長年の取り組みによって、年間の実労働時間を大幅に短縮した味の素。同社の働き方改革は、次なるフェーズに進む。Boxが担う役割とは。
「働き方改革」を推進する味の素は、年間の実労働時間を大幅に短縮しながら1人当たりの生産性を向上させた。朝方勤務へのシフトや、ペーパーレス化といった個別の施策もそれぞれ効果を上げており、前者は「18時以降に帰宅する社員が4分の1程度に減少」、後者は「9割の紙書類の削減」という結果を出した。
現在は「働き方改革2.0」を進めており、その中で「Box」が重要な役割を担うという。同社情報企画部の金田智久氏は、同社が実践してきた働き方改革とITツールの役割について語った。
味の素は、2010年よりも前から働き方改革に取り組む。長年にわたって、経営主導のマネジメント改革と、従業員によるワークスタイル改革を両輪に、さまざまな施策を打ってきた。外部からも取り組みが評価され、日本健康会議「健康経営優良法人2018(大規模法人部門〜ホワイト500〜)」の認定を受けたり、日本テレワーク協会第18回テレワーク推進賞「会長賞」受賞したりといった実績を持つ。
成果も上々だ。2015年時点で平均実労働時間を1976時間に短縮(同年の厚生労働省調査では、パートを除く一般労働者の年間平均総労働時間は2026時間)し、2016年度からは「働き方改革2.0」と呼ぶフェーズに移行。年間の平均実労働時間を1800時間にする目標の下、取り組みを進める。
労働時間が減ると業務が進まないのではないかという疑問がわく。しかし、金田氏によれば労働時間が短縮しても従業員1人当たりの生産性は向上している。具体的にどのような施策を打っているのか。
2017年の4月以降、7時間35分だった所定労働時間を7時間15分に短縮した。基本給を下げずに20分短縮したため、約1万4000円相当の賃上げを実現した。
さらに勤務時間を朝方にシフトするため、朝8時までに出社すれば朝食を提供し、夕方19時に強制消灯、水曜のノー残業デイには17時に消灯するルールを施行した。同時に、勤務時間を8時45分〜17時20分から8時15分〜16時30分にシフト。従業員の1日を「朝・昼・晩」から「朝・昼・夕・晩」のパターンに切り替え、夕方を自分のための自己研さんなどのために使える時間とした。この結果、18時以降に帰宅する社員は約半数から4分の1程度に減少した。
2017年度から、週に1回出社すれば、どこで仕事してもよいというルールを施行した。申請は上司に前日までに伝えればよい。
またテレワーク・デイを設け、遠隔地での勤務を促進した。従業員がどこでも業務を進められるよう、軽量のバッテリー駆動PCを導入。社外のサテライトオフィスを契約したり、社宅の集合室をサテライトオフィスとして利用できるよう改修したりした。その他、営業所の空きスペース、集会場、自宅をはじめ、どこでも仕事ができるようネットワーク環境も整備。これによって、子育て中の従業員などが気軽に自宅で勤務できるようになった他、台風や大雪などの交通が混乱しているときでも、社外で執務できるようになり、業務がまひすることもなくなった。
一方、本社内ではフリーアドレス化を進め、スペースにゆとりを持ったレイアウトに変更した。13階建てのオフィスビルを1年がかりで1フロアずつ改修したという。その結果、フロア面積の13%を占めていたキャビネットなどの倉庫スペースを2%にまで縮小でき、執務スペースは全体の35%から50%にまで広がった。
どこでもオフィスや、フリーアドレス化の展開とともに、ペーパーレス化も進めた。「紙を使うことによる業務の制約は、すなわち働く場所の制約になる」と金田氏。書類ごとに「本当に保管しなければならないのか」を再考し、必要なものは電子化を促すとともに、どうしても紙で残したいものを外部倉庫に移動させたという。その結果、9割の書類を削減できた。
従業員に軽量PCとヘッドセットを配布し、PCの持ち出しを許可した。また会議スペースには高機能ホワイトボード、スピーカー、マイクを常備し、Skype for BusinessによるWeb会議を推奨した。セキュリティの配慮も余念がなく、ローカル環境へのデータ保存を禁止するなどのルールを設け、ユーザーのログを取得するなど管理の体制も強化した。
なお、同社は働き方改革に関する情報を共有するためのサイトを設けており、そこでの従業員によるディスカッションやコミュニケーションを促している。こうした施策によって、1人当たりの売上高は向上し、実労働時間の削減だけでなく、電子メールの数および閲覧時間の削減、ペーパーレス化の促進、テレビ会議の活用促進、会議時間の見直し、帰社時間の早期化といった成果につながった。
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