリッフ氏が手に入れた。その後同氏の修理を経て、「現時点で駆動する世界唯一のAGC」となった。しかしアポロの誘導に使うわけではない。何とシュリッフ氏は、暗号資産の代表格ビットコインのマイニングに使うことにしたのだ。

 マイニングを簡単に説明すると、暗号資産の取り引きに必要なブロックチェーンのハッシュ値に関する計算に自分が持つコンピュータパワーを提供し、その対価として暗号資産を得ることだ。世界中でマイニングが実行されているが、10分に1回ほどの間隔でどこかのマイニングの協力者に12.5BTC(7月中旬時点で約1300万円)が支払われる。

 ビットコインのハッシュ値を計算するのにはSHA-256というアルゴリズムが使われる。MOTHERBOARDによると、現在販売中のUSBメモリに似たマイニング専用の「USBスティックマイナー」であれば、1秒間に1300億回のハッシュ値を計算できる。

 それに対してAGCの計算能力は、1回のハッシュ値計算に10.3秒を要する。シュリッフ氏の計算によれば、AGCが1回のマイニングに成功するには400ゼタ(4000垓、垓は10の20乗)秒もの時間が必要だという。ちなみに宇宙の年齢の10億倍だ。

 実はシュリッフ氏、紙と鉛筆のみの手計算でビットコインのハッシュ値を計算したツワモノでもある。その最高速度は1日当たりで0.67回のハッシュ計算だったから、超レトロなAGCとはいえ人間の計算能力がはるか及ばない域であるのは明確だ。


上司X

上司X: アポロ計画に使われたコンピュータをビットコインのマイニングに使ってみたという話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: アポロと暗号資産にどういった関連があるのかと思っちゃいましたよ。


上司X

上司X: マニアの執着心というか何というか……。


ブラックピット

ブラックピット: 面白いことを考える人ですよね。絶対にもうからないのでしょうけど。


上司X

上司X: しかし、早い者勝ちとはいえ、ビットコインのマイニングでそんなに稼げるとはな。国家規模でマイニングを始めてもおかしな話ではない。


ブラックピット

ブラックピット: そういえば「仮想通貨」から「暗号資産」といわれるようになりつつありますね。公共放送のニュース番組でもそう報道していて、「いつの間に変わった?」と思いましたよ。


上司X

上司X: ぶっちゃけ通貨になっていないからな。2020年4月からは法的にも暗号資産って呼ぶことになっている。


ブラックピット

ブラックピット: 僕にはちっとも関係なさそうですけどね。


上司X

上司X: ともかくアポロ計画と暗号資産の、もうけなしの愉快な関係性が分かってよかったということにしておいてくれよ。


川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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