「RPA(Robotic Process Automation)を導入したはいいが、現場で拡大しないと多くの企業が悩んでいる」そう語るのは、かつて住宅設備大手LIXILでRPAの全社展開リーダーを務めた竹内瑞樹氏だ。現在は、オフィスの内装などを手掛けるグッドライフでRPA事業部長を務める。
竹内氏は前職のLIXILで現場開発育成プログラムを作り、現場開発者600人を育成し「自走する組織」体質を作り上げた。現場からは1000体以上のロボットアイデアが寄せられ、ロボット化により今までに業務時間にして15万時間以上を削減してきたという。
RPAを導入しても部分的な活用では効果は限定的だ。RPAの適用領域を拡大してこそ大きな効果を得られる。それには「現場増殖型RPA」に変えることが必要だという。「現場スケール型RPA」の伝道師としても活動する竹内氏が、現場増殖型のRPAの確立法について語った。
本稿は、2019年7月19日に開催された「SoftBank World 2019」(主催:ソフトバンク)におけるRPAテクノロジーズとグッドライフの共同講演「ついに加速が始まる大衆型RPAの構造」を基に編集、構成した。
竹内氏は多くの企業がRPAの組織展開にてこずっている現状を知る。それも導入したばかりの初期段階でだ。竹内氏によると、RPAの適応領域を拡大する際に欠かせない「現場増殖型RPA」を実現するには、次の3つの要素が必要だという。
情報システム部門に任せきりではなく、業務問題を一番よく知る現場が主体となってRPAを開発、運用することで自然発生的にRPAの活用が組織内に広まるというのだ。つまり、この3つを押さえていれば簡単にRPAの活用を拡大できるという。ここからは、3つのポイントについて詳細を説明する。
まずは、現場のRPA開発者を教育する方法だ。現場増殖型RPAを実現するには、現場の従業員が主役となって取り組む必要がある。RPAはやろうと思えば素人でも始められるが、独学だけでマスターできるものではない。非IT部門でRPA開発者を生み出すにはトレーニングが必要で、開発者を育成するには「やらされ仕事ではなく自身が楽しみながら、互いに切磋琢磨し成長できるトレーニングが必要だ」と竹内氏は語る。それには「これならIT部門に属さない自分でもできる」と思わせる研修と継続してロボット開発スキルを学習させる仕掛けが重要だという。
では「これなら自分でもできる」と思わせる研修とはどんなものか。竹内氏はトレーニング内容を構成する上で必要なポイントを6つ挙げた。
実務を想定したトレーニングを実施することで、「これはあの業務で生かせそうだ」と自発的に考えるようになる。これらのポイントを踏まえて、とにかく現場目線の研修を実施することが重要だ。受講生が「これなら自分にもできそうだ」という実感を持てれば、他の従業員にも受講を勧めて、研修が従業員の間で広まるきっかけにもなり得る。
ただ何回か研修を受けただけでは、せっかく良い学習コンテンツを提供しても知識は定着しない。継続して学習させる仕組みも重要だ。例えば「検定試験を受験する」などの目標を設定することで、モチベーションにもなり継続学習につながる。隣の部署の従業員が頑張っている姿を見れば、自部署のメンバーも頑張らなくてはと競争心が生まれる。
教育の次に大切なのが、RPA開発者の支援体制だ。非IT部門によるRPA開発というと「現場従業員が開発して品質を確保できるのか」という不安がある。これを解消するには、情報システム部門が現場部門を支援する関係性を作ることが必要だ。
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