2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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10年ぶりに労働基準法が改正され、4月1日に施行された改正労働基準法。本改正の対応のために新たに業務ルールを敷かなくてはいけないと、困られている企業も少なくないのではないだろうか。
この法改正をよい機会と捉え、新たに発生した新規業務の自動化促進のため、RPAの導入に力を入れているユニークな企業がある。
開発サービス事業・構築サービス事業・運用サービス事業を提供するITサービスの専門会社である株式会社アイティアイだ。同社では、将来的なグループ会社全体への展開、さらにはクライアント企業へのサービス提供を目指して、2019年より管理部門においてRPAを導入した。
新規業務へのRPA適用からノウハウを蓄積し、人材の効率的な育成、社内への周知というステップへと歩を進めようとしている同社のRPA担当者とRPAが導入された業務部門の部門長に話を聞いた。
1. RPA導入のきっかけは、顧客のRPAプロジェクトへの参画
2. 最初のRPA社内導入プロジェクトは新規業務の自動化
3. RPA運用ノウハウとRPA人材育成を強化し、“”RPA×OCR連携”でDXを拡大させたい
──RPA活用に至った最初のきっかけは何だったのでしょうか。
菰田良介 氏(デジタルサービス部 部長): 当社の事業ではお客様のIT環境の開発・構築・運用のサービスを提供しています。この3つのビジネスのなかでも最も比重の高いのが運用サービスです。サービスを提供しているお客様の中には大手IT企業も多く、主にそのデータセンターの運用を受託しています。
数年前、まだRPAが広く普及していない頃になりますが、ある大手ITベンダーのお客様社内でのデータセンター運用において、業務効率を目的としたRPA導入プロジェクトが立ち上がったのですが、かねてより開発の案件もいただいていた当社も声をかけてもらったのが、RPAに関わった最初のきっかけでした。
そこではロボットの開発のほか、お客様へのハンズオン形式のRPA教育なども対応させていただいております。
──その時の経験が自社内でのRPA導入にも生かされているわけですね。
菰田 氏: そのとおりです。お客様のデータセンターにおけるシステム運用をRPA化するのと同時に、自社内の業務に関してもRPA化していくノウハウの蓄積も進めていきたいと考えていました。
そこで、グループ会社であるクレオに協力を呼びかけ、同社で提供するBizRobo!ベースのRPAツール「CREO-RPA」を今年3月に導入しました。
将来的には、クレオグループの一員として、クレオのお客様に対しても生産性向上を実現していただけるようRPA化を進めていくことも目指していますので、CREO-RPAを自社で活用しながらロボットをつくることのできる人材を育てていきたいという想いもありました。
──現在はどの部署のどのような業務でRPAツールが活用されていますか。
菰田 氏: 今年度より管理部における「有給休暇管理資料作成業務」をRPAにて実施しています。これは、人事給与パッケージソフトから有給休暇の情報をエクスポートし、Excelにて有休管理表へ集計・加工した上で、Wordの経営会議向けのフォーマットへと転記するという作業になります。
──なぜその作業(業務)をRPA化の対象として選んだのでしょうか。
菰田 氏: 最大の理由は新しく発生した業務であるということです。今回RPA化した業務は4月1日に施行された改正労働基準法における「有給休暇5日取得義務対応」のために今年度より取り入れたものです。なぜ新規業務をRPA化の対象業務に選んだかというと、業務プロセスのルールがある程度敷かれている既存業務からRPA化するよりも、業務プロセスがルール化されていない新規業務から着手したほうが進めやすいとの意図がありました。
金子恵一 氏(デジタルサービス部 DSI課 課長): 私は先にお話した大手ITベンダーのデータセンターの運用業務の自動化からRPAに携わっていますが、そこでも既存業務の担当者の一部からは抵抗もありました。
RPAに仕事を奪われるのではないか、という不安を抱く方もいたのです。そうした経験からもそもそも担当者のいない新規業務から始めたほうがいいと考えました。
須賀弘和 氏(管理部 部長): 我々現場部門からしても、RPAの効果などをこれから社内に示していくためにも、まずは取り組み易い今回の有給休暇に関する業務から始めてノウハウを蓄積して、既存の業務を対象にしていくのが最適な手順であると判断しました。
──業務にRPAを適用するにあたって苦労された点は何ですか。
須賀 氏: 社内のデータとはいえ従業員の個人情報ですから、セキュリティ面での環境を整備するのに少し苦労しましたね。
菰田 氏: Webページからデータを落とすというのは、どのRPAツールも得意なのですが、今回RPA化した業務については、Windowsアプリの扱いが発生しました。このWindowsアプリへのアクセスを必要とする作業のロボット化には最初のうちは苦労しました。ただ、一度パスが通ってしまえば後は大きな問題は何もありませんでしたね。
──現場からの反応はいかがでしたか。
;菰田 氏: ロボットを動かしてみて作業のデモを見せると、かなり反応がよかったです。みんなそれまでRPAの動作を見たことなかったので、何もしてないのに端末が勝手に動くのに興味を示してくれました。その後は、「じゃあこんなこともできるのでは?」といったアイデアも出してもらえるようになりました。
──現時点で課題と感じられているのはどのような点でしょうか。
菰田 氏: グループ企業のそれぞれで異なる基幹システムを使っているため、それを各社でRPA化しても全体最適にならないのではと懸念しています。現状はまず当社がノウハウを蓄積することがRPA活用の目的ですが、その後にRPAを用いた業務の全体最適化を進めていこうとなった際に、効果を最大限に発揮できるような環境の整備も必要だろうと考えています。
あとRPA人材の育成も課題ですね。一般的に「誰でもロボットを作れる」というのがRPAの謳い文句ですが、実際は難しさもあるのが現実かと思います。これはお客様の下でRPA教育を行っていても感じることです。
一方で社内のシステムの開発経験がある当社スタッフはすぐにロボットをつくれるようになるので、そうした設計能力の違いなどを突き詰めたうえで、当社の運用スタッフなどを対象に実験的に教育しながら、短期間でRPA人材を育成するノウハウを育んでいければと思っています。
──RPAを活用した業務効率化に関する今後の取り組みについて教えてください。
金子 氏: 今回のソリューションから派生して、管理部門において注文書をOCRで取り込んだりすれば実用的だと考えています。今後はこちらから、RPAはOCRと連携しても使えることを提案して、該当業務に展開できればいいですね。
あと音声テキスト化ソリューション等とRPAを組み合わせて、自動化や品質向上ができないかといった話もあるので、そうした辺りも含めてノウハウを蓄積していければとも考えています。
最終的には、蓄積されたノウハウを集約してガイドブックを作成し、RPA教育等に盛り込んでいきたいです。これは既にお客様のもとでは実施しています。
菰田 氏: 管理部門の従業員が自分たちでロボットを作れるようになるというのが理想でしょう。すべては無理かもしれませんが、RPAシナリオに関しては自分で作ったりするなど、部分的にでも「人とロボットの協働」を前提に、業務設計を管理部門の手で行えるようにしたいです。
一般に経理のスタッフというのはExcelに精通していますよね。そのExcelを扱うような感覚でRPAを駆使するスキルが定着し広まれば、それは大きな強みとなるはずです。
そして将来的には、こうした自社での導入経験を生かして、RPAを武器としてビジネス展開していくのが目標です。
──ありがとうございました。
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